執筆者紹介

株式会社メンバーズ
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。
本コラムでは、Webサイトの課題を可視化した上で明確にし、改善へ向かわせるためのGoogle Analyticsなどによる定量分析とUX視点や競合比較などの定性分析を組み合わせたアプローチを解説します。さらに、KGI・KPIを元に改善効果を測定することで成果につながるWeb運用のポイントを紹介します。
「Webサイトの成果が伸び悩んでいるけれど、原因がはっきりしない」
「ページ更新をしているのに、効果が出ていない気がする」
このようなモヤモヤを抱えるWeb担当者は少なくありません。Webサイト内の課題が上手く掴めないときには、具体的に課題を発見するための定量・定性、両面からの分析が欠かせません。本コラムでは、Webサイトの課題を特定する際にプロが実践している課題発見の手法や、改善スキルの育成方法についてご紹介します。
Webサイトの課題を見つけるプロセスは基本的に「収集→分析→抽出→優先度づけ→改善」の順番でおこないます。各ステップで何をするのか、実施の目的とともに概要を説明します。
最初に着手するのは、定量・定性、それぞれのデータ収集です。定量データは、数値化できるデータです。ユーザー数、PV数、UU数、直帰率、滞在時間、コンバージョン率、クリック率などが挙げられます。収集する際には、集計単位に一貫性を持たせ、計測ツールの設定ミスや計測漏れがないようにします。
定性データは、数値化できない要素のデータです。ユーザーインタビューや自由記述のアンケート、カスタマーサポートの対応履歴などで、収集の際は答えを誘導する質問をしていなかったか、回答が偏っていないか、発言者の意図や感情のトーンも正確に伝えるように注意します。
定量データから「何が起こっているか」、定性データから「なぜ起こっているか」を収集し、この2つのデータを用いた分析からユーザー理解を深めることができます。例えば、定性データから浮かび上がった仮説について、定量データの数値で裏付けることで思い込みや主観的な意見に偏らない検証が可能になります。2つを組み合わせることが、課題がどこにあるのかの気づき(インサイト)を正確に抽出することにつながります。
インサイトを元に明らかになった複数の課題を、影響度・緊急性・解決のしやすさなどの基準で整理・分類します。限られた時間とリソースで最大の改善効果を出すために、それぞれの課題の関係性も含めて戦略的に優先順位をつけることが重要です。
改善施策の内容におけるKPIの設定は、ビジネスゴール(KGI)と直結しているかを常に意識しましょう。優先度の高い課題に対して改善アプローチを検討する際、施策の成果を定量的に測るためのKPI(例:CV○%増加など)をあらかじめ設定し、仮説と計測のセットで改善計画を組み立てます。
Webサイトの価値を最大化するためには、改善活動を一過性のものにせず、継続的な価値向上の仕組みを構築しなくてはなりません。その実現に向け、Web改善チームが小さなPDCAを回し成功事例を作ります。この成功がデータに基づいた改善活動を全社に広げるための説得力となり、単発ではない持続的なUX向上や、サイト表示速度の改善や導線・コンテンツの最適化、コンバージョン率アップなど具体的な施策を通じたWebサイト全体の品質向上につながります。
定量分析の観点と、そこから発見できる課題について解説します。Google Analyticsなどのアクセス解析ツールから数値データを取得すれば、以下のような示唆を得られます。ただし、これらの数値はあくまで兆候であり、原因については定性分析と併せて深掘りする必要があります。
離脱率は、Webサイトの特定のページがユーザーの最後の訪問ページだった割合です。直帰率はWebサイトに訪問したユーザーが最初の1ページだけを閲覧して離脱した割合なので、以下のような課題が浮かび上がります。
課題:コンテンツの内容がニーズとマッチしていない、導線がわかりにくい
離脱率・直帰率が高い場合、検索結果や広告で期待した情報が得られず、ページに入ってすぐ戻る可能性があります。離脱率が特定のポイントで高くなっているときは、ページ内リンクがわかりにくい、誘導バナーが見落とされている、もしくは次のアクションが不明の可能性が高いです。
ページ別の閲覧数(PV数)は、ユーザーの関心や流入状況の把握、そこから導線設計やページ構成の改善判断などを合わせて分析することで改善点がより明確になります。
課題:見せたいページが見られていない、流入設計が甘い
PV数が少ない場合、まずはサービスや商品が認知されていないのか、それともランディングページからの導線が意図通りに機能していないために到達できていないのかを切り分けて考える必要があります。流入設計が良くない場合は、リンクの配置が見づらい、または遷移先の内容がユーザーの期待とずれている可能性があります。
コンバージョン率(CV率)は、Webサイトにアクセスしてきたユーザーがどのくらい商品購入や問い合わせに至ったかの割合を指します。この割合によって導線やUIの課題を浮かび上がらせることができます。
課題:導線設計やフォームUIに問題がある可能性
PV数は取れているのにCV率が低い場合、目的ページまでの遷移しにくさが疑われます。また、入力フォームの離脱率が高くCV率が低い場合は、入力項目が多すぎる可能性やUIが煩雑で使いにくいという課題が潜んでいるかもしれません。
デバイス別・流入経路別の傾向をチェックすることでユーザーの傾向を把握できます。PCとスマホでは閲覧目的や行動が異なるため、ユーザーの前提条件を知ることで、課題やマーケティング施策の立案に役立ちます。
課題:スマホでの体験が良くない
PCとスマホ、デバイスごとの離脱率やCV率を比較したとき、スマホだけ数が落ちている場合はスマホに応じたUI最適化が必要かもしれません。そのほか、ページ読み込み速度やフォーム到達率、入力完了率もチェックするべき指標です。
課題:SEO流入とSNS流入で成果に差が出ている
SNSは閲覧止まり、SEOは購買意欲が高いなど、SEOとSNSでは目的に対する期待値や行動動機が大きく異なるため、同じコンテンツでも成果に差が出るポイントです。流入チャネルごとの滞在時間、直帰率、CV率を確認することでチャネル別のLPO設計などにつなげられます。
当社では、お客さまのWebサイト運用において、数値データを単なる現状把握だけでなく、改善施策の効果測定に積極的に活用しています。例えば、離脱率が高いページの改善策を実施した後には、その施策が離脱率の低下にどの程度貢献したかを継続的にモニタリングします。また、コンバージョン率を向上させるためのA/Bテストを実施した際には、テスト期間中はもちろん、その後の推移も追跡し、改善が継続的な成果につながっているかを確認しながら、次の打ち手を検討します。このように、数値データをPDCAサイクルの「C(Check:評価)」と「A(Action:改善)」に組み込むことで、より精度の高いWebサイト改善を実現しています。
定性データを分析する切り口と、その切り口によってどのような課題が見えてくるかについて解説します。
ヒューリスティック分析とは、ユーザビリティの専門家が経験則にもとづいて専門的な観点でチェックをする分析方法です。UIや情報設計、操作のしやすさなどを多角的に評価し、UX上の潜在的な問題や改善余地を発見できます。
課題:UIに一貫性がない、視線誘導、視認性、情報設計が良くない
ボタンのラベルや配置がページごとにバラバラで一貫性のないUIや、視線の流れの悪い箇所、ページの階層構造が不明瞭でユーザーが迷子になりやすいなど、設計上のクセや操作に不慣れな人の視点を代理で評価できます。
ユーザーの操作体験に注目し、データや観察を通じて行動の背景や感情を読み解く手法です。特にユーザーの迷いやつまずきのポイント、期待していたのに得られなかった体験など、可視化されにくい課題を浮かび上がらせることができます。
課題:ユーザーが迷う箇所、心理的負荷、期待とのギャップ
どこをクリックすべきかわからず画面を行き来してしまう、文言の意味がわからず操作が進まない、入力項目が多くて途中であきらめてしまうなどの設計側の配慮不足が発見できます。また、検索や広告で抱いたイメージと実際の商品やサービスの内容が違うため、すぐ離脱してしまったというような期待とのギャップも把握できます。
自社サイトを同業他社のコンテンツ、導線、メッセージの訴求方法を比較することで、自社が当たり前だと思っていることや思い込みを取り払い、改善の方向性を具体的に発見していく手法です。
課題:メッセージの訴求不足、コンテンツの深さ、構成の設計力、情報設計と視認性の差など
同業他社のコンテンツなどから、なぜ成果が出ないのか、どう改善すべきかが具体化されます。ユーザーにとって何が価値として映っているかを読み解き、それに対して自社がどのように立ち位置を調整するかという視点で課題に対する改善策を検討します。
当社がお客さまをご支援する際には、専門的な観点から作成された独自のヒューリスティック評価分析チェックリストを活用しています。これは、UIの一貫性、視線誘導、情報の分かりやすさ、操作のしやすさといった多角的な評価項目に基づいており、経験豊富なWebアナリストがサイトを詳細にチェックし、ユーザーがストレスなく目的を達成できているか、期待通りの行動ができているかといった潜在的な課題を洗い出します。さらに、Webサイトの構築や改善をおこなう際には、同業他社や業界内でベンチマークとなる企業のサイトを徹底的に調査します。
コンテンツの質、情報設計、導線設計、メッセージの訴求方法などを自社サイトと比較することで、自社の強みと弱みを客観的に把握し、差別化できるポイントや改善すべき具体的な課題を発見できます。これにより、単なる模倣ではなく、お客さまのビジネス特性に合わせた最適なWeb戦略を立案することが可能になります。
UXデザイン支援「クイックUX評価サービス-Webサイト/アプリのヒューリスティック評価」
課題が複数見えてきたときは、ビジネスゴール(KGI)に直結する改善から着手するのがポイントです。KGIを分解したKPIを設定することで改善のインパクトを可視化できます。
KGI・KPIの例
KGI(重要目標達成指標):売上高・利益率の増加
KPI(重要業績評価指標):CV数の増加、フォーム到達率、バナークリック率、LP滞在時間など
上記は、売上高や利益率の向上というビジネスゴール(KGI)に向けて、その達成プロセスを細分化し、各段階での成果を測る指標(KPI)を設定しているケースです。KPIとして設定されたCV数の増加、フォーム到達率、バナークリック率、ランディングページ滞在時間などの項目を追うことで、売上に直結する導線や接点の改善効果を定量的に分析できます。また、KPIの数値をBefore/Afterで比較することで、具体的な施策の効果検証も可能になります。
当社では、デジタルマーケティングにおけるWebサイトは「作って終わり」ではなく、継続的な「運用」こそが、成果を最大化する鍵であると考えています。そのため、サイト構築や改善提案をおこなう際には、単発のプロジェクトに留まらず、Webサイトが継続的に向上する仕組みとご支援体制の整備を重視しています。その一環として、KGIを軸にした実行ステップを提供しています。
前述したように、お客さまのビジネスゴールに合わせた明確なKGIを設定し、それを達成するための具体的なKPIをともに策定。それらの指標の進捗を定期的に確認します。そのほか、定期的なレポーティングやミーティングを通じてお客さま社内でのPDCAサイクル定着を支援し、中長期的なWebサイト運用の成功をサポートしています。
このフェーズは知識の習得を目的にするのではなく、プロの思考や判断の方向性を学ぶことがゴールです。外部パートナーと現場で一緒に動きながら、運用の感覚とノウハウの両方を吸収します。
個人の経験や成功体験を属人化させず、チーム全体で活用できる「型(フレームワーク)」に整えるフェーズです。知識や判断軸を明文化し、共通言語として活用することで施策の質や再現性を高めます。
外部パートナーからの支援を段階的に減らし、自社チームが仮説立案・改善実施・検証までを独力で回せる状態を目指すフェーズです。重要なのは、小さな成功体験を積みながら自律的な改善習慣を育てることです。
最後のフェーズでは、Web改善チーム内の成功を一過性の取り組みに終わらせず、全社的な活動へと展開していきます。改善による成果を組織全体で実感・共有できるようにし、Web改善をチームの取り組みから全社の取り組みへと昇華させます。
Webサイトの改善は、課題を曖昧なままにせず、具体的・構造的に捉えて着手していくことが重要です。定量と定性の両面から調査・分析し、優先度をつけて改善を実行する。この一連のプロセスこそが、成果につながるWeb運用の鍵になります。
メンバーズでは、Webサイトにおける課題抽出から改善施策の実行まで、一貫したご支援が可能です。関心をお持ちの方は、下記のサービスページより詳細をご覧ください。
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