顧客理解を組織の共通言語に。日本KFCとメンバーズが挑んだCX変革の1年半
55年以上の歴史を持つ日本ケンタッキー・フライド・チキン(以下日本KFC)さまは、これまでの延長線上にない成長を目指し、デジタル領域の強化に動き出しました。しかし、お客さま向けのデジタルサービスを担う社員は、当初わずか3名。何をつくるかよりも前に、「どんな未来を目指すのか」を描くところからのスタートでした。そこから1年半、日本KFCが外部パートナーであるメンバーズとともに取り組んできたのは、単発の施策ではなく「顧客視点で意思決定できる組織」そのものをつくることでした。
支援を通じて、日本KFCではお客さまを統計的な数字ではなく、その先にいる一人ひとりの生活者として捉えられる文化が根付き、部門を超えた共通言語で本来の問いに向き合うことができるようになりました。何がこの変化を可能にしたのか。日本KFCの平田さまにお話を伺いました。
「何を実現すべきか」からともに考えてくれるパートナーを求めて
- デジタル戦略部のミッションと担当されている役割、そして「CXチーム」が担う役割について教えてください。
平田氏:デジタル戦略部は、顧客戦略やCRM、会員獲得に向けたデジタルマーケティングを担っており、その中心にあるのが「CXチーム」です。CXチームは「お客さまにどのような価値を届けるべきか」という問いを起点に、社内のあらゆる意思決定をつなぐ役割を担っています。

- メンバーズに相談いただいた当時の課題感について教えてください。
平田氏:初めてご相談したのは2025年1月頃です。当時の日本KFCは、55年以上の歴史で培った安心や信頼を大切にしながら、「その延長線上ではない飛躍的な成長」をどう実現するか、全社的に問い直しているタイミングでした。
その飛躍的な成長に向けた挑戦のひとつとして、DX推進本部が立ち上がりました。しかし、そのなかでデジタル接点の戦略や構築を担う部門(当時のDX企画推進室、現デジタル戦略部)は、私を含めてわずか3名でした。何をつくるか以前に、どんな未来を目指すのかを描くところからのスタートでした。
一方で、KFCが提供するデジタル接点(アプリ、オンラインオーダー、デリバリー、店頭の端末など)は多岐にわたり、それぞれが複雑に連携しているため、一つの改善をするにも全体に手をつける必要がある難しい環境でした。
だからこそ、特定領域の専門家ではなく戦略からデザイン、開発までを横断し、「そもそも何を実現すべきか」をともに考えてくれるパートナーが必要だったのです。
立ち上げ当初は、会議室の壁一面にホワイトボードや模造紙、ポストイットを広げ、戦略、KPI、体験設計、システム構成を同時に議論していました。はたから見ると、事件の捜査本部のようだったかもしれません。ただ、あの一見混沌とした空間で、私たちは「お客さまにどのような価値を届けたいのか」という一本の線を探していたのだと思います。
戦略を計画で終わらせない。意思決定を変えた「あたかも社員®」の伴走
- CX戦略においてメンバーズは、どのような支援をおこなっているのでしょうか。
メンバーズ野中:私たちは、「お客さまにとって本当に価値のある体験は何か」を起点に、戦略策定から実行までを一貫して伴走しています。DXの立ち上げという不確実性の高いフェーズからご一緒し、顧客視点での体験設計やジャーニーの整理、各デジタル接点を横断したCX戦略の構築をおこなってきました。
KPI設計や意思決定の支援、社内外のステークホルダーをつなぐハブの役割など「お客さまに価値を届ける仕組みづくり」を目指しており、戦略を単なる紙の計画で終わらせず、組織的に実行できる状態に落とし込むことを大切にしています。

- 外部パートナーにこれほど事業の中核となる役割を任せることに、不安はありませんでしたか。
平田氏:お任せしたというよりは日々の議論と実践を重ねるなかで、ずっと一緒にやってきたという感覚に近いです。
一般的な業務委託では、契約範囲や責任分界点がありますが、正解のないCX領域においては、その境界線を越えて議論できる関係性こそがプロジェクトの成否を左右するのだと考えています。メンバーズさんは本当に近い距離で伴走してくださり、経営判断に関わる議論や社内調整、社内ステークホルダーや外部パートナーの調整といった上流工程から1ピクセル単位のUI微調整まで、それぞれの専門性や役割を尊重しながら、一気通貫して支援してくれました。
メンバーズさんの言葉で「あたかも社員®」というものがありますが、それは単に社員のように振る舞うという意味ではなく、同じ目標に向かって当事者として向き合ってくれることだと一緒に働いていて実感しました。こうして経営判断から現場の調整までをアジャイルに動かせたことが、迅速な意思決定と実践につながったのだと思います。
※あたかも社員®は当社の登録商標です。あたかも社員®(登録商標第6923667号)
小さな成功の積み上げが、組織の納得感をつくる
- ビジョンをCX戦略として落とし込む過程において、苦労した点や壁はありましたか。
メンバーズ野中:平田さんや私たちが描きたいビジョンは明確だったため、そこはあまり苦労しませんでした。ただ、実績のない仮説や戦略は受け入れられにくいため、自分たちの手で「小さな成功を積み上げる」ことを強く意識しました。
もちろん芽が出ない挑戦もありましたが、さまざまな角度から調整して、経営層や現場の担当者にも「顧客体験を考えるってこういうことなんだな」と納得してもらえるような実例をつくっていくことが難しい部分であり、一番やりがいのあるポイントでした。
メンバーズ佐藤:KFCさまは顧客接点やステークホルダーが多いため、方向性を定めるだけでなく、それが各担当者の業務にどう活きるのかという価値が明確になっていないとなかなか進みません。
そのため、担当者との目線合わせに難しさがありました。彼らが重視しているポイントを理解するために、何回もすり合わせながら組織として納得感を持って使えるCX戦略に落とし込んでいくことを意識しました。
調整のハブが組織の意思決定を変えた

- メンバーズが調整のハブとして機能したことで、実務の進め方はどのように変化しましたか。
平田氏:以前なら私宛てに来ていた社内外からの問い合わせや確認の連絡が、自然とメンバーズさん宛てに行くようになりました。これは、一緒に働いているメンバーが野中さんや佐藤さんをチームの一員として信頼している証拠だと思います。
確認や調整といった、名もなき小さな仕事を一手に担い、共通言語をつくって情報の交通整理をしてくれたことで、部門や会社の垣根を越えて同じ目標へ進めるようになりました。
結果として、各領域の専門家が持っている力を最大限に発揮できる環境が整い、私たちも「次にお客さまへどんな価値を届けるか」という本来向き合うべき問いに時間を割けるようになっています。
- メンバーズの伴走が組織にもたらした変化を教えてください。
平田氏:一番の変化は「お客さまのことを理解しようとする動き」が組織に根付いてきたことです。
例えば売上は、商品や店舗といった事業管理上の単位で分析することが中心でした。しかし今では、膨大なお客さまとの接点のなかから「いつ、なぜ、何を求めて来店されるか」という背景にある生活や感情を想像することを諦めない文化が定着し始めています。議論の方向性をメンバーズさんが常に顧客視点に揃え続けてくれたことで、意思決定の質が非常に上がってきたと感じています。戦略は資料のなかに存在するのではなく、「人の行動が変わったとき」に初めて組織に定着します。メンバーズさんはその変化を1年半かけて実現してくれました。
一度きりの施策で終わらせず、日本KFCを「誰かに話したくなる存在」へと仕組み化する挑戦
- 現在もCX戦略に沿って大きなプロジェクトが次々に動き出しているかと思いますが、目指す未来像について教えてください。
平田氏:55年以上お客さまに支えられてきた歴史への敬意を持ちながら、新しい顧客体験を生み出すことに、どんどん挑戦していきたいです。KFCといえばクリスマスというイメージがありますが、日常生活のなかでも「KFCってなんかいいよね」と思っていただく瞬間を増やしたい。キャンペーンのような一過性の施策ではなく、現場が無理なく続けられる「日々の仕事の積み重ね」として自然に生み出せる状態を仕組み化してつくっていきたいと考えています。
どんなに優れた戦略を立て、仕組みをつくったとしても、最終的にお客さまに良い体験を届けるのは、店舗で働く従業員一人ひとりです。だからこそ、現場の皆さんが「お客さまのためになるね」と納得して動ける形を、きちんとつくっていくことが大切です。
- より良いCXの実現に向けて、メンバーズは今後どのように支援していきますか。
メンバーズ野中:まずは現在立ち上がっているプロジェクトがいよいよ形になりつつあるので、それを確実に現場で機能させていきたいです。そして購買体験だけでなく、オムニチャネルでのコミュニケーションをはじめとする、さまざまな領域でお客さまとKFCの接点の最適化を目指します。
お客さまの声や店舗での接客技術を、データやデジタルの活用を通じて「100年先の現場で役に立つ形」として残していけるような支援をしていきたいです。そして、こうした取り組みがKFC全体の新たな「顧客との向き合い方」となり、現場やさまざまな部署の担当領域で力を発揮していけるよう、今後も全力で伴走し続けます。
メンバーズ佐藤:日々の業務や意思決定のなかで、全社員が主体的にCXを意識し、それを再現し続ける状態をつくるために、尽力できればと思います。
そのためには、顧客視点と事業視点をつなぎ、部分最適ではなく全体最適となるようにバランスを取ることが重要であると考えており、それを通じて、「意図した体験がきちんと届き続ける仕組み」を現実のものにしていきたいです。そしてその結果として、KFCが「誰かに話したくなる存在」に自然とつながっていく状態を目指して、着実に積み上げていければと思います。

- 日本KFCさまにとってメンバーズはどのような存在ですか。
平田氏:シンプルな言葉ですが、「同じチームの仲間」です。ただ、それだけでは少し足りない気もしています。
この1年半、戦略をつくること以上に「全員がきちんと同じ未来を見て、同じ言葉で会話ができるように言葉を探す」という話をたくさんしてきました。「誰かにKFCの話をしたくなる」「100年先まで続く仕組み」「本当にお客さまにとって良い体験とは何か」。こうした問いに対して何度も立ち止まり、現場のみんなに思いが伝わるような会心の一言を探し続けてきました。
その過程で印象的だったのが、メンバーズさんが決して言葉を軽く扱わなかったことです。流行りの言葉でいい感じに仕上げるようなことはせず、現場で起きていることから目を背けることもなく、誰かに迎合しない姿勢で「これって本当にお客さまのためになるのですか」と筋の通った形で問い続けてくれました。
同じ目的に向かってチームが強い力を発揮できたのは、まさにメンバーズさんが真摯な姿勢を体現してくれたからだと感じています。
私たちが一緒につくってきたのは、個別の施策やシステムだけではありません。「これは本当にお客さまのためになるか」と問い続け、立場を超えて同じ未来を見ようとする文化だと思っています。100年後の担当者が、「あの時代の人たちは、なかなか良い仕組みを残してくれたね」と少しだけ褒めてくれたら嬉しいですね。
(最終更新日:2026年9月)
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