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DX推進を加速させる生成AI×Copilot利活用の最前線

DX推進を加速させる生成AI×Copilot利活用の最前線

DX推進のメインテーマとして生成AIを活用した業務効率化が注目を集めています。しかし、大企業では業務の複雑性や既存システムの制約により効率化が進みにくい現状にあります。このようなお悩みを抱える企業の方を対象に、2025年2月、株式会社Low CodeのCOO 青木晃一氏をお招きしてオンラインセミナーをおこないました。

Microsoft 365 Copilotを用いた実務における具体的な活用事例や生成AI導入プロセスのステップや注意点についてお話しいただきましたので、その内容を一部抜粋してご紹介します。

 

青木 晃一 氏株式会社Low Code
COO
青木 晃一 氏
神戸大学卒業後に、教育系スタートアップ企業にて、セールス・マーケティングを担当。その後、AIスタートアップ企業に転職し、生成AIを用いた社内の業務効率化プロジェクトを推進。現在は、株式会社Low Codeにて大手企業を中心にMicrosoft 365 Copilotの導入・定着化支援に従事。1日の半分は生成AIと会話している。

 

尾上 裕隆

株式会社メンバーズ
生成AI推進室 AIプロデューサー

尾上 裕隆
大手企業の業務改善プロジェクトに長年携わり、制作スキルやディレクション、客先常駐で培った現場対応力を活かし、さまざまなソリューションを提案・実行。現在は生成AIを活用した業務変革・DX推進にも関わり業務効率化や改善をより強く推進している。

目次

なぜ今DX推進に生成AIが求められているのか?

前半は、企業における生成AIの業務活用に向けた研修の講師もおこなっている、当社のAIプロデューサー尾上のセッション「大企業の業務効率化に関する課題と生成AI導入における成功ステップ」からスタートしました。

DXを推進する現場が抱える課題

生成AIの登場により、業務効率化や意思決定の支援など、これまで困難だった課題の解決が可能になってきました。生成AIは、データ活用、IoT、SaaSなどと並ぶDX推進の新たな手段・連携先として注目されています。しかし、現場では多様なデジタルツールや既存システムが連携されておらず、業務の非効率化を招いています。

その結果、多くの企業でDXの取り組みが停滞しているのが現状です。さらに、関係部署やIT部門、外部パートナーとの調整業務が増え、現場の担当者には業務負荷が集中し、コア業務に専念しづらい構造が生まれやすくなっています。こうした背景のなかでDX推進における主な課題は「非効率な業務プロセス」「マニュアル不足や属人化」「業務過多」の3つです。これらの課題により、戦略立案や企画といった本来注力すべき業務に時間を割けず、日々の作業に追われる状況が続いています。

課題に対するアプローチ

3つの課題(非効率な業務プロセス・マニュアル不足や属人化・業務過多)を、生成AIや他のソリューションなどを用いて改善させながら業務改革を進める3つのアプローチを紹介します。

  1. 業務プロセスの徹底理解
    マニュアル不足や属人化も含め、そもそもの業務プロセスの見える化をして、業務のなかで改善できる余地を確認します。
  2. ヒトがやるべき業務とAIの役割定義
    見える化、整理された内容とともに人が意思決定としておこなうべき箇所と、生成AIやその他デジタルツールを使って何がおこなえるかの役割を定義・整理します。
  3. 生成AIを活用した多能工化
    それまで専門のスキルが必要だった業務、時間がかかっていた業務に対して生成AIを使うことによって対応する技能を増やしていく多能工化をします。

課題に対するアプローチ

生成AI導入の成功ステップ

いきなり開発・導入をおこなうのではなく、3つのステップにわけて取り組むことによって短期間でビジネス成果につなげます。それぞれのステップについて説明します。

生成AI活用で成果を創出していくための3つのステップ

  • STEP1:業務整理〜活用領域の特定
    生成AI活用効果を導くための一番の成功要因となるポイントは、ユースケース設定です。漠然とした導入では実感も効果も出にくいので、まずどのような活用ができるかをユースケースでしっかり考えておきます。

    業務の整理が必要になるので、業務プロセスの見える化をしてヒアリングや現場の確認、マニュアル確認などをおこないます。また、どのようなユースケースが考えられるか検討する際にも生成AIを活用できます。


    当社ではDifyを利用したアプリで企業の事業内容から生成AI活用の可能性を検討するものや簡易的なヒアリングをおこない、その内容を元に分析をおこなう「簡易業務プロセス診断」を実施しています。

  • STEP2:プロトタイプで高速仮説検証
    限られた時間や予算の制約のなかで本格的な開発に進むか判断するにはさらなる検討が必要です。そこで、開発に着手する前に効果が十分に出るかを検証するためにプロトタイプでの仮説検証を実施します。まず、検証するテーマに対して最適な検証アプローチを選定し、効果的にプロジェクトを進める体制を整えます。

    アプローチごとに、スクラッチ開発・ノーコード系・ローコード系でわけ、それぞれの導入ハードルや開発の柔軟性、操作性、セキュリティなどを比較します。ツールの選択肢には後ほど使い方を解説するCopilotも入ってくるケースもあるかもしれません。それぞれのツールに利点や違いがあるので、慎重に検討してから次のステップへ進めます。

  • STEP3:PoC開発〜業務フロー組み込み
    検証結果を踏まえてPoC(Proof of Concept:概念実証)を進めます。投資対効果を試算し、それが効率化、コスト削減につながるかの確認をおこない、開発・検証します。PoCを実施後、結果で成果について評価し、投資対効果の確認をしたうえで本格的な導入へ進めるかどうかの判断をして、導入とそれに伴う業務フローの策定など組み込みに向けた準備を進めます。

Microsoft 365 Copilotで業務を効率化するポイント

後半は、株式会社Low Code青木氏より、生成AIの活用についてMicrosoftが提供するチャットベースの生成AICopilotを全社員の80%以上が業務活用できるようにするためのキラーユースケースなどをご紹介いただきました。

Microsoft 365 Copilotとは

今回説明するMicrosoft 365 Copilot は、Microsoft365のサービスに対して操作・修正する能力を持った生成AIです。例えば、Excelを使っているときにCopilotに指示を出すとグラフの作成、PowerPoint内のスライドの作成や修正ができる生成AIで、大手企業を中心に導入が進んでいます。

また、Copilotを利用するメリットはセキュリティ・ガバナンスの信頼があることや既存のMicrosoft製品(Teams、Outlook、Word、PowerPointなど)との連携が容易なため、導入がしやすいというメリットがあります。さらにCopilotはさまざまな機能が搭載されており、Teamsなら会議の要約、議事録作成、翻訳、Outlookならメールの下書きを作る、PowerPointで資料作成などできることが豊富です。

Copilot活用において重要な3つのポイント

しかしながら、その使いやすさには濃淡があります。導入したものの使われないというケースも多くあり、「できること」のなかでも「使いやすいもの」と「ちょっと使いにくいもの」があるので、それが活用率の差につながっているものだと考えられます。よくあるケースは、作業のPowerPointのスライド作成やExcelの大量データから高度な分析をするというものがありますが、PowerPointでスライドを作成させてみると大体50点ぐらいの仕上がりになります。

使ってみた方は実感していると思いますが、これを見て「使えないな」と判断してしまう方もいるのかもしれません。
では、どのようにして多くのユーザーがCopilotを使ってくれるのか?活用しやすくするための3つのポイントを紹介します。

  1. Copilotの得意な業務を把握する
    キラーユースケースを現場に告知して使ってもらいます。例えば「メールの下書きが作れます」で終わりにさせず、「電車内でのメール返信はスマホからCopilotを使いましょう」のような形です。「会議でTeamsを使いましょう」だけではなく、「会議後は直ぐ、Copilotで議事録を作ってネクストアクションを把握しましょう」と具体的に伝えます。その他、おすすめしているのは社内情報の検索です。Copilotを使えば資料作成時にすぐに参考資料を見つけられます。
  2. 適切に指示する
    Copilotは適切に指示をすることも重要です。プロンプトは生成AIに指示を出す文章ですが、Copilotも製品ごとに良いアウトプットが返ってくるプロンプトが判明しつつあります。そのため、ユーザーは効果的なプロンプトの使い方を習得することで、より精度の高い結果を得られるようになります。
  3. フィードバックしてブラッシュアップする
    場合によってはCopilotに指示を出しても思っていたものとは違う回答が返ってくることもあります。このような場合は、フィードバックしてブラッシュアップするのも重要です。チャット形式なので「○○を変えてください」と入力して回答をやり直すほかにも、音声で指示することができます。指示出しを音声で入力することで入力の手間を省くという使い方もおすすめしています。マイク(音声入力)を使うとCopilotの指示出しが驚くほど楽になります。

Copilot活用において重要な3つのポイント

Copilotの活用手順

Copilotを活用してもらうためには活用の順番が大事です。実は、多くの企業さまがCopilotを導入するとすぐに「作業時間を半分にしてほしい」「年間で○○時間を削減してください」というように効果を求めてしまいます。しかし、効果がある部分だけに使おうとした結果、全然使われないケースがあります。そうならないためには、まずは利用率を高め、そして、業務改善効果を算出する。この順番を意識して導入することが大切です。

トークセッション

事前に集めていた参加者さまからのご質問に対し、トークセッション形式で回答しました。

生成AIの普及がもたらす変化と企業の取り組み

Q1.Copilotをはじめとする生成AIの普及が進むなかで、企業の業務プロセスや組織のあり方は今後どのように変化していくと考えていますか?現在、企業の最前線ではどのような取り組みをおこなっているかもあわせて教えてください。

尾上 裕隆

尾上

新しい生成AIのニュースを日々耳にするので、色々アップデートされているなと思っています。今年はこれからAIエージェントが流行るだろうといわれていますし、Copilotの方でもそういった製品もあると思いますが、そういった最前線の部分と従来の生成AIと共通する部分というのがあると思いますので、それぞれを把握しておくのが大事なのかなと。
青木 晃一 氏

青木氏

ご支援企業さまで生成AIを上手く活用しているケースがあります。いわゆるChatGPTとかCopilotというような、汎用型生成AIといわれるものを導入されているのですが、活用に2つのポイントがあると思っています。まずは全社員にとにかく使ってもらうというのを意識されていて、それで生産性を高めていくのはもちろんなんですが、どちらかというと生成AIに慣れてもらう、リテラシーを高めるために実施しているというのが1つ目のポイント。

ただ、これだけだと生成AIを業務の最前線で積極的に活用し、仕事の効率や生産性をより向上させていくには不十分なので、もう1つのポイントはAIエージェントや、自社に合った生成AIツールを作り、より業務に特化した生成AIを使いこなしてもらうこと。

でも、これだけだとツールを使いこなせない方がいるので、とにかく汎用型で使い方を学んでいただきながら業務に合った生成AIを浸透させていく。この2つのポイントを組み合わせて使っている企業さまは、業務における生成AI活用が進んでいますし、効率化が進んでいるという認識です。
尾上 裕隆

尾上

生成AIがわからないとか、毛嫌いする方もいるので、生成AIを広げる取り組みが必要ですね。
青木 晃一 氏

青木氏

よくいただく質問で「生成AIを使いこなすためには、何の力が必要ですか?」というのがあるんですが、僕は「のび太力です」とお伝えしています!どういうことかというと、今後生成AIは進化してドラえもんみたいになると思うんです。お願いしたらなんでもかえってくるような。でも、使いこなせない方の多くは一旦自分で考えてから指示を出そうとして、結局生成AIに依頼していないように見受けられます。でも、僕からすれば「生成AIは何でもできますよ」と。のび太が「ドラえもん、○○して!」というように、何でもお願いするのが大事ですと伝えています。
尾上 裕隆

尾上

お悩みとして多いのはプロンプトが上手く書けない。書きたいけど、書けない。そういう方は多いのですが、僕は「のび太力」ではないけれど「AI筋を鍛えましょう」と言っています。例えば、どういうプロンプトならより効果的か?というのを生成AI自身に訊くこともできますし。とにかく、どんな形でも最初の一歩を踏み出していくのが大事です。

Copilotが広げるアプリ開発と業務自動化の可能性

Q2.Microsoft365Copilotは、現在主にドキュメント生成やデータ分析に使われていますが、TeamsやPower Automateなど他のMicrosoft製品との連携によって、今後どのような業務領域が広がる可能性がありますか? 

青木 晃一 氏

青木氏

ご質問ありがとうございます。Power AutomatePower Appsと呼ばれる自動化やアプリを簡単に作れるツールがありますが、ここにも今Copilotが入り込んでいて例えば「こういうアプリが作りたいです」と指示を出すと、60点ぐらいのタタキを作ってくれます

その後微調整や修正は必要ですけども。これまでアプリを自動で作るのは難しかったのですが、生成AIが入ることで簡単にできるようになっていますし、Copilot Studioというツールで独自のCopilotが作れるようになっています。本当に、業務に関連した作業が何でもできるようになってきているという感覚です

生成AIを社内に広めるには?

Q3.Copilotや生成AIの業務利用を進める際、どのように社内展開や定着化を進めるべきでしょうか?成功している企業の取り組み方を可能な範囲で教えてください。

尾上 裕隆

尾上

研修を支援させていただく際に「エバンジェリストを育成する」という言葉を良く使うのですが、例えば、社員100名がいる企業の場合、100名全員がきれいに生成AIを使いこなせるようになるというのは難しいと思うので、前向きに取り組んでいただける方に優先的に覚えていただいて、そこから周囲に広めていただくのが重要かなと思っております。
青木 晃一 氏

青木氏

今言っていただいたエバンジェリストを育成していくというのはめちゃくちゃ大事だなと思っていて。あともう1つ、私が重要だと思っているのは、トップ層、経営層がコミットしているかどうかという点です。活用率が高い企業の事例として上がるのは、大体経営層がコミットしている企業なので、そうなっているかどうかで活用率が変わっているというのも感じます。ですので、現場のリーダーやエバンジェリストから浸透させるのも大事ですが、経営層にもコミットしていただくのも大事だと思っています
尾上 裕隆

尾上

この辺についてご相談を受けることもあるのですが、やはり、上の層の理解や承認を得られないということもあるかと思いますので、そういったご説明にもわれわれが一緒に取り組んでいければと思っています。

「まずは触ってみる」生成AIを定着させる第一歩

Q4.Copilotや生成AI導入企業のなかには、導入したものの思ったように活用できていないという声もあります。どのような課題が多く、解決のためにはどのような工夫が必要でしょうか?

青木 晃一 氏

青木氏

こういった声は多いですが、上手く使おうとしすぎなのかなと。最初から上手く使えない人は多くないので、上手く使えるかどうかの前に一旦全部の機能を触ってみましょう!とお伝えしています。そうすると「これだったら使えるな」「こうしたら使えるな」というのが見つかると思います。
尾上 裕隆

尾上

どう使っていいかわからないとケースと、業務過多で時間が割けないケースがあると思いますが、プロンプトのテンプレートで対応できることもあれば、プロンプトを考えるところからスタートする場合もあると思うので、ご相談いただいた状況に応じて対応していければと思います
青木 晃一 氏

青木氏

メンバーズさんもわれわれもお互いに生成AIに関する研修を持っていますので、そこから入らせていただいても良いかと思います

最後に

今回のセミナーでは、生成AICopilotを活用したDX推進の実践的な知見が数多く共有されました。業務プロセスの可視化から始まり、PoCによる仮説検証、そして本格導入へのステップまで、体系立てて導入を進めることで着実な成果に結びつけることが可能です。特にMicrosoft 365 Copilotは、社内ドキュメント作成や会議の議事録作成など、日常業務に直結する機能が豊富にあり、すぐにでも活用を始められます。

本レポートを読まれた方は、まず自社業務のなかで非効率や属人化が起きている領域を洗い出し、生成AIが力を発揮できる場面を探ることをおすすめします。もし社内で検討が難しい場合は、業務棚卸やユースケース特定の支援サービスを活用し、第一歩を踏み出す体制を整えることも一つの手です。

生成AI使いこなすではなく使い始めることが、変革の第一歩です。

執筆者紹介

株式会社メンバーズ

「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。

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