ゼロベースの構想から「動画検索RAG」開発へ。日テレWandsと挑んだ生成AIを活用したPoCの舞台裏
日本テレビおよびグループ会社のDX支援を担う、株式会社日テレWands。同社では中期経営計画のもと、「生成AIの全社推進」を大きなテーマに掲げ、メンバーズとともに生成AIのPoC開発プロジェクトを推進しました。「生成AIで何ができるか?」というテーマ探しから、実際のPoCのプロセスまでお話を伺いました。
手探りで始まった生成AI活用

- プロジェクト開始当初に所属されていた部署のミッションと、生成AIに関する取り組みの経緯を教えてください。
坂巻氏:我々が当初所属していたDXプロデュースディビジョンのミッションは、日本テレビとグループ会社のDXを支援することです。昨年度、会社として2025年〜2027年の3ヵ年で中期経営計画を立てました。そのなかのキーワードに「生成AI」が挙げられたことを受け、私たちの部署では「生成AIの活用を推進する」というミッションを掲げ、積極的に推進していくことになりました。
しかし当時は「ChatGPTってそもそも何?」というレベルだったので、まずは基礎から学ぼうと他社の研修を受けたり、ガイドライン作成にも着手しましたが、技術の変化が早く、ついていくのが難しいと感じていました。
- メンバーズにご相談いただいたきっかけは何だったのでしょうか?
坂巻氏:2年前に当社の本部長が日本最大級のピッチコンテスト「IVS」でメンバーズさんとお会いしており、当初はデータ活用に関する相談をしていました。その流れで、生成AIのアプリケーションに関するPoC(概念実証)を実施しようという話があがり、プロジェクトが動き出しました。
しかし、当時の我々にはAIに関する十分な知見がなく、自社での推進に限界を感じていたため、AI活用の伴走支援に強みを持つメンバーズさんにお声がけしました。
瀬崎:日テレWandsさまから、やりたいことが書かれたペーパーをいただき、その内容をもとに打ち合わせをおこないました。いただいた内容の優先度を整理した結果、単なる開発ではなく、コンサルティングも含めた伴走支援が最適だと考え、ご提案しました。

- メンバーズを選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか?
坂巻氏: 当時の本部長がメンバーズさんと接点を持っており、その方からの推薦があったことが大きいですね。それを踏まえた上で、最終的には私が導入の意思決定をしました。
現場の困りごとを起点に。ゼロから始まったアイデアの発散と、展示会での初披露
- プロジェクトはPoCのテーマ探しからスタートしたと伺っています。初期のアイデア出しはどのように進められたのでしょうか。
坂巻氏: 最初はMiroというオンラインホワイトボードを使って、とにかくアイデアを発散しました。思い浮かぶものを何個も出し合い、そこにかなりの力と時間を割きましたね。プロジェクトの初期段階からしっかりレールを敷いてもらえたことで、手探りで進むのではなく、進むべき方向が見えた状態でプロジェクトに参加できたんです。
その上で、発散したアイデアの整理とアクションプランを策定してもらい、それを実行する。この一連のサイクルを毎週繰り返しました。
- アイデアのテーマを決める際、何か縛りはあったのでしょうか?
坂巻氏:いえ、特段の縛りはなく、「どんなユースケースが考えられるか」をゼロベースで探っていく形でした。我々は元々システムを作る側であり、長年「いただいたオーダーを実現する」という文化でやってきました。そのため、ゼロからアイデアを生み出すことはあまり得意ではなかったんです。
そこでアイデアの種をどうやって拾おうか考えたときに、定期的にやっているグループ会社の「お困りごと相談室」を活用することにしました。そこから現場のリアルな課題を引き出し、我々が「AIでどんな解決策が提示できるか」を発想・収束していくことで、アイデアの絞り込みを行っていきました。
- アイデアを絞り込んだ後は、具体的にどのようなステップを踏まれたのですか?
坂巻氏:ちょうど展示会への出展が決まったため、そこに向けて具体的なプロダクトを作るフェーズに入りました。ただ、時間は1ヶ月半しかありません。
その限られた期間で「技術的に実現可能で、目新しさがあるもの」を模索した結果、メンバーズの高橋さんに調べていただいた「AIアバター」をわずか1ヶ月半で制作することになりました。
商談には直結しなかったものの、注目を集め、次のフェーズへの足がかりになりました。その土台ができた上で、次のテーマとして構想していた「動画検索RAGプラットフォーム」へのチャレンジが決まったという流れです。
- メンバーズの支援に対して、最初はどのような印象を持ちましたか?
坂巻氏: プロジェクトの定例会に同席させていただいて「すごくハイパフォーマーだな!」と思いました。さまざまなことに対して誠実に対応してくれますし、我々が持っていないスキルを持っているので、アウトプットの質とスピード感もすごいなと。
また、こちらの言語化しきれない意図を的確に汲み取り、イメージに近いものを作ってくれます。あとで年齢を聞いたら20代中盤だと知って、「この人たち、すごくない?」と驚きました。そこからは完全に虜になりましたね。
世古口氏:単に依頼された業務を遂行するだけでなく、「こうやれば良いのではないか?」と自律的に考えて動いていただける印象でした。私たちと同じ目線に立ち、積極的に提案をしてくれる姿勢には非常に助けられました。

試行錯誤を繰り返し、技術的な壁を突破した動画検索RAGのPoC
- 先ほどお話しいただいた「動画検索RAGプラットフォーム」は、どのようなシステムなのでしょうか。
坂巻氏:シンプルに言うと、動画を検索しやすくするためのシステムです。これまで過去の膨大なアーカイブ動画から特定のシーンを探し出すのはとても大変でした。それを効率化したい、というのが一番の目的です。
また、番組の1シーンとして使うための映像データを検索する業務があるのですが、例えば昭和時代の貴重な白黒映像には、「何が映っているか」というメタデータ(付加情報)が付与されていません。映像が白黒ということもあり解析も難しく、かといって膨大な動画を人が一つひとつ見てタグ付けしていくのは物理的にも不可能です。
そこで、AIに「どんなシーンが映っているか」を解析させて自動でメタデータを付与し、埋もれていた映像をすぐに検索できるようにするためのシステム開発に取り組みました。
- 難易度の高い開発だと思いますが、要件定義などはどのように進めましたか?
坂巻氏:(高橋のほうを見ながら)AIみたいに的確に聞き返しながら要件を整理してくれる、頼もしいパートナーがここにいまして(笑)。「これがいいですか?」「ここはこうしますか?」と的確に聞いてくれるので、僕は希望を言うだけ。気づいたら求めるモノが出来上がってくる状態でした。
高橋:AWSで作ることは決まっていたので、坂巻さまから要件をいただきつつ、メンバーズ内でAWSの知見があるメンバーと壁打ちをしながら進めました。また、坂巻さまにお話しする際に意識したのは、AI関連の難しい用語を直接使わず、分かりやすい言葉に変換してお伝えすることですね。
技術的な内容を含むシーケンス図を作成する際も、できるだけ伝わりやすい表現を心がけました。

- 開発のなかで直面した課題はありましたか?
坂巻氏:機能やUIなど細かい壁はいくつかありましたが、一番印象に残っているのは「パフォーマンス」の課題です。動画の解析にはどうしても時間がかかってしまい、10分、30分、50分と尺が長くなるにつれて、それ相応の待機時間が発生していました。なんとか短縮できないかと模索していたとき、ちょうどAWSさんに直接お話を伺う機会があったんです。
そこでメンバーズさんにも同席いただき相談したところ、「現状のサービスにおいて高速化を図るなら、並列処理がベストプラクティスです」というヒントをいただきました。そのアドバイスを受けてメンバーズさんに並列処理を組み込んでもらった結果、期待するスピードを出すことができました。
費用以上の価値。能動的な伴走支援が生んだ確かな成果

- プロジェクト全体を振り返って、メンバーズの「伴走支援」に価値を感じていただいた点を、費用対効果の観点も含めて率直にお聞かせいただけますか?
世古口氏:AIアプリケーション開発に関しての専門性が高く、プロジェクトをともにするなかで、私自身も多くのことを吸収でき、勉強になりました。また、プロジェクトの進め方や、お客さまから寄せられる課題・要望の整理の仕方など、非常に参考になる部分が多くありました。今後の自身の業務にもぜひ応用していきたいです。
坂巻氏:正直に申し上げますと、当初ご提示いただいた費用感に対しては、少し高いという印象を抱いておりました。しかし、実際にご一緒しますと、お支払いした以上の十分な価値があったと確信しています。
ポイントは、メンバーが常に能動的に動いてくださる点です。決して受け身にならず、私たちの思考の先を見据えた提案や気づきを与えてくれました。一緒にプロジェクトに取り組むなかで、我々が得たものはとても多かったです。
また、本来であれば専属の担当者を置くのが理想ですが、組織的にリソースを確保するのが難しく、どうしてもメイン業務の傍らでの取り組みになってしまうのが実情です。だからこそ、最初の立ち上げや土台作りのフェーズでは、外部パートナーの力を借りることが不可欠だと感じております。
- 最後に、生成AIの導入を検討しているものの、何から始めればよいか分からないという企業へメッセージをお願いします。
坂巻氏: これから始めようとする方に一番お伝えしたいのは、とにかくAIを恐れずに使うということです。これはマネージャー層やエンジニアに限らず、営業やさまざまな業務に携わるすべての方に共通して言えることです。AIに対して高いハードルを感じていたり、「単なるチャットツールだ」と捉えたりしているならば、その考えをいち早くシフトチェンジすることが重要だと感じています。
まずはAIと会話する時間を意識的に作り、とにかく対話し続けること。恐れずにそこからスタートするのが、結果的にその先の歩みを一番早くしてくれるはずです。
(最終更新日:2026年7月)
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