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株式会社メンバーズ
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

「Webサイトの更新だけで予算と人員が消えていく」「新しい施策の原資がない」
本記事ではWebサイト運用にまつわる費用の見直しを検討している方に向けた適正な見積もりの取り方に加え、単なるコスト削減ではなく、浮いた予算をDXに回すための運用体制の見直し術について解説します。
Webサイト運用において、「毎月支払っている保守運用費の内訳が不透明」「ベンダーからの見積もりが妥当なのか判断基準がない」といった悩みは、多くの担当者が抱える共通の課題です。
一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の『企業IT動向調査2025』によると、約半数の企業がIT予算を増加させているとの調査結果がでています※1。その背景は、「円安や人件費高騰に伴うベンダーの価格改定」や「クラウドサービスのランニングコスト増」といった外部環境の影響によるものが大きく、企業側がコントロールしにくい現状があります。
さらに深刻なのは、既存システムの維持・管理に要するコストが膨らみ続け、本来投資すべき新規施策や戦略的なIT投資の予算比率が横ばいに留まっているという実態です。いわば、既存の運用を維持するだけで手いっぱいになり、未来への投資が阻害されていると言えます。
この閉塞感を打破し、限られたリソースを本来取り組むべき施策やデジタル活用へと振り向けるためには、既存コストの中身を可視化することが不可欠です。
単に支払額の大小を比較するのではなく、運用の実態に即した最適化をおこない、UX改善やAI活用などのDX施策へとリソースを転換していくことが重要です。
Webサイト運用は外部委託しやすい業務のため、前月と同じくらいの費用で良いだろうという感覚でコストを見積もっているかもしれません。その結果、見積もりの妥当性や内訳が確認されないまま、ブラックボックス化しがちです。
Webサイト運用におけるブラックボックス化の要因の一つが、人月単価による見積もりです。人月単価による見積もりは、創出した成果ではなく、投下した工数の対価を算出する仕組みです。運用に関する契約が作業内容(成果物)ではなく、人の稼働時間(人月単価)で見積もられるケースが多く見受けられます。
また、人月単価契約は、対応内容や工数を事前に正確に予測することが難しい運用業務においては、合理的なリスクヘッジの形でもある一方、発注側にとっては、Webサイト運用業務に対する評価の軸が成果ではなく、「想定された稼働を安定して提供できているか」という論点にすり替わりやすい課題を抱えています。
このように成果ではなく稼働していること自体が評価の基準になってしまうと、作業の中身や改善効果が見えにくくなり、コストと成果の関係が把握しづらい構造が定着してしまいます。
長年同じベンダーに任せているとベンダー側の担当者が不在の場合に作業の代替が効かなくなり、業務の進め方や判断基準が特定の担当者に集約される属人化が進みやすくなります。これは、ベンダーの担当者が企業の事情や過去の経緯を知っていることで、「発注側の事情をよく理解してくれている」「細かく指示しなくても意図が伝わる」といった利便性を発注側が感じることがあり、一見効率的に見えます。
しかし、仕様・作業内容・判断基準などがベンダーから発注側へ共有されていない場合、ベンダー内だけに知見が蓄積されている状態になります。その結果、コストの見直しや他社への切り替えを検討する際、前提条件や業務範囲を客観的に整理できず、他社に同じ内容で相見積もりを取ろうとしても比較できません。
サーバの維持管理や障害対応といった保守の費用と、コンテンツ更新や改善といった成果を生み出すための運用費用が、同じWebサイト運用費としてまとめて契約されることがあります。この費用が一体化していると、Webサイト運用全体が月々決まった支払額として固定化されてしまいます。
その結果、コンテンツ更新やバナーの制作などの個別の施策にいくら投じ、それがどれだけの成果を生んだのかという投資対効果が見えにくくなり、コストの妥当性を評価する議論が難しくなります。これはベンダーや担当者の問題というより、契約形態や予算の切り分け方が作業内容の可視化を難しくしている構造的な問題です。
当社がこれまで多くのお客さまを支援するなかで遭遇してきたブラックボックス化の実態には、共通するいくつかのパターンがあります。一つ目は、実際の業務量に関わらず、月額費用が固定化されているケースです。本来、見積もりは作業量に見合った人員を割り当てるべきですが、多くの現場では運用の安定を優先し、一定の人員を確保したままにしています。
その結果、実際の業務量が減っても費用は下がらず、コストの妥当性を検証できない不透明な状態が続きます。二つ目は、体制面における外部ディレクターへの過度な依存です。管理業務をベンダー側のディレクターに丸投げしてしまうと、自社で作業実態や工数配分を把握できず、見積もりの正しさを判断できなくなります。
さらに、社内の業務フローが未整備だと、確認作業や手戻りが頻発します。ベンダー側はそれを見越して工数を積み増すため、結果として本来不要なコストを支払い続ける構造が生まれます。
業務内容の整理不足や依頼範囲が曖昧なまま見積もりを依頼してしまうことが、Webサイト運用見積もりのブラックボックス化の原因です。以下の3ステップの内容を意識しながら依頼をすることで、見積もりが不透明になることを防ぐことができます。
はじめに、業務を制作物単位ではなく、具体的な工程と役割に分解して可視化します。ここでよくある失敗は、「LP1枚あたり〇〇円」「1ページ更新に5日」といった、成果物と金額・期間を単純に紐づけた棚卸しです。
Webサイト運用において、ページに含まれる要素や構成は毎回異なるため、制作物単位で固定化してしまうと、実態との乖離が生じます。また、安易に一式で計上してしまうと、「以前は〇〇円で対応したはず」といった過去の事例に縛られ、見積もりの正当性が失われる原因にもなりかねません。
そのため、当社では一つの案件に対し、「デザインに〇人日、実装に〇人日」のように、要員別・担当者の役割別に細かく工数を整理する手法を推奨しています。役割ごとの作業工程の棚卸しをおこなうことで、ベンダー側の不要なバッファを削ぎ落とし、実態に即した精度の高い見積もりを引き出すことが可能になります。
次のステップとして、何をどこまで依頼するかを切り分けるために、定常業務とスポット業務を分け、区別できる状態にします。例えば、定常業務は、CMS更新や画像・テキスト差し替え、軽微な修正など、作業内容や工数のばらつきが少ない業務が該当します。
一方、UI改善や新規ページ作成、機能追加、計測設計の見直しなどの技術的な作業はスポット業務になるため、定常業務とは別として扱います。定常業務とスポット業務を切り分けることで、日々の定型的な運用・更新業務とサイト改善などの成果を高めるための業務に、それぞれどれだけの工数が充てられているかが明確になります。
これにより、運用チーム全体のリソースをどこに優先配分すべきかという、組織的なマネジメントが可能になります。
RFPは、作業の見積もりを依頼するだけのものではありません。「前提条件と目的を共有した上で、その作業の最適な進め方を提案してほしい」と伝えるものです。完了の定義となる品質水準や受け入れ条件をRFPの段階で齟齬なく認識をすり合わせておくことも重要ですが、伝え方にも注意を払う必要があります。
単に「現状と同じ運用を、できるだけ安くしてほしい」ということではなく、「定常化した業務を効率化できないか」「浮いた工数やコストを改善施策やAI活用に振り分けたい」といった具体的な内容を説明します。最初にベンダーに業務を依頼する目的や優先順位も明示しておくと、成果を軸にした提案を引き出しやすくなります。
大手自動車メーカーや金融業界の構築プロジェクトを歴任してきた当社PMの中村は、精度の高い見積もりを引き出し、プロジェクトを確実に成功へ導く鍵は、RFPにおける情報の具体性にあると語ります。
依頼内容を作業レベルまで分解し、どこまでを成果とするのか明確にすることで、ベンダーは作業難易度を正確に予測できるようになります。
関係部署や意思決定のプロセスを事前に共有することで、ベンダー側の役割重複や過剰な人員配置を防ぐことができます。これにより、コストの無駄を最小限に抑え、過不足のない体制を構築しやすくなります。業務の流れを見える状態にしておくことが、効率的な運用設計につながります。
新旧ベンダーが並走する期間を設けることで、属人化した業務や暗黙知を可視化でき、移行後のトラブルやリスクを抑制できます。プレ運用期間は一時的にコストが増える場合もありますが、こうした準備期間を設けることで業務内容の理解が進み、結果として安定した運用と合理的な見積もりにつながります。
守るべきコストと投資すべきコストを的確に判断し、コスト最適化を実現するためにはどのようにアプローチしたら良いのでしょうか。
業務の整理によって生み出された余力は、単にコストを減らすためではなく、次の成果を生むために使うべきリソースとして再配分します。例えば、Webサイト運用の高度化に向けたAIを活用した更新作業の自動化、UX改善によるコンバージョン率の向上、アクセスデータを活かした改善などの施策実行数を増やすことで、運用チームは単なる守りの運用業務から、売上向上につながる攻めの運用業務へと移行できます。
自社にナレッジがない限り、コストの根拠や改善ポイントといった意思決定がベンダー依存になります。そこで重要になるのが、従来のように外部へ丸投げするのではなく、専任の担当者やチームを社内に置き、Webサイト運用について自社内で理解できる状態をつくることです。
日々の更新作業や改善業務を通じ、優先順位や品質基準が社内に蓄積されていくことで、Webサイト運用は月々費用を払って維持するだけのモノではなく、自社の判断でスピーディーに改善を繰り返し、売上や見込み顧客を直接的に生み出すマーケティング基盤へと変わります。
この自立した体制こそが外部パートナーとの理想的な協力体制を築く鍵となります。自社に専任チームがあることで、外部パートナーは指示された作業だけをおこなう存在から、チームの力を引き出し、主に課題を解決する良きパートナーへと変わります。
なお、メンバーズでは、内製化を前提とした伴走型の支援により、運用ノウハウや改善視点を組織に定着させる取り組みをおこなっています。
事例:生成AIを活用した「次世代型Webサイトプロジェクト」にてPoCを実施、生成AIとノーコードツールの導入でコスト4割削減
新たなベンダーを探す際、コストを削減したいという企業側の事情はあるものの、そこだけを目的にするとリスクもあります。
金額を抑えたことで手薄な体制で運用や保守をせざるを得なくなり、品質が下がるかもしれません。更新ミスや誤情報の掲載、表示崩れといったものから、最悪の場合、誤った情報の拡散やリンク切れによる重大な公開事故にまでつながる可能性があります。Webサイトが企業の信頼性を表していることを考慮すると、運用品質の低下はそのまま企業のブランド低下につながります。
同様に価格を下げてベンダーを切り替えると、依頼された作業だけをこなし、依頼の範囲外のことはやらないといった受動的な体制になることも少なくありません。本来、Webサイト運用は単なるページ更新だけでなく、アクセス解析をもとにした導線改善やCVRの向上施策、コンテンツの再設計、さらにはセキュリティ対応や表示速度の最適化といった、売上や企業リスクに直結する業務も含まれます。
しかし、コスト削減だけを目的にベンダーを選ぶと、新たな提案につながる活動は見積もりに含まれない業務として積極的な対応をしないまま放置されがちです。その結果、Webサイトの運用を通じた改善提案やマーケティング支援の機会を見落とすリスクがあります。
ベンダー選定で重要なのは、コストの低さではありません。DX投資の原資を確保するために必要なのは、守るべきコストと投資すべきコストを正しく切り分けたうえでのコスト最適化です。従来に比べて低価格だからという理由だけでベンダーを選ぶのではなく、上記に挙げたリスクを理解した上で、最適なベンダーを選ぶようにしましょう。
Webサイト運用の見直しをする際にまず担当者がやるべきことは、コストの把握です。現状を正しく可視化し、把握することでコスト最適化の判断基準ができ、そこからコストを適切な形でDX推進やAI活用に振り分けることができます。
当社は、ブラックボックス化したWebサイト運用を整理するサービスとして、Web運用コスト最適化診断を提供しています。このサービスは、貴社の業務フローや体制を徹底的に可視化し、削減可能なコストと具体的な改善ポイントをレポーティングするサービスです。単なる経費削減に留まらず、「成果を生む施策」へとリソースを再配分するための判断材料としてご活用いただけます。
まずは現状を客観的に把握し、運用体制を変革するための第一歩を見出す機会としてお気軽にお問合せください。
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