単なる研修で終わらせない!ユーザー中心設計のエンジニア幹部候補向け研修から新規事業創出へ

単なる研修で終わらせない!ユーザー中心設計のエンジニア幹部候補向け研修から新規事業創出へ
パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 石川さま、田浦さま 株式会社メンバーズ 白井栄吉、佐藤亮太

パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社さまで実施されている、エンジニア幹部候補向け研修プログラムの取り組みについて、メンバーズnu.Designカンパニーのデザイン相談・壁打ちサービス「SOUDAN」を導入いただいた感想を、研修講師として担当された石川さま、田浦さまにお話を伺いました。

 

受講者が本気で新規事業開発へ取り組むための研修プログラムを企画

- 石川さま・田浦さまが所属されている部署やお二人の役割をお聞かせください。

石川氏:パナソニックオペレーショナルエクセレンス株式会社は、パナソニックグループのなかでも間接部門が集まっている組織です。それぞれの職能別に組織が分かれており、私たちは組織・人材開発センターに所属し、グループ全体の人材育成、研修企画の運営に関わっています。

私たちは講師も担当しながら理論やプロセス、フレームワークといったハードスキル、専門性の高い知識や技術を学ぶ研修を担当しています。今回メンバーズさんにお世話になったのは、グループ各社から参加者が集まる長期間の研修で、新規事業を作っていくという取り組みです。そこで新規事業開発のプロセスや顧客視点の取り入れ方、プロトタイピングに関するレクチャー、受講生の発表に対して壁打ちやメンタリングをしてもらいました。

- 受講されている方はみなさんエンジニアなのでしょうか。

田浦氏:技術開発の会社なので、基本的にはエンジニアを対象にしていますが、今年は珍しく営業の方も参加していました。

- 今回の研修を企画された背景を教えてください。

石川氏:「研修を研修だけで終わらせたくない」という想いがありました。参加者の上長も業務の一環として送り出してはいますが、やはり新規事業を考えるならば本気で取り組んでもらいたい。そこで、外部パートナーも含めたご支援をお願いし、我々もプログラムを工夫しながら企画してきました。

石川氏:これまではプログラムの要所要所で「フィールドに出て、ユーザーの意見も聞きましょう」と伝えてきましたが、そう言われてもどう聞けば良いのか、アプローチの仕方は分からないですよね。その辺りに改善の余地があったので、我々がテコ入れを始めました。そこでお世話になったのがメンバーズさんです。

田浦氏:付け加えると、幹部育成のなかに新規事業開発を入れているのは、幹部として必要な要素が含まれているからです。技術者として、与えられたものを懸命に開発している状態から、自分で問題を設定するステージに移行しなければなりません。

既存業務に課題を示すだけではなく、何もないところから自分で課題を設定し、どう解決するかを考える。そのために新規事業開発という題材を与えています。以前は机の上で青写真を描くだけで研修が終わってしまったので、実際にユーザーへヒアリングして生の声を集めたり、プロトタイプを作るなど、本気で新規事業を生み出すための取り組みになるよう意識しています。

- 参加者の役割やミッションに合わせた内容にアップデートされたのですね。

田浦氏:参加者はある程度の技術レベルをもった方たちなので、さらに一歩上を行く社会課題から考える。それが研修のバックグラウンドになっています。

インタビューの様子1

 

行動変容に必要だったのは外部視点

- そもそも、メンバーズを知ったきっかけは何だったのでしょう?

石川氏:正直に申し上げると偶然です(笑)。ただ、「ラピッドプロトタイピング」というキーワードを意識していました。社内で知見をもつ社員もいますが、社内だけではなく、社外のニュートラルな視点で指摘いただくのも大事だという話になりました。

そこで、最初はプロトタイプを作ってくれそうな会社を探していましたが、メンバーズさんのホームページを拝見すると、その前段の支援・指導もやっていただけそうだったので、ダメもとでお問い合わせをしました。また、これまでの研修で提案される内容はアプリやソフトウェアに絡むものが多く、UI/UXに詳しいメンバーズさんならば的確に指導してもらえるのでは、という期待もありました。

※製品開発において試作品を迅速に作成し、設計の検証や改善を効率的におこなう手法。

- そのような経緯があったのですね。マインドを変えていくという点も研修の目的の一つだったのかと思いますが、そういった組織・人材育成の観点から「変化」を起こしたかった部分を教えてください。

田浦氏:意識したのは、「行動変容を起こしたい」ということです。例えば、今回の研修で「考えて、ものを作って、誰かに聞くことが大事」と理解したら、次に困ったことがあれば同じように動けるようになります。

- 研修の企画・推進を担当されるなかで、どのような課題がありましたか?

石川氏:この研修に限らず、エンジニアというのはどうしても自分の研究している技術に寄ってしまい、プロダクトアウト的な考え方になりがちです。それだけではなく、顧客の課題は何か、それに対してのソリューションは何かを考えられる人材になって欲しいと感じていました。今年度は、その課題に対して上手くアプローチできたと思っています。

- 今回のメンバーズの支援で特に効果を感じられた部分はどこでしょう。

田浦氏:個人的に効果があると思ったのは、これまでほとんど作ってこなかったストーリーボードを作っていただいたことです。メンバー4~5人が同じ言葉を使っていても、形になるまで意味が異なっているときもあります。ストーリーの文脈ができると、バラバラだった方向性が1つになる効果があり、提案のときにも参加者が同じベクトルで発言できるので、散らばらずに済みます。

石川氏:メンバーズさんからアドバイスをもらったあるチームが早めにストーリーボードを用意していました。それを見た他のチームも同じようにストーリーボードを作り始め、有識者や大学の先生にヒアリングしていました。また、最終発表でもっとも評価が高かったチームもストーリーボードを用意していました。

田浦氏:「もっと早くストーリーボードを用意しておけばよかった」という声もありましたね。もっと早い段階で作っておけばヒアリングでも引き出せたのに、と。でも、そう感じられたことが成果だと思います。

ストーリーボード
実際の講義で使用したスライドの一部(プロトタイプに関する講義をメンバーズが実施)

 

新規事業だからこそ、まずは失敗前提の姿勢が大事

- メンバーズ側として、壁打ち支援のパートではどのような点を工夫しましたか?

メンバーズ佐藤:私が担当した3チームのアイデアを拝見したとき、技術起点のアイデアが多く「本当にユーザーが欲しいと思うか?」という視点が少し欠けているような印象を持ちました。そこで、改めてユーザー視点でアイデアを作ることの重要性を認識し、壁打ち担当として関わらせていただきました。

工夫したのは、「プロトタイピングを通じて、いかにユーザーに共感し学習できるか」という点です。新規サービスを企画する際、フレームワークを用いること以上に、UXデザインやデザイン思考の本質である「人間中心の共感と観察から入ること」や「失敗を前提とした反復学習」といったスタンスを体得することこそが重要です。そのため、プロトタイピングによる学習というスタンスについては、各チームへのフィードバックで重点的にお伝えしました。

また、UXデザインやデザイン思考の実践スキルによって、抽出できるインサイトの解釈や深さも違ってきます。それも含め、「フレームワーク・スタンス・実践スキル」の3つをセットで提供することが大事だと考え、ご支援のなかで意識しました。

- 実際に研修を進めているなかで、印象に残ったシーンや発見はありましたか。 

田浦氏:提案後の振り返りで、「失敗前提でやるのが重要」といった内容を語っていた方がいました。パナソニックには「こうしたら、こうなるだろう」と先を考えてスマートに取り掛かる方が多い印象です。しかし、新規事業では失敗しないでスムーズに行くことは稀です。逆に、失敗の回数だけ理解が深まるので、それを感じられたのは良かったと思います。

- 研修に参加された方からの反応や評価はいかがでしょう?

石川氏:今年度は本気で取り組んで下さる受講生が多かった印象です。4チームが参加して毎年グランプリを決めるのですが、選ばれたチームは完成に近い形になっていて、審査した幹部からも「事業化した方が良いのでは?」といった声が上がりました。そのアイデアに近しい部署の社員と引き継ぐような話もでき、選ばれなかったグループもブラッシュアップして事業部に持って行きたいと話していました。

全体的に幹部からの評価も高かったので、しっかり取り組んでくれたと思っています。中間発表では互いに発表内容を共有しましたが、ストーリーボードのように良いと思ったものを他のチームが取り入れるなど、相乗効果が出ていたのも印象的です。

田浦氏:最終発表後の懇親会でも、研修はしんどい期間も多いけど、楽しかったという声がありましたね。

-まさに「研修で終わらせたくない」を実現した研修だったのですね。今回の研修を通じて得られた一番の成果は何でしょうか?

石川氏:実際に事業化できるかどうかは別ですが、事業に貢献したいという点では手ごたえを掴めたのかなと思います。ここまで辿り着いたのは過去と比較しても非常に良かったですし、他の研修にもこういった考え方を活かすことができそうです。

インタビューの様子3

 

社外パートナーとの共創をビジネスの突破口に

- 今回の支援はどのような課題やお悩みを持っている企業におすすめでしょうか?

田浦氏:プロダクトアウト思考の企業や閉塞感を感じている企業、さまざまな知見を得たい方に勧められると感じています。自社だけでは自分たちの考え方に陥ってしまい、他の視点に気づくことができません。外部の知見を得たい企業の方におすすめです。

石川氏:メンバーズさんは、プロトタイプを作るだけではなく、そこに至るまでのプロセス、インタビューのエッセンスやインサイトの抽出まで包括的に見ていただけるという印象です。

- 最後に、「実践的な新規事業研修」を考えている企業へのメッセージをお願いします。

田浦氏:何かを作ったり、手を動かすことは大事なので、自社での内製が難しいのであれば、外部パートナーの力を借りてやってみるのも一つの方法です。社外の方の客観的なアドバイスで変わることもあります。

石川氏:研修を実施する場合、外部の有識者などに単発で依頼することが多いと思いますが、その方に新規事業開発におけるプロセス全体を見ていただくのはハードルが高いです。そうした際は、豊富な知見を持つメンバーズさんのようなパートナーを頼るのも有効な選択肢です。私たちの取り組みが他の企業さまの参考になり、結果として事業創出につながればうれしいです。

(最終更新日:2025年12月)

 

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