執筆者紹介
株式会社メンバーズ
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

2020年よりメンバーズが毎年お届けする「年末のご挨拶サイト」。6年目となる今年は、デザインと戦略で企業のDXを支援するメンバーズの専門組織 nu.Designカンパニーが制作を担当。nu.Designカンパニーの「体験を紡ぎ、デザインで縫う」という思想のもと、いかにして社員一人ひとりの温かい想いを一つのデジタルコンテンツへと昇華させたのか。その企画から制作、AI活用に至るまでの舞台裏を、具体的なナレッジとともにご紹介します。
今年も、メンバーズ「年末のご挨拶サイト」(以下、年末挨拶サイト)がお客さまにご挨拶をお届けする季節がやってきました。今年で6年目となるこのサイトは、メンバーズが掲げるVISION2030「日本中のクリエイターの力で、気候変動・人口減少を中心とした社会課題解決へ貢献し、持続可能社会への変革をリードする」を背景として、2020年に始まりました。私たちデジタルクリエイター集団だからこそできるCO2削減への貢献の1つとして、配送時だけでなく、製造から廃棄に至るまで多量のCO2を排出する紙の年賀状を廃止し、デジタルコミュニケーション手段としてWebサイトという形式による年末のご挨拶へ移行しました。
このWebサイトは、メンバーズとして環境負荷を低減しつつも、日頃お世話になっているお客さま、そして支えてくださるすべての方々への「感謝」を、より豊かに、より深く伝えるための役割を担っています。そんななかで、年末挨拶サイトのテーマである「感謝」を新しい表現でどう伝えるか。そして、私たちメンバーズ社員の一人ひとりの温かい想いを、どのようにして一つのデジタルコンテンツに落とし込むか。これが、毎年の制作プロジェクトチームに課せられた最大のミッションとなります。
そして今年は、私たちnu.Designカンパニー(デザインと戦略を掛け合わせて、企業のDXと成長を支援する伴走支援事業を展開する専門組織)が制作チームとしてこのミッションに向き合い、年末挨拶サイトの制作をおこないました。今年の制作は、単なる季節施策に留まらず、メンバーズのブランド価値向上と、お客さまをはじめとした日頃よりお世話になっている皆さまとの関係深化を担う重要な取り組みとして位置付けました。
さらに、“体験を紡ぎ、デザインで縫う”という私たち nu.Designカンパニー の思想を軸に、社員一人ひとりの「感謝」という情緒的価値を、企業としての事業価値へ昇華させることを目指しました。
本コラムでは、「年末のご挨拶サイト2025」がどのようにして生まれ、完成に至ったのか。企画の初期段階から、デザイン、実装、そしてプロジェクト進行中に得られた具体的なナレッジを、編集後記として皆さまにご紹介します。
コンセプトワーク:対話から導き出した本質的な目的
プロジェクトは、まず核となるコンセプトメイキングからスタートしました。これは単にデザインの方向性を決めるだけでなく、このサイトを通して「誰に、何を、どのように伝えたいのか」という意図を明確にする、プロジェクトの成否を握る重要な工程です。
ここでは、早い段階でステークホルダーの認識を揃えることで、後工程の手戻りを最小化し、短納期でも高い品質を担保するための「合意形成プロセス」を重視しました。
私たちは、多様な視点を取り入れ、アイデアを具体的な形にするため、オンラインホワイトボードツール Miro を活用し、チームで共創的なブレストをおこないました。

Miroを活用し、チーム全員でアイデアを発散・収束させていく様子。
その結果、例年のテーマである「感謝」はそのままに、この「感謝」を単なる一年の締めくくりに留めず、未来への希望と結びつけることに決まりました。
こうして生まれたのが、今年のサイトコンセプト「未来の絆につなぐ 今年のありがとう」です。このコンセプトには、単に2025年のメンバーズの成果や取り組みを前面に出すのではなく、感情ベースで感謝の想いを深く伝えたいという強い思いと、お客さまをはじめとした日頃よりお世話になっている皆さままで届くような、温かみのある体験を作りたいという思いが込められています。

対話の末に決定した、今年のサイトコンセプト。
デザインの方向性:多様な「ありがとう」を一つの体験へ縫い合わせる
サイトコンセプトが決定すると、次は、サイトの骨格となるデザインコンセプト/トーンの作成に移りました。WS(ワークショップ)形式でチーム全体の視点を持ち寄り、対話を重ねながらデザインの方向性を定めていきました。

プロジェクトメンバーによるワークショップの様子。活発な議論が交わされました。
その結果、2025年の年末挨拶サイトのデザインコンセプトは、「これまでよりも、もっとメンバーの温度と肉声の『ありがとう』を感じるクリエイティブ」に決定しました。
多様な社員の「ありがとう」という断片的な感情を束ね、一つの体験へと縫い合わせていくこの工程は、まさにnu.Designカンパニーが掲げる「体験を紡ぎ、デザインで縫う」思想を体現したプロセスそのものでした。

決定したデザインコンセプト。ここから具体的な制作がスタートしました。
情報設計:コンセプトを体現する体験の設計図
チームで定義したコンセプトをもとに「どの順序で感謝が届くか」という体験設計の観点から情報設計をおこないました。なかでも、TOPに配置した手書きメッセージカードは、サイト体験の核となる最重要パーツと位置付けています。
これにより、単にレイアウトを整えるのではなく、訪れた人が自然と「感謝」の想いを受け取れるような骨格を定義することができました。


体験設計に基づき作成された情報設計図と最重要パーツとして位置付けたメッセージカード
ディテールの追求:感情に訴えかける「手触り感」の表現
デザイン制作では、「手紙を開くようなワクワク感」や「読み進めて温かくなる心地よさ」といったデジタルでありながら、手触り感のある温かさを軸に、細部のニュアンスまで徹底的に調整しました。
社員一人ひとりの筆跡の違いや個性を尊重しながら、全体として統一感を保つことで、「多様性のある企業文化そのものをデザインとしてカタチにする表現」を実現しています。
今年のサイトの中心にあるのは、メンバーズ社員が参加して作成した手書きメッセージカードです。これは、「定型文では届かない想いを、直接届けたい」という強い意図から生まれました。一人ひとりの等身大の言葉が、サイトに命を吹き込んでいます。

集まった「感謝」の手書きメッセージカード。社員それぞれの個性が光っています。
画面のスクロールに合わせて奥行きのある表現を生み出す「パララックス(視差効果)」表現など、新しい動きを導入するにあたり、実装チームは短期間での品質担保を徹底しました。
特に、本番環境への組み込み前に、パララックスの動きのみを切り出した「デモ制作」を先行しておこない、技術的な課題や実装リスクを事前に排除しました。
このデモ制作プロセスは、短期間でありながらも品質を落とさないための確実な「品質保証プロセス」として機能し、実装リスクの大幅な軽減と、スムーズな開発進行につながりました。
今年のプロジェクトでは、AIを単なる作業効率化のツールとしてではなく、思考の幅を広げ、プロジェクト全体の認識精度を高めるための「共同作業者」として積極的に活用しました。
具体的には、以下の3つの場面で効果を発揮しました。
このように、AI活用によって業務の効率化が進んだだけでなく、人間がより創造的な業務に集中できる環境が整い、プロジェクト全体の質の向上につながりました。
今回の年末挨拶サイトの制作を通じて、私たちは例年のテーマである「感謝」の意味を改めて深く捉え直すとともに、いかにその想いをデジタルで形にするかという点に徹底してこだわりました。
また、AIという技術的なトレンドを積極的に取り入れながらプロジェクトを進行したことで、新たな知見を得ることができました。それは、AIツールの導入による効率化は図りつつも、最終的にサイトの価値を高め、訪問者の心に響かせるのは、やはりメンバー「一人ひとりの感謝」を伝える熱量であるということです。
今回のプロジェクトは、技術的な進歩の活用と「人の想い」のバランスの重要性を私たちに教えてくれました。このプロジェクトで培った、AIを活用した効率的な進行ノウハウや、温かみを伝えるデザイン実装技術は、来年以降のすべての顧客プロジェクトに活かされ、必ずやお客さまの事業貢献へとつながっていくはずです。
改めて、日頃から私たちメンバーズを支えてくださる皆さま、そして本コラムを読んでくださった読者の皆さまに心より感謝します。
年末挨拶サイトについてはこちらよりご覧いただけます。
多くの企業が直面する「戦略と現場」「理想と文化」の分断を、緻密なUXとデザイン思考で丁寧に縫い合わせ、ビジネス成果を創るメンバーズの専門組織です。
制作メンバー:大口(Dir)、石川(Dir)、早川(Dir監修)、漆畑(Des)、村井(Des)、松谷(Des監修)、齋藤(Eng)、水野(Eng)、後藤(Eng)
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