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DX人材の変化適応力はどう鍛える? メンバーズ×コパイロツトが語る「会議」から始めるPMO育成

DX人材の変化適応力はどう鍛える? メンバーズ×コパイロツトが語る「会議」から始めるPMO育成


本連載では、18ヵ月で700名以上のPMO人材を輩出したメンバーズの育成プロジェクトの全貌をお伝えしています。第1回ではその全体像を、第2回では青山学院大学・宮川裕之教授と共にDX時代のPMOが身につけるべき「ビジネス変革スキル」の重要性を紐解きました。

 

第3回では、PMO人材のコンピテンシーのもう一つの柱である「変化適応力」に焦点を当てます。 DXの現場は常に変動し不確実性に満ちています。計画通りに進まないプロジェクトを前に、現場のPMOはいかに振る舞うべきか。その解の一つとしてメンバーズがパートナーに選んだのが、プロジェクトマネジメント専業というユニークなポジションを築いている株式会社コパイロツト(以下、コパイロツト)です。

 

同社が提唱する「Project Sprint」をメンバーズのPMO人材育成に取り入れた背景から、現場での実践的な取り組み、そして著者である米山知宏氏が語る「両利きのプロジェクトマネジメント」とメンバーズのPMO人材育成の接点とは何か?これらの話を通じて、これからのDXプロジェクトに求められる人材の在り方を、メンバーズのPMO輩出プロジェクトの立ち上げを担った奥村と青木が、コパイロツトの米山知宏氏と照井隆浩氏と語り合いました。

 

yoneyama-tomohiro株式会社コパイロツト

プロジェクトファシリテーター/ Project Enablement事業責任者 米山 知宏 氏

シンクタンクにて、情報政策に関する調査や情報システム開発のPMO支援、デジタルを活用したまちづくりについての調査・研究などに従事。その後、パブリックセクターでの勤務を経て、株式会社コパイロツトにジョイン。現在はコパイロツトにて、プロジェクトを推進する仕組みづくりをサポートするProject Enablement事業の責任者を務めながら、民間企業や自治体におけるDXや組織変革を支援。2025年6月に書籍『両利きのプロジェクトマネジメント』(翔泳社)を出版。

 

terui-takahiro

株式会社コパイロツト

プロジェクトマネージャー 照井 隆浩  氏

Webディレクターとしてさまざまな企業のコーポレートサイト、Webサービスの開発に携るなか、よりよいチーム作りとプロジェクトマネジメントを追求するためにコパイロツトに入社。

現在は、お客さま企業のプロジェクト推進を支援するなかで、ワークショップやふりかえりを活用したコミュニケーション改善に取り組んでいる。

 

 

okumura-kouichi

株式会社メンバーズ

デジタルサービス開発本部 ビジネスアナリシス ビジネスユニット長 奥村 孝一 

2007年3月にメンバーズへ入社。Webやデジタル領域で顧客のビジネス成長をリード。
2021年3月にDXを支援するPMOサービスを新規に立ち上げ。以降、大手企業を中心に、DX戦略定義、デジタルマーケティング支援、BPR/BPO、PMO支援等、多岐にわたるプロジェクトを支援。2025年4月からは新サービス(ビジネスアナリシス)を立ち上げ、事業責任者として活動。

 

aoki-kaori

株式会社メンバーズ

デジタルサービス開発本部 ディーエックスコンパスカンパニー マネージャー 青木 かおり

2014年にメンバーズへ中途入社。大手カード会社のWebサイト大規模リニューアルプロジェクトにて、運用設計やCMS構築などを担当。 2021年には、企業のDX戦略立案から実行計画の策定、プロジェクト推進支援までを一貫して担う「DXコンパスカンパニー」の立ち上げメンバーとして参画。 現在はプロジェクト推進業務に加え、PMO人材育成における事務局リーダーも務めている。


kamio-takeshi株式会社メンバーズ

専務執行役員 兼 メンバーズディーエックスコンパスカンパニー カンパニー社長 神尾 武志 

テレビ番組制作会社、モバイルサイト制作会社勤務を経て2011年にメンバーズ入社。メンバーズ入社後は、金融会社のサイト運営統括・リニューアルを担当し、アカウント事業部門の部門長職を経て、小売SPA企業のデジタル推進の担当責任者などを歴任。2016年10月に執行役員に就任。2023年4月よりデジタルサービス開発部門の本部長を兼任。2024年4月に常務執行役員、2025年4月に専務執行役員、「メンバーズディーエックスコンパスカンパニー」のカンパニー社長に就任。

目次

教科書的なPMから脱却し、現場で使える変化適応力を求めて

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kamio-takeshi

神尾

本日はよろしくお願いします。今回の連載を通じて、我々メンバーズがなぜこれほどの規模とスピードでPMO人材の育成を進めているのか、その背景と成功のポイントをお伝えしてきました。今回は、その育成カリキュラムの根幹の一つである「変化適応力」について、パートナーであるコパイロツトさんと当時を振り返りつつ深掘りしていきたいと思います。

 

まず、立ち上げを担った奥村さんから、そもそもなぜコパイロツトさんにご相談することになったのか、その経緯や当時の課題感について話してもらえますか。

okumura-kouichi

奥村

はい。2024年2月頃、私が担当していたDXコンパスカンパニーというプロジェクト推進の課題解決を担う事業では、サービス提供や人材育成の再現性に悩みを抱えていました。例えば、個人のスキルに依存したままプロジェクトを推進している側面が強いなどです。

もちろん、PMBOK※1に準拠した育成コンテンツは社内に存在していましたが、それらを使ってもなかなか若手が育たない、現場でのスキル発揮に結びつかないというジレンマがありました。教科書的な知識はあっても、実際のお客さまとの取引のなかでスキルをどう活かすかという応用力が不足していると考えました。

同時に、当社の中期経営方針で「PMO人材を数百名規模で輩出する」ことが掲げられるということを聞いており、改めてPMO像を確立しなければいけないタイミングでした。この状況を打破したいと考えていたときに、知人から「コパイロツトさんというPMO領域で進んでいる企業がある」と紹介を受け、Project Sprint※2という独自のメソッドに関するポイントなどを伺いました。


※1:プロジェクトマネジメントに関する世界標準の知識体系のこと
※2:コパイロツト社が開発した定例会議を活用したプロジェクト推進のためのフレームワーク。オープンソースのメソッドとして公開されている

kamio-takeshi

神尾

そのメソッドのどこに興味を抱いたのですか?

okumura-kouichi

奥村

コパイロツトさんがPMBOKなどの基礎的な体系に精通されつつも、プロジェクトを「生きもの」として捉えていた点です。計画通りにはいかない現場の変動に対して、どう適応していくかという主張にとても共感しました。

特に魅力を感じたのは、「会議」という日常的な業務を起点にしていることでしたね。「会議の進め方」をテーマにするならば、プロジェクトマネージャーだけでなく、若手のメンバーも含めてすぐに実践できますし。

terui-takahiro

照井氏

最初に奥村さんとお話ししたとき、「御社のProject Sprintに興味があります」と言ってくださったのが非常に嬉しかったのを覚えています。

通常、お客さまからPMのご依頼があっても、背景まで調べた上で興味を持ってくださることは稀です。それだけメンバーズさんが現場の課題をリアルに感じていて、何とかしたいという熱量を持って「再現性のある育成」を模索されていたことが伝わってきました。

おかげで、私たちとしても「この課題なら、Project Sprintのここが当てはまります」といった提案がスムーズに進み、話が早かったことを記憶しています。

kamio-takeshi

神尾

そのような出会いがあったわけですね。ただ、全社のPMO育成という大きなテーマに対して会議の改善から始めるのは、随分スケールが小さいと感じませんでしたか?

教科書的なプロジェクトマネジメントを学んできた人からすると、「会議だけで何が変わるの?」と感じる可能性もあったと思います。そのあたり、奥村さんはどう感じていたのでしょう?

okumura-kouichi

奥村

正直、「会議だけで?」と思った部分もありました(笑)。でも、逆に言えば会議のないプロジェクトはありません。誰しもが参加する「会議」を題材にすることで、プロジェクトマネジメントの基礎を全員に学んでもらえると考えました。

会議は大事という当たり前のことを、体系立てて良い意味でバカ真面目に追求する。これは現場に即していますし、面白さを感じたのでやってみようと思いました。

改善ミーティングが起こしたマインドチェンジ

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神尾

実際の育成プログラムでは、具体的にはどのような取り組みをおこなったのでしょう。

terui-takahiro

照井氏

まず最初に取り組んだのが、「改善ミーティング」と名付けた実践型研修です。2月上旬にコパイロツト流の「会議の進め方」をレクチャーし、その後3月末までの約2ヵ月間、選抜された10名のメンバーと一緒に実践しました。

5名ずつの2グループに分け、週1回のペースで集まります。流れとしては、アジェンダの事前送付やToDoの明確化など、レクチャーした内容を、お客さまとの会議に取り入れました。その翌週には「改善ミーティング」で、「うまくいったこと」「いかなかったこと」を持ち寄り、振り返りをおこないます。

うまくいかなかった場合は原因を考え、他のメンバーから「こういうケースもあるから、次はこうしてみたら?」とフィードバックをもらい、次のアクションを決める。このサイクルをひたすら回しました。

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神尾

実際に参加したメンバーの様子はどうでしたか?

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照井氏

最初は「自分たちのようなパートナーが、お客さまの会議に介入していいのか?」「自分たちで話をリードしていいのか?」という戸惑いを持つメンバーもいたように見えました。しかし、「目的を達成するために、自分がどう働きかけるべきか」に気づき始めると、コミュニケーションの質が変わったように思います。

お客さまから話しかけられる頻度が増えたり、仕事がやりやすくなったという報告が出てきて、現場での変化が見て取れました。

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奥村

私もその様子を見ていましたが、最初は「アジェンダを会議前に作り必ず送る」といった基本的な動作を意識することから始めましたが、徐々に当たり前の習慣になっていくのが分かりました。

単なる形式的なアクションという捉え方ではなく、「会議を起点にプロジェクトを良くしていくことができる」というマインドセットに変わっていきました。

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青木

私は当時スタッフの後方支援という立場で、現場の課題解決に当たっていたのですが、この研修を通じて特に若手メンバーの意識変革を強く感じました。以前は「呼ばれたから会議に出ている」というスタンスだったのが、「自分がこの会議に参加する意義は何か?」「自分ができる貢献は何か?」を真剣に考えるようになっていました。

自ら役割や期待値を設定し、目的意識を持って会議に参加するようになったことは、若手にとって非常に大きな成長だと感じました。

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当社内部資料より。「改善ミーティング」は現在、全社のPMO育成プログラムに取り入れられている
 
kamio-takeshi

神尾

それは大きな変化ですね。第1回の記事でも触れましたが、IPAの調査でも「人材育成の最大の課題はスタッフのマインドシフト」だとされています。 

コパイロツトさんのメソッドは、アジェンダを用意する、ToDoを抽出するといった一見当たり前のようなアクションですが、それらを習慣化することを通じて、結果的に「プロジェクトへの当事者意識」を醸成する仕組みになっているのですね。

terui-takahiro

照井氏

そうですね。他には「ファシリテーションは1人でやらなくていい」「みんなで進めればいい」という考えに触れたことも大きかったようです。 私たちのProject Sprintでは、特定の人がプロジェクトを引っ張るのではなく、チーム全体で自律的に進めることを重視しています。

メンバーズの皆さんは、「ファシリテーションを1人で背負わなくていい」という言葉にすごく共感してくれて、ある種の「セルフケア」というか、心が軽くなったような印象を受けました。

okumura-kouichi

奥村

みんな「自分が何とかしなければ」と鎧を着込んでガチガチになっているんですよね。それを「脱いでいいんだよ」「チームでやろうよ」と言われることで、本来のパフォーマンスが発揮できるようになる。これはメンバーズのコアバリューである「仲間」「貢献」とも親和性が高い考え方だったので、現場も受け入れやすかったのだと思います。

 
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当社内部資料より。コパイロツト社の協力も得て策定したPMO基礎スキル研修カリキュラム

Project Sprintと両利きのプロジェクトマネジメント

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神尾

ここで改めてコパイロツトさんのメソッドの根幹にある思想について伺いたいと思います。米山さんは『両利きのプロジェクトマネジメント』という書籍も執筆されていますが、そもそも「Project Sprint」という考え方はどのようにして生まれたのでしょうか。

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米山氏

Project Sprintは、4〜5年かけて体系化してきたものですが、出発点は「プロジェクト推進の原理原則を作りたい」という思いでした。

世のなかにはPMBOKやアジャイル、スクラムといった優れた手法がありますが、システム開発以外のプロジェクト、例えば企画フェーズやマーケティング、組織変革といった領域でも使える、より汎用的でシンプルな道具が必要だと感じていました。

会議にフォーカスしているのもそのためです。どんなプロジェクトでも会議は必ずありますから、そこを起点にすれば誰でも扱いやすい。シンプルであるがゆえに、どのような業種・職種にも適用できる「原理原則」を目指して、現場での実践を通じて磨き上げてきました。

kamio-takeshi

神尾

そして、その思想をさらに発展させたのが『両利きのプロジェクトマネジメント』ですね。先ほども出ましたが、この本のなかで語られている「直線と曲線」というメタファーが印象的でした。

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米山氏

「直線と曲線」の話は、私が特に伝えたかったポイントです。日本のビジネス現場では、新人の頃から気合で頑張れ、隙を見せるな、論理で武装しろなど「戦闘モード」とも呼べる仕事のスタイルを徹底的に教え込まれます。これはプロジェクトマネジメントで言えば、ゴールに向かって一直線に進む「直線(実行)」のモードです。

しかし、プロジェクトには不確実性が高く、正解が見えない「曲線(探索)」のフェーズも必ず存在します。このときにお互いが鎧を着たままだと、お客さまと対立構造になってしまい、新しい価値は生まれにくいです。

kamio-takeshi

神尾

なるほど。しかし、鎧を脱ぐのは勇気がいることでもありますね。

yoneyama-tomohiro

米山氏

そうですね。多くの人は鎧を脱ぐ方法を教わっていませんし、脱いではいけないと思っています。でも、こちらが鎧を脱いで「ここが分からない、一緒に考えてください」と弱みを見せることで、相手も鎧を脱いでくれる。そうして初めて、同じ方向を向いてともに悩む「ワンチーム」になれます。


もちろん、納期直前など「直線」で進むべきときは鎧を着て戦う必要もあります。重要なのは、この「直線(実行モード)」と「曲線(探索モード)」を状況に応じて使い分けること。これが「両利きのプロジェクトマネジメント」です。

kamio-takeshi

神尾

その話は、今のDXプロジェクトの現場でまさに求められていることですね。最近は「曲線」ばかりで、対話ばかりして一向に進まないプロジェクトも増えている気がしますが、だからこそ「両利き」である必要があると。
yoneyama-tomohiro

米山氏

おっしゃる通りです。ずっと議論ばかりして何も決まらない「曲線オンリー」のプロジェクトも問題です。迷っているときは鎧を脱いで対話し、決めるべきときは鎧を着て直線的に進める。この切り替えができるPMO人材こそが、現場の停滞を打破できます。

terui-takahiro

照井氏

現場目線で補足すると、Project Sprintは理想を掲げているフレームワークですが、それを現場に無理やり当てはめようとしても上手くいきません。

 

お客さまがどれだけプロジェクトに前のめりか、チームの雰囲気はどうか。そういった状況を見極めながら、「まずは対話の量を増やそう」「次は会議の形を少し変えてみよう」と、エッセンスを少しずつ取り入れていくアプローチが重要です。まさにケースバイケースで、現場のPMOが考えながらチューニングしていく必要があります。

現場を知り、AIと共闘できるPMO人材が求められる

kamio-takeshi

神尾

ここからは少し視点を未来に向けて、「AI時代に求められるPMO人材」について議論したいと思います。生成AIの進化により、議事録の作成やアジェンダの案出しといったタスクは、AIが瞬時におこなうことができるようになりました。

極端な話、記録するだけなら人間はいらない世界になりつつあります。こうした環境下で、プロジェクトマネジメントにおけるAIとの向き合い方、そして人間の役割はどう変わっていくのでしょうか。

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照井氏

私自身、アジェンダを検討する際などにAIを壁打ち相手として使うことはよくあります。仮説を大量に出してもらって、そこから選ぶといった使い方は、準備のパートナーとして非常に有効です。ただし、AIが出してきたものをそのまま右から左へ出すのでは、PMOとしての介在価値がありません。「それならAIでいいじゃん」と言われてしまいます。

AIが作ったたたき台に対して、「なぜこのアジェンダを選ぶのか」「この会議で何を決めたいのか」という自分なりの意図や視点を加えられるか。そこに自分の介在価値を出せるかが問われていると思います。

yoneyama-tomohiro

米山氏

私も同感です。AI活用が進めば進むほど、逆に「人間の意志」が価値を持つようになると考えています。例えば、議事録からToDoリストを抽出する作業もAIは得意ですが、人間がやる場合は、そこに「意志」が乗ります。

「会議では結論が曖昧だったけれど、プロジェクトを前に進めるためには、あえてこういうToDoとして定義して、担当者に渡そう」といった編集が入るわけです。これはAIには難しい。AIは論理的な正解や要約は出せますが、「こうしたい」「こっちに進めたい」という意志までは持ち合わせていません。

kamio-takeshi

神尾

それは面白い視点ですね。第2回の宮川教授との対談でも、「AIは目的や価値を考えるのが苦手だ」という話がありました。既存の情報の再構成はできても、ゼロから「なぜやるのか」という動機を生み出すのは人間だと。

yoneyama-tomohiro

米山氏

はい。アジェンダもToDoも、突き詰めればPMの「こうしたい」という意志の表れです。それを明確に打ち出していけるかが、AI時代のPMOの価値になってくるでしょう。その意味で、メンバーズさんのように現場支援にこだわり、生々しい経験を積んでいることは強みになります。現場の文脈や人間関係を知っているからこそ、「こう動かしたい」という強い意志を持てるはずです。

okumura-kouichi

奥村

私は、AIの進化に加えてプロジェクトの難易度そのものが高まっていることに危機感を持っています。不確実性が高まり、要件定義すらままならないなかでプロジェクトを進めなければならない。そのなかで、管理業務などの「守り」の部分はAIに任せ、人間はもっと本質的な「課題発見」や「変革」といった、難易度の高い領域にリソースを割くべきです。

プロジェクトが停滞しそうなときに、環境を変えたり、構造を変えたりして突破口を開く。そういった「価値創造」の部分こそが、これからのPMOに求められる役割であり、AIと共闘しながら進めていくことが大事だと考えています。

aoki-kaori

青木

AIがToDoを出してくれるなら、人間はそのToDoを「いかに早く、適切に実行されるように渡すか」といったコミュニケーションの部分に注力できますよね。 

AIのおかげで、より「人」と向き合う時間を増やせるし、そこで価値を出せるようになる。そう考えると、AIはPMOにとって非常に強力なパートナーになり得ると思います。

変化に強いPMO=「課題解決人材」づくりの輪を広げていく

kamio-takeshi

神尾

最後に、今後の展望についてお話ししましょう。メンバーズでは、今回のコパイロツトさんとの取り組みをベースに「PMO基礎スキル研修(Lv.1)」を構築し、全社的な展開を進めています。

さらに、その上位研修として、実践を振り返る「改善ミーティング(Lv.1.5)」や、合意形成に特化した「ファシリテーション講座」なども開発し、学びのサイクルを発展させています。米山さんは、今後どのような展開を描いていますか?

yoneyama-tomohiro

米山氏

個人的には、このProject Sprintや会議の進め方のメソッドを、若手や、これから社会に出る学生に届けたいという思いが強くなっています。社会人になりたての段階で、「会議とはこう進めればいいんだ」「こうすればチームに貢献できるんだ」という型を知っているだけで、仕事がだいぶ楽になると思うんです。最初の段階でつまずかずに、複利的に成長できるような土台を作ってあげたい。

 メンバーズさんには多くの若手社員がいらっしゃいますから、ぜひ一緒に、日本の若手の「働く力」を底上げするような動きができれば嬉しいですね。

kamio-takeshi

神尾

それはぜひやりたいですね!私が常々思っているのは、プロジェクトは仕事だけでなく、日常生活のあらゆる場面に存在しているということです。

問題が発生して、それを解決しようとすれば、それはもうプロジェクトです。つまり、PMOスキルとは、根源的な「課題解決力」そのものなのではないでしょうか。DXが進み、仕事のあり方が変わっていくなかで、突然の変化に対応しなければならない場面は誰にでも訪れます。そのようなときに、今回のようなフレームワークや「変化適応力」を身につけていれば、どんな状況でも道を切り拓いていけるはずです。

現在、メンバーズではPMO人材の輩出目標を1,000名としていますが、これはあくまで通過点に過ぎません。2,000人、3,000人と増やし、この「課題解決の輪」を社内だけでなく、パートナー企業やお客さま、そして社会全体へと広げていきたいと考えています。

okumura-kouichi

奥村

私たちが社内で実践して成果が出てきたこの育成の仕組みを、今度はコパイロツトさんにフィードバックしたり、一緒になって対外的に発信していくこともできます。ともに日本のプロジェクトマネジメントのレベルを上げていく仲間として、これからも連携を深めていきたいですね。

terui-takahiro

照井氏

ありがとうございます。現場で日々生まれる実践知を体系化し、また現場に還元する。そのサイクルをご一緒できることを楽しみにしています。

kamio-takeshi

神尾

皆さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

メンバーズでは「DXを組織文化として根付かせる」ことを重視し、現場に寄り添ったPMO支援に取り組んでいます。単なるプロジェクト管理にとどまらず、組織の変革に必要な仕組みづくり・人材育成・コミュニケーション設計まで一貫して支援することで、お客さまのDX推進を継続的にサポートしています。
 
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執筆者紹介

株式会社メンバーズ

「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

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