創業の想い

30年前、インターネットに出会った時のことは忘れません。インターネットの普及率が3%未満の当時、1分単位で課金されるダイアルアップ接続でパソコンをインターネットに繋げました。今では誰もが知る検索エンジンなどなかった時代、ハイパーリンクを辿ってネットサーフィンをしていると予期せずに米国のホワイトハウスのホームページにたどり着きました。個人でも世界中の会社や団体、国家とフラットに繋がることができる事実に衝撃を受けました。インターネットが普及すれば、社会全体がまるごとインターネット前提の社会にガラッと作り替わる時代が来ると夢見ました。そしてこのインターネットというネットワークは1つの国や団体が主導しているのではなく、意志ある者たちが自由に繋げて広がっていることを知り、世の中を変えていく意志を持った者たちが世界を変えていくのだと確信したのです。

当時29歳の私も自ら起業し、自分たちの意思と行動で新しいインターネット社会を創り上げようと心に誓いました。メンバーズの社名に込めた意味は、2つあります。インターネットが普及すれば、企業と消費者の関係が供給と消費の関係からメンバーシップの関係に変わるはずだからそれを支援しようということ、加えて全員参加型経営をテーマに参加意識を持った社員(メンバー)主体の組織を目指すということです。

創業時の苦労を乗り越え、その後も何度も危機を乗り越えてきましたが、この30年を振り返り、今後のさらなる成長のために重要な視点は3つありました。

一つは、未来は自分たちが作るということ。調査会社のデータだけで未来予想をしたり、他人事のように今後のトレンドを予想するのではなく、自分たちの信念に基づいた意志と地道な努力で自分たちが未来を創り上げていくんだという強い意志を持つことがとても重要でした。次に何が当たるのかを予想したり占ったりというのは一時的には良いかもしれませんが、何度も当たらないものです。現在はニーズがなくても必要とされるはずのサービスを自分たちが作り、需要は自分たちが作りだすんだ、という強い意思を持つことがとても重要です。

二つ目は、続けること。この30年間で、インターネットをテーマにした多くの企業や事業が立ち上がりましたが、その多くが去っていきました。それは失敗したというより、途中で諦めてしまったケースが大半だと感じています。では、困難があっても途中で諦めない強い意思の源泉は何でしょうか。意志の拠り所が「こっちの方が儲かりそう」ということであれば、損をしそうなら途中でやめてしまうでしょう。だからこそ、強い意志の拠り所として、自分のための得ではなく、顧客や社会の役に立つという「利他」のビジョンがどうしても必要なのです。その利他の旗の下に情熱を持った本当の仲間が集い、その仲間たちがいるから諦めずにやり続ける力が沸く、その力が成果をもたらすのです。

三つ目は、社会を変えるには素人の方が良かったということ。同じ志を持った起業家たちがみんなで、リアル前提の社会をインターネット前提の社会に作り変えてきました。そのように新しい概念を作るには、古い概念を持ったその道のプロよりも逆に素人の方が良かったのです。素人であることを弱みにするのではなく、素人であることを強みに変える発想の転換こそが大きな成果をもたらし、今のインターネット社会を築いてきたのです。

現在、創業時に夢想したインターネット社会は何合目まで来たでしょうか。感覚的には2合目ぐらいだと感じています。本格的なデジタル社会への変革はこれからであり、今後の30年はこれまでの30年以上に激変するのではないでしょうか。

メンバーズも創業から30年近く経ち、社員数は3,000人を超えましたが、今後も挑戦者であり続けたい。過去にあぐらをかく玄人ではなく、自分たちこそが未来を作るという情熱を持った素人であるという意識を持ち、持続可能な未来を創り上げていきます。

代表取締役 兼 会長執行役員
剣持 忠
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