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【専門知識 × AI】コンサルティング・調査業務を10倍速にする「AIエージェント」構築の勘所

【専門知識 × AI】コンサルティング・調査業務を10倍速にする「AIエージェント」構築の勘所

「ベテランが持つ暗黙知や判断プロセスをAIエージェントに組み込み、フロント業務の品質を平準化できないか」——この問いに向き合う企業が急増しています。しかし私たちが複数のAI導入プロジェクトを伴走してきた経験から言えるのは、多くの企業が「AIに何を学ばせるか」より前の段階、つまり「そもそも何が暗黙知になっているか」の整理で躓いているということです。

 

本コラムでは、実際の支援現場で得た知見をもとに、AIエージェント構築の実践的な勘所を解説します。

目次

なぜ今「AIエージェント」なのか

生成AIの登場によって「ドキュメント作成が速くなった」という声は多く聞かれます。しかし、コンサルティングや調査・分析の現場で求められるのは、単なる文章生成ではありません。お客さまの状況に応じた仮説設定、データソースの選択、分析結果の解釈——こうした一連の「判断」を伴う業務こそが、専門サービスの価値の源泉です。

AIエージェントとは、この「判断」をシステム設計に埋め込み、複数のツールやデータを自律的に組み合わせながらタスクを遂行するAIの仕組みを指します。従来のRPA・ルールベース自動化と異なるのは、状況の変化に応じて行動を調整できる点です。

ユーザー入力
質問・依頼
AIエージェント
判断・計画
ツール実行
検索・計算・DB参照
結果統合
整形・出力

AIエージェントの基本フロー:判断と実行が一体化することで、複雑な業務を自律処理できる

事例:15時間が5分になった。その裏側とは

私たちがあるメーカーのマーケティング部門を支援したプロジェクトでは、担当者が市場調査に毎回15時間かけていた業務を、AIエージェントの導入によって約5分に短縮することができました。

ただし、この成果の本質は「AIが速いから」ではありません。重要だったのは、その担当者が「どの情報源を、どの順番で参照し、どう判断しているか」という調査プロセス自体を言語化し、設計に組み込んだことです。製品情報や市場データを入力として、分析・提案・顧客対応案まで一気通貫で出力するエージェントは、担当者の「頭のなかの手順書」を構造化した結果として生まれました。

現場からの気づき

AIの処理が高速だからではなく、判断プロセスを仕組みに落とし込んだから、結果として業務スピードが向上しました。この順序を間違えると、どれだけ高性能なモデルを使っても業務は変わりません。

なぜ「暗黙知の整理」が最初の壁になるのか

別のプロジェクトで営業部門の業務ヒアリングをおこなったとき、私たちはUXリサーチの手法である「コンテキスチュアル・インクワイアリー(文脈的調査)」を応用し、「マニュアルも経験もない新人が初日からこの業務を遂行するには何が必要か」という視点で現場を観察するアプローチをとりました。いわば「新人の私=生成AI」として業務を追体験する視点です。

このヒアリングで明らかになったのは、業務の至るところに「人間マクロ(Human API)」が存在するという実態でした。システムとシステムの間を人間が手作業でつなぎ、顧客からの要望を社内向けに翻訳し、ナレッジがないから過去メールを漁る——こうした作業は一件一件は小さくても、合計すると専門職の本業を圧迫する「チリ積も」になっていました。

ヒアリングで得た「出来事」から「心の声」を抽出し、さらに「本質的ニーズ(価値)」へと抽象化していくKA法を用いて分析すると、多くの業務で相当数の「未充足ニーズ」が浮かび上がりました。ただし重要なのは、未充足ニーズのすべてがAIで解くべき課題ではないという点です。UI改善や業務フロー変更で解決すべきものを丁寧に切り分け、さらにAIの技術特性に適合するものだけをスクリーニングした上で、はじめてAI介入の余地が見えてきます。

現場でよく見る課題 1

属人化・翻訳コスト

顧客要望をそのまま社内に投げられず、背景・文脈の補足を個人の経験に頼っている

現場でよく見る課題 2

Human API問題

システム間の断絶を人間が手作業で埋めており、専門職の時間が転記・確認に消えている

現場でよく見る課題 3

ナレッジの散逸

過去メールや社内ポータルを漁っても古い情報しか出てこず、結局「人に聞く」が常態化

私たちが実践する「GenAI適合性」の見極め方

AIエージェントを導入する前に、私たちが必ずお客さまと確認するのが「この課題はAIに向いているか」という適合性の評価です。どれだけ業務上の痛みが大きくても、AIが苦手な領域に投資しても成果は出ません。

私たちが用いる評価軸は主に以下の5つです。

1

技術適合性——非構造化データの処理(生成・抽出・分類・要約)が中心の業務か。AIがもっとも力を発揮する領域はここです。

2

データ要件——学習・参照に使えるデータが一定量・一定品質で揃っているか。目安は100件以上のサンプルと、ある程度のフォーマット統一です。

3

精度要件——90〜95%の精度で足り、最終確認を人間がおこなう運用が許容できるか。100%の精度を求めると、ほぼすべての課題がAI不適合になります。

4

リスク管理——セキュリティ・コンプライアンスの観点でクリアできるか。既存クラウド環境内での処理で完結するかを確認します。

5

実現性——専用インフラなしに既存クラウドサービスの範囲で構築できるか。初期段階では既存環境への統合を優先することで、導入コストと摩擦を最小化できます。

重要なのは「ビジネスインパクトの大きさ」と「AI適合性の高さ」を別軸で評価し、両方が高い課題からPoC対象を選ぶことです。痛みが大きくてもAIが苦手な課題は、AIより先に業務設計やシステム統合で解決すべき場合がほとんどです。

暗黙知と意思決定プロセスをAIエージェントに組み込む4つのステップ

課題が特定できたら、次は「何をエージェントに組み込むか」の設計です。多くの企業が見落としがちなのは、暗黙知の整理だけでなく「誰が・何を見て・どの基準で判断するのか」という意思決定プロセスの設計です。この2つが揃ってはじめて、エージェントは業務の代替として機能します。なお、多くの場合ファインチューニング(追加学習)は不要で、重要なのはナレッジの「構造化」と「検索可能化」です。

1

判断プロセスの可視化——「なぜその結論に至ったか」を逆算し、判断の分岐点と条件をドキュメント化します。コンテキスチュアル・インクワイアリーによるインタビューと実際の成果物の比較分析が有効です。

2

ナレッジベースの3層構造化——①事実情報(業界データ・法令など)、②自社ナレッジ(過去案件・ノウハウ)、③判断ルール(意思決定のロジック)に分けて格納します。RAGとの相性を考慮したチャンク設計が出力品質を左右します。

3

意思決定プロセスの設計——「誰が・何を見て・どの基準で判断するか」をエージェントの動作ロジックに組み込みます。業務フェーズごとにサブエージェントを設計し、オーケストレーターが全体を制御するマルチエージェント構成が有効です。

4

人間によるガードレール設計——エージェントが単独で完結してはいけない判断ポイントを明示し、承認フローを組み込みます。完全自動化よりも、ヒューマン・イン・ザ・ループ設計が品質保持の観点で現実的です。

「1ヶ月でプロトタイプ」を可能にする伴走設計

あるメディア系企業では、抽象的なAI活用のアイデアはあったものの技術への落とし込み方が定まっていない状態から、AXコンサルタントとAIエンジニアが一体となった少人数チームで伴走し、わずか1ヶ月で動くプロトタイプを構築しました。生成AIを開発プロセスそのものにも活用する「AI駆動開発」のアプローチで、要件定義と実装を高速アジャイルで推進した結果です。

また私たちが重視しているのは、単なる開発支援で終わらないことです。基礎概念のレクチャーやナレッジ共有を通じて、お客さま組織自身がAIを使いこなせるようになる「内製化」への土台を同時に築くことを、伴走支援の設計に組み込んでいます。

課題の構造化
KA法・ヒアリング
適合性評価
5軸スクリーニング
PoC設計
本番逆算で絞込む
アジャイル実装
α→β→検証
内製化支援
組織に知識を残す

メンバーズのAIエージェント導入支援フロー:課題整理から内製化まで一気通貫で伴走

AIエージェント実装で躓く3つの落とし穴

複数のプロジェクトを通じて見えてきた、AIエージェント導入が失速するパターンがあります。

落とし穴 1:本番から逆算していないPoC

PoCには成功するが、本番展開フェーズで業務プロセスとの統合コストが膨らみ頓挫する。私たちが「3月までに成果を出す」と期限を合意してプロジェクトを組む理由はここにあります。ゴールから逆算してPoCテーマを1つに絞り込む規律が、本番化を左右します。

落とし穴 2:プロンプト依存でナレッジ品質を軽視する

システムプロンプトの作り込みに注力するあまり、ナレッジベースの品質管理が後回しになる。「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れればゴミが出る)」——AIエージェントの出力品質は、参照するナレッジの精度に直結します。マニュアルや過去データの整備は地味ですが、もっとも投資対効果が高い作業です。

落とし穴 3:AIで解くべきでない課題をAIで解こうとする

ヒアリングを進めると、権限設計の見直しや業務フローの整理など、生成AIより先に手をつけるべき課題が多く見つかります。AIは万能ではなく、使うべき場所と使うべきでない場所を見極めることが、支援の価値の源泉です。

PoCで終わらせない鍵は、既存業務フローへの定着にある

AIエージェントは「動くものを作った」だけでは価値を生みません。既存の業務フローに組み込まれ、担当者が日常的に使う状態になってはじめて投資が回収されます。

私たちが支援するプロジェクトでは、α版(画面とロジックの骨組み)とβ版(実データを入れた挙動)を段階的にレビューし、担当者が実際に触る検証フェーズを経て、既存の業務フローへ統合するプロセスを標準的な進め方として設計しています。「PoC段階では動いた」から「本番の業務フローに組み込まれ、日々使われる」への移行を最初から設計に組み込むことが、AI投資を無駄にしないための最大の鍵です。

また、既存システムへの組み込み方を最初から視野に入れることも重要です。新規サービスとして立ち上げるより、現場がすでに使っているツールやサービスにAI機能を埋め込む形のほうが、定着までの摩擦が少なく、現場の受容性も高まります。

AIエージェント導入前に確認すべきチェックポイント

  • - コンテキスチュアル・インクワイアリーなどの手法で、暗黙知と意思決定プロセスを整理できているか
  • - 未充足ニーズのうち、AIで解くものとオペレーション設計で解くものを切り分けているか
  • - ビジネスインパクトとGenAI適合性の両軸でPoC対象を絞り込んでいるか
  • - 本番展開を前提とした期限・ゴールがPoC開始前に合意されているか
  • - 開発支援だけでなく、組織内の内製化・自走化まで支援スコープに含まれているか
まとめ

専門知識×AIの本質は、「AIを速く動かす」ことではなく、「現場の暗黙知と意思決定プロセスを構造化し、仕組みに落とし込む」プロセスにあります。GenAI適合性の見極め、本番逆算のPoC設計、そして業務フローへの定着と内製化まで見据えた伴走。この3つが揃ったとき、はじめてAIエージェントはスケーラブルなビジネスの基盤になります。

執筆者紹介

株式会社メンバーズ

「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

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