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AI時代に問われるリーダーシップとは?答えが溢れる時代に求められるメンタルスキル

AI時代に問われるリーダーシップとは?答えが溢れる時代に求められるメンタルスキル

生成AIの進化によって、これまで専門性が高いとされてきたホワイトカラーの業務が、急速に変化しています。情報収集、資料作成、分析、基本レベルの企画立案。こうした業務の多くは、すでにAIが一定の水準で代替し始めています。

この変化を前に、多くの大手企業のリーダーやAI推進担当者が抱いている感覚は、おそらく次のようなものでしょう。

  • 自分たちのスキルが陳腐化してしまうのではないか
  • AIの波にどう乗っていけばいいのかわからない

本コラムでは、この前提のもと、リーダーシップ論・雇用制度・実際の事例などから、AI時代に人間に求められる役割とメンタルスキルを整理します。

目次

雇用が消えるのではなく、仕事の中身が変わる

AIによる雇用への影響については、さまざまな予測が飛び交っています。グローバルな調査では、AIが世界全体で約3億人分のフルタイム雇用に自動化の影響を及ぼすという推計もあり※1、企業の現場に強い緊張感をもたらしています。

しかし、実態に近い調査が示しているのは、雇用の「消滅」ではなく「動的な変容」です。短期的・中期的に完全に失われるリスクのある職種は10〜15%程度にとどまり、約50〜55%の職種は、人間とAIが役割を分担する新しい協働の形へと再設計されると見られています※2

ここで重要なのは、最大のリスクはAI技術そのものではなく、変化する環境のなかで従来のやり方に固執し、変化を拒み続けることです。社内に対してこの前提を正確に浸透させ、意識改革を促すことこそが、AI推進担当者が果たすべき役割となります。

※1:出典「How Will AI Affect the US Labor Market?」(Goldman Sachs・2026)
※2:出典「AI Will Reshape More Jobs Than It Replaces」(BCG・2026)

奪われるのはタスクではなく「型のある思考」

ただし、ここで一つ、多くの管理職・経営層が持っている前提そのものを見直す必要があります。「情報収集や資料作成のような下流の作業がAIに移り、戦略立案のような上流の思考は人間に残る」という直感は、半分は正しく、半分は危険な思い込みです。

実際にAIが高い精度を発揮するのは、下流の作業だけではありません。むしろ、市場調査・戦略立案・KPI設計といった、これまでマネジメントレイヤーが自らの専門性の拠りどころとしてきた上流の思考こそ、AIに奪われやすい領域です。

なぜなら、SWOT分析、3C分析、OKR設計、KPIツリーといった経営の思考フレームワークは、すでに体系化され、無数の事例とともに言語化されて世界中に蓄積されています。AIはこうした「型」を学習データとして大量に取り込んでいるため、平均的な水準の戦略ドラフトや市場調査レポート、KPI設計案を、数分で、しかも高い一貫性をもって出力できます。

一方で、現場の空気を読みながら相手の本音を引き出す商談や、想定外の事態に対して即興で判断を下すような「型のない」作業は、いまだAIにとって難易度が高い領域です。

つまり、AIが得意なのは「複雑そうに見えるが、実は型がある仕事」であり、逆に「単純そうに見えるが、実は型のない仕事」は簡単には代替されません。管理職や経営層がこれまで自らの付加価値だと信じてきた「戦略を考えること」自体が、実はAIの得意分野である可能性を、まず認識する必要があります。

では、人に何が残るのか?判断・検証・文脈接続

AIが戦略のドラフトやKPI案を高い精度で出せるようになった先に、人間が求められる役割は何でしょうか。大きく3つあります。

一つ目は、AIが出した複数の提案の良し悪しを判断する力です。AIは説得力のある選択肢を複数提示できますが、それらの間にある微妙な質の差、自社の文脈における適切さは、判断する人間がいなければ埋もれてしまいます。

二つ目は、AIのリスクを見抜く力です。AIは世のなかのデータから、適切な判断をおこないますが、それらが必ずしも現実的なリスクを反映しているとは限りません。その回答には、誤った情報や存在しない事実(ハルシネーション)を提示することがあります。

特に戦略や市場調査のように、一見それらしいロジックとデータで構成された文章ほど、誤りは発見しにくくなります。ここで最終的な検証責任を負えるのは、業界や自社の実態を知る人間だけです。

三つ目は、より高度な文脈につなげる力です。AIが出す戦略やKPI案は、あくまで入力された情報の範囲内での最適解です。その提案を、経営全体の意思決定、他部署の動き、業界の力学、あるいは数年先を見据えた布石といった、より大きな文脈に位置づけ直せるかどうかは、人間にしかできない仕事です。

この3つの力は、後述する「決め切る力」と地続きの能力であり、AI時代のマネジメントレイヤーに求められる新しい専門性だと言えるでしょう。

リーダーシップは「人」ではなく「機能」

AIの普及に伴い、一部では「マネジメント不要論」が語られたこともありました。実際にGoogleが過去にマネージャー層を大幅に削減しようと試みた際には、意思決定の遅滞と現場の混乱を招き、結局その方針は見直されています※3

この事例が示すのは、AIが代替するのは業務に含まれる個々のタスクであり、組織を導く機能そのものではないという点です。情報を集める、整理する、選択肢を並べる、文章にするなどの工程は、AIによって急速に代替が進みます。一方で、リーダーシップという機能そのものは、タスクの集積では代替できません。

この点について、慶應義塾大学の安宅和人氏は、自身のブログにおいて、リーダーシップとは特定の人に紐づくものではなく、組織が機能するために必要な役割だとし、その機能を大きく5つに分けています。この5つの機能分類はもともと、氏がかつて在籍したMcKinseyで、評価・育成が可能なスキルとしてシニアマネージャー以上に用いられてきたフレームワークだといいます※4

方向を定める力(Thought Leadership)

市場や技術の変化を読み、組織が向かうべき方向性を示す力です。AIは既存の問いの空間のなかであれば強力な回答を出せますが、「そもそも何を問うべきか」という問いの立て方そのものは人間に残ります。

人を見出し育てる力(People Leadership)

メンバーの可能性を見極め、育成し、組織として機能する形に編成する力です。評価や配置の判断は、AIのデータ分析を参考にしても、最終的な意思決定には人間の文脈理解が欠かせません。

顧客や利害関係者との関係を安定させる力(Client Leadership)

定型的な分析や提案資料の作成はAIが担えるようになりますが、「顧客が本当に決めるべきことを一緒に見極める」という関係構築の核は、人間にしか担えません。

組織の枠を越えて価値をつくる力(Collaborative Leadership)

部署や会社の境界を越えて人を巻き込み、新しい価値を生み出す力です。AIが個々の業務を効率化するほど、その効率化された力をどう組み合わせるかという編集力の価値が上がります。

前例のないことを仕掛ける力(Entrepreneurial Leadership)

試作のコストが下がることで、単なるアイデアの価値は下がり、「何が本当に可能になったのか」を見極め、リスクを取って実際に社会実装する力の比重が増していきます。

つまりAI時代のリーダーシップとは、答えが溢れる時代において、何を問い、何を選ばず、何を引き受けるかを決める力のことです。そしてこの「決める」という行為には、責任が伴います。AIは提案し、分析し、もっともらしいストーリーまでつくりますが、結果を引き受けて「こちらに進む」と言い切り、外れたときに説明責任を負うのは、最後まで人間の仕事として残ります。

※3:出典「Lessons From Google's Failed Quest to Run a Business」(Inc.・2014)
※4:出典「AI時代のリーダーシップ:導くとは何か」(安宅和人・2026)

なぜ決められないのか?感情がリーダーの判断を歪める

ここで一つ、重要な問いが残されています。「問いを立て、決め切る」ことがリーダーに残る仕事だとして、なぜ同じ情報、同じ選択肢を前にしても、迷いなく判断を下せる人と、いつまでも結論を出せない人がいるのでしょうか。

この問いに対し、示唆に富む視座を提示するのが、シリコンバレーで名高いエグゼクティブコーチ、Joe Hudson氏です。氏はOpenAIやGoogle、Apple、Anthropicといった名だたる企業の経営陣や最先端のリサーチャーを導き、AI開発の最前線における意思決定の葛藤に寄り添ってきました。

Joe Hudson氏が説くのは、リーダーの決断を鈍らせる真因は戦略の不備ではなく、多くの場合感情の回避にあるという点です※5。ある急成長企業のCEOの事例では、その温厚な性格ゆえに部下の要望をすべて受け入れてしまった結果、組織が「取捨選択」の機能を失っていました。あらゆるプロジェクトが停滞し、ロードマップが飽和して現場が疲弊するなか、どれほど組織構造や優先順位の枠組みを刷新しても、事態は好転しませんでした。

そのCEOは、他者を落胆させることへの恐怖から、組織全体の「決断不能」という機能不全を引き起こしていたのです。その後、感情的な障壁を直視したことで、CEOは半年間でプロジェクトの4割を整理断行し、結果として従業員一人当たりの収益性を劇的に向上させることに成功しました。

Joe Hudson氏は、AIが提示する無数の選択肢のなかから人間が確かな判断を下すための土台として、4つの具体的なスキルを提唱しています。

Discernment(見極め)

AIが提示する選択肢のなかから、何が本当に正しいかを感じ取る力です。AIは複数の選択肢を、同じくらい説得力のある形で並べることができます。論理的にはどれも正しく見えるとき、最後に「これだ」と感じ取れるかどうかは、知識量ではなく、自分自身の判断軸がどれだけ研ぎ澄まされているかにかかっています。判断軸が曇っていると、選択肢が増えるほど見極めが難しくなるでしょう。

コラボレーションツール「Notion」を率いるIvan Zhao氏も、著名VCである前田ヒロ氏のインタビューのなかで、能力がコモディティ化する時代には「何を頼むか」「どんな問いを立てるか」「どこへ向かうか」を見極めるセンスにこそ価値が生まれると語っており、見極める力の重要性は経営の現場感覚としても語られています※6

対立を恐れないこと

困難な会話を避けずに、チームのなかの溝を埋めていく力です。AIによって業務のスピードが上がるほど、認識のズレや利害の対立が放置された場合の損失は大きくなります。先述のCEOの例のように、対立を避ける姿勢は、組織レベルでは「決められない」「やめられない」という機能不全としてそのまま現れます。

この点についても前述のIvan Zhao氏が「優しさよりも率直さを先に置く」ことの重要性を語っているのとも重なります。率直なフィードバックが早ければ、軌道修正も早くなるという発想です。日本企業の現場では、関係性を重んじるがゆえに率直さが後回しになりやすい傾向がありますが、ここは意識的に変えていく価値のある領域でしょう。

失敗への耐性

新しいことを試し、うまくいかなかった経験から素早く学び直す力です。AI時代は、試行のコストが低い時代でもあります。にもかかわらず、失敗への恐れが強い組織や個人は、せっかく低くなった試行のハードルを自ら高く保ち続け、結果的に学習速度で他社に劣後していきます。

前向きな自己対話

前向きな自己対話に必要なのは、自己批判によって自らの判断力を削いでしまわないための力です。判断を誤ったとき、その経験から学ぶか、それとも「自分はダメだ」という自己否定のループに入るかは、その後の意思決定の質を大きく左右します。後者に陥ったリーダーは、次の判断において必要以上に保守的になり、結果としてAI時代に求められる大胆な判断から遠ざかっていきます。

これら4つは性格の良し悪しではなく、訓練可能なスキルだとJoe Hudson氏は強調しています。知識や経験は積み上げるのに時間がかかりますが、感情との付き合い方は、意図的な練習によって、比較的早く変わりうるといいます。

※5:出典「The new inner game: Your unfair advantage in the age of AI」(Lenny's Newsletter・2026)
※6:出典「いまやプロダクト開発は『ビール醸造』のようだ。Notion CEO・Ivan Zhaoが語る、"ジャズモード"経営のプロダクト・組織・人材論」(ALL STAR SAAS BLOG・2026)

日本企業特有の「メンバーシップ型雇用」とAIの相性

ここからは、日本の大手企業に特有の課題に踏み込みます。多くの日本企業が採用してきた「メンバーシップ型雇用」は、AI導入、特に複数のタスクを自律的に処理するAIエージェントの実装において、構造的なボトルネックとして作用します。

欧米型の「ジョブ型雇用」が明確な職務記述書によって役割の境界線を規定するのに対し、メンバーシップ型雇用は「人に仕事がつく」状態を前提に、業務範囲をあえて曖昧にし、従業員が想定外の課題を柔軟に拾い上げることを期待してきました。

この柔軟性は、人間の組織にとっては強みでしたが、自律型AIエージェントを動かす立場からすれば深刻な作動不良の原因になります。AIエージェントは、明確に規定された作業範囲と動作ルールのなかでしか機能できないためです。

雇用形態 AI時代のメリット AI時代の課題
メンバーシップ型雇用 急な役割変動への柔軟な再配置がしやすい
職務境界が不明瞭で、AIへのタスク移管が難しい
ジョブ型雇用 役割を記述書上で切り出しやすく、自動化しやすい AIの進化スピードが速く、記述書がすぐに陳腐化する
スキル型雇用 技術進化による職務の解体に柔軟に適応できる スキルを可視化する基盤の整備が必要

この二重のジレンマを乗り越える方向性として注目されているのが、職務という「箱」を固定するのではなく、個人が保有するスキルセットを可視化し、それを共通言語として動的にプロジェクトやタスクを組み替えていく「スキル型雇用」への移行です。AI推進担当者がジョブディスクリプションの整備だけにとどまらず、社内のスキル可視化に投資する意味は、ここにあります。

また、AI導入の前提として、日本企業特有の「空気を読む」「よしなに」といったハイコンテクストな意思決定や、ベテラン社員の頭のなかにしかない不文律を、業務フローとして標準化(SOPを作成)する地道な作業も避けられません。

※SOP(Standard Operating Procedures):標準作業手順書

整理されていない過去の不規則なデータをそのままAIに学習させてしまうと、AIは不適切な判断を下し、現場のトラブルに直結します。AI導入プロジェクトの成否は、実は技術選定よりも、業務の言語化にかかっていると言っても過言ではありません。

心理的安全性は「導入の鍵」であり「定着の解決策」ではない

AI推進担当者が現場で苦労するのが、従業員の抵抗感や、自身のスキルが否定されることへの恐れです。この壁を解き明かす上で参考になるのが、心理的安全性に関する実証研究です。

ある調査(従業員2,257名を対象、2026年)では、心理的安全性とAI利用の関係について興味深い「非対称な構造」が明らかになっています※7。心理的安全性は、従業員がAIツールを初めて使い始めるかどうかを高い確度で予測する要因になる一方、すでに使い始めた後の利用頻度や利用の持続性に対しては、統計的な影響力をほとんど持たないというのです。

言い換えれば、心理的安全性はAI活用のきっかけにはなりますが、その先の定着を促すものではありません。AIという未知のツールを試すことは、自分の知識不足や操作ミスを同僚に晒すリスクを伴うため、心理的に安全でない環境では、従業員はそもそもAIに触れようとしません。しかし、いったん使い始めた後の活用の深化には、業務フローへの組み込みや、使うことによる利便性の実感といった、より実務的な工夫が必要になります。

この知見は、AI推進担当者の打ち手を二段階で設計するヒントになります。導入初期は心理的なハードルを下げることに全力を注ぎ、定着期は業務プロセスへの統合や効果の見える化にリソースを移す。この順序を取り違えると、せっかく整えた研修や説明会が、利用の定着にはつながらないという事態が起こりえます。

※7:出典「Safety First: Psychological Safety as the Key to AI Transformation」(arXiv・2026)

日本企業におけるAI推進の進め方は?

理論だけでなく、日本の大手企業がどのようにAI推進の障壁を乗り越えているのか、いくつかの事例を見てみましょう。

DeNA:評価から切り離すことで生まれる安心感

DeNAは、非エンジニアを含む全社員を対象に、AI活用力を測る独自の指標「DeNA AI Readiness Score(DARS)」を導入しています※8。この取り組みのポイントは、AI活用度のスコアを人事査定から完全に切り離していることです。「AIを使ってみてうまくいかなくても、評価には響かない」という保証があることで、従業員は安心してツールを試すことができます。

多くの企業がAI研修を導入する際、つい研修の成果を測定したくなりますが、その評価が査定に紐づいてしまうと、従業員は失敗を恐れて挑戦そのものを避けるようになります。DeNAの設計は、組織全体の適応力のボトルネックを早期に特定しながらも、個人を萎縮させない仕組みとして機能している点が特徴です。

LINEヤフー:リテラシーとセキュリティを両立させるゲート方式

LINEヤフーは、約1万1千人規模の全社員にAIツール「ChatGPT Enterprise」へのアクセス権を配布していますが、その利用には必須講習の受講完了と、最終テストの合格という条件を設けています※9。いわば「合格セキュリティゲート方式」です。

これは、単にツールを配って終わりにするのではなく、全社員のリテラシーの底上げと、情報セキュリティ上のリスク制御を同時に実現する仕組みです。さらに、開発のプロフェッショナル職に対してはコーディング支援ツールを全展開し、エンジニア一人当たり1日平均2時間の作業時間削減を達成しているといいます※10。リテラシーの土台と、専門人材の生産性を別々の施策で同時に攻めている点が、この事例による学びです。

Honda:現場の自発性に正式な評価とインセンティブを与える

Hondaは、従業員が自発的に立ち上げたITコミュニティ活動を、経営層が公式に後押ししています。さらに、高い技能を持つ人材を「Gen-AIエキスパート」として認定する制度を設け、認定者には月額最大15万円の手当を支給するという、明確な経済的インセンティブを用意しています※11

ボトムアップの熱量だけに依存すると、活動は個人の意欲に左右されて長続きしないことが多くあります。Hondaの事例が示しているのは、現場発の自発的な動きを、経営側が「公式な評価軸」と「具体的な処遇」によって後押しすることで、縦割り組織の壁を越えたプロジェクトが、初年度から50件以上創出されたという成果です。自発性に火をつけるだけでなく、それを消えないように経営側が燃料を供給し続ける設計だと言えるでしょう。

三井物産:社内を「市場」とみなしたインナーブランディング

三井物産は、AIを人間に取って代わる脅威としてではなく、人間の創造力を拡張するパートナーとして位置づける「Human-Centered AI」という思想を展開しています。特徴は、社内を一つの「市場」、従業員を「顧客」と見立てて、AIへの心理的な抵抗感を取り除くための社内広告キャンペーンを展開した点です※12

オフィス空間を大胆なビジュアルポスターで装飾し、身近な同僚をロールモデルとして起用することで、周囲からの影響力を活用したといいます。この取り組みにより、汎用型AIのアクティブ利用率は目標の9,000人に対して約8,600人、利用率は98%に達しました。

技術導入を「正しいことだから使うべき」という建前で進めるのではなく、「使いたくなる」という感情面に正面から向き合ったアプローチは、多くの日本企業にとって参考になるはずです。

これら4社の事例に共通するのは、経営層による環境整備という「トップダウンの仕組み」と、現場の自発性を引き出す「ボトムアップの仕掛け」を、意図的に組み合わせている点です。評価制度を変える、参加のハードルと条件を設計する、現場のロールモデルにインセンティブを与える。いずれも、技術導入そのものとは別の、人間の行動と感情を動かすための設計だという点を、AI推進担当者は意識しておく必要があります。

※8:出典「全社のAIスキルを評価する指標『DeNA AI Readiness Score(DARS)』を導入開始 従業員と組織のAI活用レベルを可視化し、よりAIネイティブな組織へ」(DeNA・2025)
※9:出典「LINEヤフー、全従業員約11,000人を対象に業務における『生成AI活用の義務化』を前提とした新しい働き方を開始」(LINEヤフー・2025)
※10:出典「LINEヤフーの全エンジニア約7,000名を対象にAIペアプログラマー『GitHub Copilot for Business』の導入を開始」(LINEヤフー・2023)
※11:出典「Hondaの『自律型コミュニティ』×『Gen-AIエキスパート制度』の取り組みが、厚生労働省後援 日本の人事部『HRアワード2025』で入賞」(Honda・2025)
※12:「AI共創企業への変革に必要なチェンジマネジメント」(博報堂DYホールディングス・2026)

スキルとしての「決め切る力」をどう身につけるか

本コラムを通じて見えてきたのは、AI時代のリーダーシップとは、知識や技術の習得によって完成するものではなく、感情との付き合い方、そして判断に責任を負う姿勢を、継続的に鍛えていくものだという点です。

しかし、前述した見極め・対立への耐性・失敗への耐性・自己批判を手放すことはいずれも、研修を1回受ければ身につくようなものではありません。しかも、日本の大企業の減点主義の評価文化、根回しを重んじる意思決定慣行、失敗を個人の責任に帰着させる空気など、リーダーが「決め切る力」を鍛えるうえで摩擦として働きます。構造的な逆風のなかで、個人の精神論だけで変わろうとすることには限界があります。

現実的な出発点としてまず問うべきは、「自分は今、何を回避しているか」です。先送りにしている意思決定、向き合えていない対立、失敗が怖くて踏み出せていない領域など、これらに気づくこと自体が、変化の入口です。

そして、組織として取り組むうえでは、個人の努力と環境の設計を切り離して考えることが重要です。失敗しても安全だという制度的な保証がなければ、リーダーが率先して挑戦を見せても、周囲はなかなか動きません。リーダー個人がメンタルスキルを磨く一方で、AI推進担当者はその土台となる心理的安全性の設計を並行して進める。この二つが噛み合ったとき、初めて組織全体の「決め切る力」が育っていきます。

AIが出す提案を現実に活かせるかどうかは、誰がどのような判断軸で、何に責任を負って選ぶかにかかっています。そしてAIはどれだけ精度の高い提案をしてきても、その結果に対する責任は取りません。

まず、現場への説明責任、朝令暮改な軌道修正を厭わないこと、人を動かすために必要なコミュニケーションなど、いま自分が何を回避しているかを問うことから始めてみることが、AI時代のリーダーシップを身につけるための現実的な一歩です。


※本コラムは、2026年7月時点の調査・公開情報をもとにMembers編集部が執筆・構成したものです。

執筆者紹介

株式会社メンバーズ

「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

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