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内製化のメリットは?攻めの DX を加速させる 3 つの誤解と成功の条件

内製化のメリットは?攻めの DX を加速させる 3 つの誤解と成功の条件

AIの導入によるデータ活用や業務プロセスの改善に、多くの企業が取り組んでいる一方、企業が直面しているのは、どこまでを外部に任せ、どこからを自社で担うべきかという、内製化を巡る判断の難しさです。コストや人材不足を理由に内製化をためらう企業は多いものの、成果を上げている企業は、内製化を単なる開発の手段としてではなく、AIやデータ活用を継続的に改善していくための組織力づくりとして位置づけています。

 

本記事では、こうした視点から内製化が企業にもたらす具体的なメリットを整理し、どの領域を自社で握り、どの領域を外部と共創すべきかについて解説していきます。 

目次

AIやデータ活用が進まない理由

AIの導入やデータ活用、業務プロセスの抜本的な改善。これらに取り組む企業は今や珍しくありません。しかしその現場からは、「PoCの壁を越えられない」「手応えを得る前にプロジェクトが息切れしてしまう」といった悩みの声が聞かれます。取り組み自体は広がっているにもかかわらず、業務改善や意思決定の質向上といった実行フェーズの成果につながっている企業は限られている。このギャップが、現在のDXを取り巻く実態だと言えるでしょう。

DXの成功には、経営層のコミットメントや明確なビジョン、戦略設計や専門スキルなど、さまざまな要素が関係します。そのうえで、メンバーズが2025年におこなった「攻めのDX実態調査」を見ると、課題が集中しているのは、人材、組織、そしてアジャイルな推進体制といった実行工程にあります。「人材育成・採用(35.6%)」「変革に適した組織や文化の構築(42.8%)」「迅速で柔軟なプロジェクト推進・アジャイル開発(43.5%)」といった項目の達成度はいずれも低く、戦略や構想を描くことができても、それを動かすエンジンの不在が示唆されています。

こうした停滞を打破する鍵として、今あらためて内製化が注目されています。ただし、ここで言う内製化とは、すべてのシステムを自社で開発するという意味ではなく、意思決定と改善を自社で回せる状態をつくることにあります。

実際に、メンバーズが数多くのDX支援に携わるなかで見えてきたのは、DXの実行段階にいる企業ほど、どこを自社で判断し、改善すべきかを明確に定義しているという点です。一方で、DXの実行段階でつまずいている企業の多くは、判断や改善の主導権を社内に持たないまま、外部ベンダーに推進を委ねてしまっているケースが少なくありません。外部ベンダーは重要な支援者ですが、事業の成果や組織変革の最終責任を負うのは、あくまで事業会社自身です。

AIの活用や業務改革では、業務フローの見直しや部門間の連携、経営層との合意形成など、踏み込んだ判断を避けて通れません。外部に任せきりにせず、自社が主体となって判断と改善を積み重ねていく体制が求められています。

※1:出典「攻めのDX実態調査2025」(メンバーズ・2025)

内製化がもたらす3つのメリット

AIやデータ活用では、戦略や構想は自社で描けていても、実装や改善の段階で手が止まってしまうケースが少なくありません。方針や要件は社内で整理できていても、施策を改善し続ける実行力が十分に育っていない企業が多いのが実情です。成果の差が生まれるのは、構想段階ではなく、仮説検証と改善を繰り返す実行フェーズにあります。外部に依存した体制では、実行スピードが遅くなり、ノウハウも社内に残りにくくなります。

一方で、外部委託を適切に活用している企業では、実行工程だけでなく人材育成や組織づくりを含めた取り組みが進んでいます。内製化のメリットを考えるうえで重要なのは、何を自社で握れば改善が回り続ける状態をつくれるのか、という視点です。DXの推進、とりわけAIやデータ活用の現場では、「データが整えばできる」と言われることもありますが、その整っていないデータと日々向き合っているのは現場の担当者です。

こうした前提を踏まえたうえで、内製化がもたらす具体的なメリットを整理していきます。

①顧客価値の起点でスピーディーに試せるようになる

外注が中心の体制では、要望→見積→契約→開発というプロセスが発生し、1つの改善に数週間から数ヵ月を要することも珍しくありません。内製化が進むと、判断や優先順位づけが社内で完結できるようになり、顧客データや現場の声を反映し、素早く実装する判断を下せるようになります。

重要なのは単なるスピードではなく、変化のたびに立ち止まらず試し続けられる力を組織が持つことができているかどうか。検証を高速に回せることは、内製化がもたらす代表的なメリットの一つです。

②ベンダーロックインを防ぎ、改善の選択肢を自社に残せる

外注中心の体制では、「なぜ失敗したのか」といった教訓や判断の背景が社内に残りません。結果として、改善のたびに外部ベンダーの知見や判断に依存せざるを得なくなり、その積み重ねが特定のベンダーへの依存を強めていきます。

内製化が進むと、自社の判断力や実行力が高まることで、外部に縛られずに改善のアプローチを検討できるようになります。

③知見と判断が社内に蓄積される

内製化によって得られる最大のメリットは、プロジェクトの過程で得られた知見や判断の背景が、社内に蓄積されていく点にあります。どの仮説がなぜ通用しなかったのか、どの判断が成果につながったのか。そのプロセスが社内に残ることで、次の改善や企画の質が高まっていきます。

なお、企業のDXを内製化したほうが良いと考える理由は、以下のインフォグラフィックでも図解しています。

関連コラム:【超図解】企業のDXを内製化したほうがいい理由

内製化のメリットを活かせない企業に共通する誤解

内製化のメリットを活かせない企業に共通する誤解

内製化が成果に結びつかない企業の多くは、内製か外注かという二択にとらわれています。ここで言う成果とは、単発のPoCやツール導入に留まらず、仮説検証と改善が継続的に回り、DXの取り組みが現場に定着していく状態を指します。

この成果を阻む認識のギャップを浮き彫りにし、「攻めのDX実態調査」から導き出された理想的な活用モデルを提示していきます。

内製化=すべて自社で担うべきという認識

内製化を「すべてを自社で担うこと」と捉えてしまうと、かえって成果から遠ざかってしまいます。「攻めのDX実態調査」の結果を見ても、多くの企業が専門性や技術力の面で外部の力を必要としている実態が明らかになっています。一方、「本当はもっと内製したい」「理想と現実にズレがある」と感じている企業が多いのも事実です。

このギャップが、自前主義に陥り、十分なスキルや体制が整わないまま内製を進めてしまう要因になっています。重要なのは、すべてを内製化することではありません。専門的な領域や変化の早い領域では外部パートナーの力を積極的に活用する、内製化と外部委託のハイブリッドな設計が不可欠です。内製化とは、作業を抱え込むことではなく、事業を前に進めるための判断とノウハウを自社に残すことにあります。

全社一律で内製化を進める設計

問題は内製か外注かではなく、内製化の適用範囲を誤ってしまうことにあります。実行工程まで一律に内製化しようとすると、現場は個別の実装作業や運用対応に追われ、本来注力すべき「何を改善すべきか」「どこに手を打つべきか」といった判断や優先順位づけに十分なリソースを割くことができなくなります。自社で担うべきは、事業貢献に直結する課題の探索と特定、改善の方向性や優先順位づけといった領域です。

一方で、AIモデルの実装やクラウド基盤の構築、専門的なUX設計など、高度なスキルが求められる領域では、外部パートナーの知見を適切に活用することが合理的です。

品質もスピードも外注に委ねる前提

開発速度や品質だけを切り取れば、外部に任せたほうが有利に見える場面もあります。しかし、それはあくまで「作業を代行してもらう」ことを前提にした比較に過ぎません。DXの取り組みを社内に定着させている企業は、外部パートナーを単なる作業の請負先としてではなく、仮説検証や改善の背景を共有する共創のパートナーとして位置づけています。

要件の背景や判断の理由を開示し、検証結果や失敗の学びをともに振り返ることで、外部の専門知見が単発の成果物で終わらず、社内の意思決定や改善プロセスに組み込まれていくためです。品質もスピードも外注に委ねるのではなく、外部の力を通じて自社の判断力と実行力を育てる。この視点を持つことができるか否かが、内製化の成否を大きく左右します。

内製化のメリットを最大化するための条件

内製化のメリットを最大化するための条件

内製化の価値や方向性を理解していても、人材育成や組織文化、アジャイルの浸透といった組織能力の向上に課題を抱えている企業は少なくありません。単にスキルや人材を補強するだけではなく、知見が蓄積され、学習と改善が継続する組織へと転換できるかどうか。ここが内製化の成否を分ける分岐点です。

内製化を一過性の取り組みで終わらせないためにも、実行フェーズを見据えた設計の考え方を整理していきます。

スモールスタートで内製化のサイクルを回し切る

内製化は、全社一斉に進めるものではありません。重要なのは、まず小規模な領域で判断・実装・振り返りというサイクルを一通り回し切ることです。UI改善や業務効率化など、影響度が高く、実装負荷が比較的低い領域は、内製化の第一歩に適しています。こうした領域であれば、仮説を立て、実装し、効果を検証する一連のプロセスを短期間で完結させることができます。

「攻めのDX実態調査」でも、内製化を進めたい意向がある一方で、外部委託に対する不安やノウハウ不足を背景に、取り組みが停滞している企業の姿が見られます。大きなテーマから着手すると、関係者が増え、意思決定が複雑化し、結果としてPDCAが回りきらなくなるケースは少なくありません。

まずは小さく始め、外部パートナーの知見を活用しながら、内製化による成功事例を創出し、徐々に取り組み範囲を広げていくことが重要です。

内製化を牽引するリーダーを立てる

内製化を進めるうえで重要なのは、技術者の人数ではありません。内製化全体を牽引するリーダーの存在が不可欠です。ここで求められるリーダーとは、すべてを自ら実装する人ではありません。外部パートナーの知見や成果を、どのように評価し、次の判断にどう活かすか。そのプロセスを設計し、社内に知見として定着させる役割を担う存在です。

こうしたリーダーが主導する内製化の取り組みによって、社内人材の育成や組織能力の向上につながっていきます。

外部を委託先ではなく協働者として選ぶ

外注への丸投げでは知見が社内に蓄積されず、内製実行力も育ちません。重要なのは、外部を単なる作業代行の委託先ではなく、協働者として捉え直すことです。単に要件通りに開発を進めるだけでなく、目的や前提から問い直す姿勢があるか。そして、社員教育やマニュアル化といったスキルトランスファーを通じて自走を支援してくれるか。

こうしたパートナーを見極めることが、内製実行力を高めます。

内製化で攻めのDXを実現できる組織へ

内製化をコスト削減の手段として捉えていると、途中で必ず行き詰まります。内製化とは、短期的な効率化のための施策ではなく、変化に適応し続ける力を社内に残すための投資だからです。

AIやデータを活用した取り組みでは、環境や顧客の変化に応じて、仮説検証と改善を繰り返し続けることが求められます。高度な専門領域は外部の力を活かしつつ、価値判断と改善の軸は自社で握る。その協働関係をどう設計するかが、内製化の成否を分けます。

これらの具体的な設計思想や、ハイブリッド型外注の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連コラム:アウトソースが、会社を空洞化させる?DXの主導権を取り戻す「内製実行力」とは

目先の成果だけでなく、プロセスを通じて組織の実行力を育てていく。その意思と実践が伴ってこそ、内製化は一過性の取り組みではなく、企業の競争力を支える「攻めのDX」を動かす力へと昇華されていくのです。

 

執筆者紹介

株式会社メンバーズ

「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

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