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属人化はなぜ起こる?部門間のナレッジシェアを仕組みで解決する方法

属人化はなぜ起こる?部門間のナレッジシェアを仕組みで解決する方法

施策の成果が、担当者によって大きく変わる。同じ目標を持ち、同じようなプロセスを辿っているはずなのに、ある部署では着実に成果が出て、別の部署では同じ轍を踏み続けてしまう。

多くの企業が抱えるこの差は、個人のスキルや意識の問題として片付けられがちです。しかし実際に現場を見ていくと、原因はもっと構造的なところにあります。成果を出すための型やノウハウが、組織のなかで流通するチャネルを持っていないという問題です。

目次

属人化が解消されない本当の原因

属人化を解消したいという相談を受けたとき、多くの企業がまず手をつけるのはマニュアルの整備やツールの導入です。ただ、それだけで状況が変わるケースは多くありません。

当社が支援している通信企業のマーケティング部門では、現場の担当者が事業計画を立案し、予算を獲得し、計画に沿って施策を実行するという、同じプロセスを踏んでいるにもかかわらず、担当者や事業部によって成果に大きな差が生まれていたのです。

ターゲットの解像度が低い、KPIが不明瞭、検証せずに進めた、PDCAが回っていない。原因を挙げればいくらでも出てきますが、突き詰めると根本にあるのは、成果を出すための型や押さえるべきポイント、うまく進めるためのノウハウが、組織のなかで共有されず個人の経験に閉じてしまっていたのです。

これは部門や拠点ごとに知識が分断されるサイロ化の典型的な姿でもあります。担当者個人の能力が劣っているわけではなく、ナレッジが流通する仕組みが組織内に存在しないことが問題なのです。

現場のノウハウが共有されない3つの壁

現場の知見が組織全体に広がらない背景には、いくつか共通する壁があります。

あるべき姿が定義されていない

日々の業務に追われる現場の担当者は、自分の取り組みに何が足りないのかを自覚しにくいものです。フレームワークでの整理、ユーザーインタビューの活用、スモールスタートでの検証、KPI設計、PDCA。こうした最低限押さえるべき基準が言語化され、その有用性が示されていなければ、共有の必要性そのものに気づけません。

ツールを導入しただけで終わっている

ナレッジ共有ツールやナレッジベースを整備しても、そこに情報が集まり更新され続ける仕組みがなければ、内容はすぐに陳腐化してしまいます。形だけのナレッジシェアは、現場の暗黙知を形式知に変える機能を持ちません。

知識を使う側の解像度が低い

発信する側は成功事例を載せれば使われると考えがちですが、実際にはツールや事例の活用に苦手意識を持つ層が一定数存在します。この層を放置すると、できる人や協力ベンダーへの依存が続き、組織としての自走力は育っていきません。

横断組織がナレッジシェアを浸透させるには?

属人化やサイロ化を解消するには、現場の知見を拾い上げ、整理し、組織全体に展開する役割を担う横断組織の存在が欠かせません。横断組織が担うべき機能は、大きく3つに整理できます。

あるべき姿を定義し、トップダウンで浸透させる

組織のリーダーから、問題意識とともに施策の型を押さえる重要性を直接現場に伝えてもらいます。さらに、エキスパートが直接語る勉強会を定期的に開催し、その内容を録画やスライドの形でナレッジベースに蓄積していく。こうした継続的な取り組みが、組織内の共通言語をつくっていきます。

関連コラム:AI活用のカギを握る「ナレッジベース」とは?RAGの効果を最大化するナレッジの3層構造

実務に直結するコンテンツを鮮度高く保つ

現場が本当に求めているのは、抽象的な理念ではなく、今すぐ自分の施策に転用できる具体的な情報です。企画テンプレート、手続きマニュアル、ツールの操作やアウトプット例、成功事例、ベンダー選定の判断材料。これらは陳腐化しやすいため、事務局だけで作り切るのではなく現場担当者にも作成や更新を依頼し、無理のない運用体制を構築することが重要になります。

届いていない層にアプローチする

利用者の実態を定点観測し、まだ届いていない層を見つけることも横断組織の役割です。マーケティングのフレームワークとしても使われる既存顧客、離反顧客、未購買顧客という分類の発想は、社内のナレッジシェアにもそのまま応用できます。

すぐに活用してくれる層に注力するのは合理的ですが、アンケートやインタビューを重ねると、ツールや事例活用に苦手意識を持つ層の存在が見えてきます。この層への支援こそが、真の内製化を進める上での次の一手になります。

事例:現場間のナレッジシェアを仕組み化した実践プロセス

成果の差を生んでいたのは型とノウハウの分断

冒頭で触れた通信企業のマーケティング部門では、施策の成果が担当者によって大きく異なるという課題がありました。同じツールを使い、同じようなプロセスを踏んでいても得られる成果に差が出る。その差を生んでいたのは個人の能力差ではなく、型やノウハウが組織内で流通していなかったことでした。

特に深刻だったのは、ツールや事例活用に苦手意識を持つ初学者層の存在です。あるマーケターはこう振り返ります。

これまでデータ分析を担ってくれていた同僚が異動になり、自分では取り組めなくなった。ツールの操作方法を習得するのは手間に思え、周囲に相談すると工数を奪ってしまう気がして、わからないことを聞くのも気が引けた。協力ベンダーに依頼してその場をしのいでいたが、意図通りのデータが上がってこなかったり、タイムリーに確認できなかったりして、スピード感のある判断ができていなかった。

これは特殊な事例ではありません。できる人や得意な部署に業務が集中し、それ以外の現場は知らないうちにベンダー依存や属人依存の状態に置かれてしまう。多くの組織で水面下に起きているサイロ化の実態です。

横断組織が手がけた3つの施策

この状況に対して我々は、横断組織としてナレッジシェアの立ち上げと事務局運営を支援しました。具体的には、次のような施策を組み合わせています。

    1. 施策のあるべき姿を言語化し、勉強会を通じて浸透させる。エキスパートが直接語る場を設け、内容をナレッジベースに蓄積し資産化する

    2. 実務に直結するコンテンツを整備する。企画テンプレートや操作マニュアル、成功事例など、現場がすぐに転用できる情報を継続的に更新する

    3. 初学者向けの導線を設計する。ここから見てほしいという入り口や、悩みから答えを探せる逆引きメニューを用意し、ツールの全体像を視覚的に理解できるコンテンツも合わせて整備する

ポイントは、情報を発信して終わりにしなかったことです。アンケートやインタビューで定期的に利用実態を確認し、まだ届いていない層が誰で、何に困っているのかを把握しながら、コンテンツと導線を改善し続けました。

遅効性の取り組みが現場の自走を生んだ

こうした取り組みの効果は、すぐに表れるものではありません。ナレッジシェアは遅効性の施策であり、事務局はあくまで現場が必要としたときに渡せる武器を準備しておく役割に留まります。

しかし、地道な支援を継続することで、現場に施策の型が着実に定着し、支援をきっかけに自走できるようになる担当者が現れました。先ほどのマーケターの方も、初学者向けの入り口が用意されていたことで疑問や不安が解消され、必要な情報の入手方法のイメージがつき、自分でも取り組めるようになったと振り返っています。

事務局側で定量的な効果測定は難しいものの、ナレッジシェア実施前後で現場が作成する企画書の精度がどれだけ向上したかを比較すると、その効果は明確に感じ取れます。

そして、これらの自走に向けた取り組みは個人の成長だけに留まりません。他者の支援を待つ時間がなくなり的確な判断ができるようになる。サポートや代行に回っていた同僚や外部ベンダーの時間が解放され、本質的な事業課題に集中できる。個の自走がチーム全体のリソースを最適化し、組織全体のパフォーマンス向上につながっていきます。

属人化を解消し、自走する組織にするために

ここまでの内容を、ナレッジシェアを実践する道筋として整理します。

  • -属人化やサイロ化を個人の問題と捉えない。知識が流通する仕組みがないという、組織構造の課題として向き合う
  • -あるべき姿を言語化し、トップダウンで浸透させる。エキスパートが語る場を設け、共通言語をつくる
  • -実務に直結する情報を鮮度高く保つ。事務局だけで作り切らず、現場の担当者も巻き込みながら運用する
  • -届いていない層に目を配る。すぐに活用できる層だけでなく、苦手意識を持つ層への支援が内製化の次の一手になる

ナレッジシェアの効果はすぐには見えません。種をまき、水をやり続けるような地道な取り組みの先に、現場の自走と組織全体のパフォーマンス向上が実現します。

執筆者紹介

細川 英樹

株式会社メンバーズ マーケティングDX本部 プロデューサー
編集プロダクションからデジタル領域へ転身。外資系サイト運用支援会社やSIPS、広告制作会社を経て、2016年にメンバーズへ入社。デジタル戦略コンサルをはじめ、グローバルCMSによるブランド展開、大規模EC運用、広告賞受賞のクリエイティブ制作や原稿執筆など多彩な実績を持つ。近年は常駐先にて、顧客管理システムの機能開発と連動した予約サイト構築のマネジメントや、事業計画策定を支援。さらにイントラサイトのディレクションや実制作も担うなど、上流から下流まで幅広く手掛けている。

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