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ビジネスアーキテクトとは?DX・AXを成果に変える役割と社内での育成法

ビジネスアーキテクトとは?DX・AXを成果に変える役割と社内での育成法

AIツールの導入は進んだのに、事業成果に結びつかない。推進役を任命したのに、部門をまたぐ調整ができず動かない。この停滞は、AIやシステムの性能不足によるものではありません。事業戦略とテクノロジーの間をつなぎ、組織を含めた全体の構造を設計する役割が置かれていないことに原因があります。それを担うのがビジネスアーキテクトです。一方でIPAの「DX動向2025」では、日本でもっとも不足している人材がビジネスアーキテクトであると報告されており※1、採用と育成が難しい存在でもあります。

 

本記事では、2026年4月に改訂された最新版のデジタルスキル標準をベースに、ビジネスアーキテクトの役割と不在時のリスク、自社に必要かを見極める判断基準までを解説します。さらに、採用と育成が難しいビジネスアーキテクトの社内育成方法についても紐解きます。

※1:出典「DX動向2025 - 日米独比較で探る成果創出の方向性」(IPA・2025)

目次

ビジネスアーキテクトとは何か

ビジネスアーキテクトは「ビジネスや業務の変革で実現したい目的を定義したうえで、経営視点で最適なビジネスモデルと業務プロセスを設計し、戦略を行動に落とし込み、成長サイクルを生み出しながら、関係者をコーディネートしプロセス全体を牽引して成果を創出する役割」と定義されています※2。ここでのポイントは「成長サイクルを生み出しながら」という点です。これは、単なるIT導入の調整役や、一度の変革プロジェクトを仕切って終わる役割ではなく、ビジネスモデルそのものを変革し、成果が出続ける仕組みを設計することが求められています。

なお、2026年4月最新版のデジタルスキル標準ver.2.0(DSSver.2.0)では、企業内の推進を担う類型として「データマネジメント」が追加されています※3。

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※「デジタルスキル標準 DSS-P 分冊版 ver.2.0」をもとにメンバーズが作成

DXの推進において必要とされる主な役割は、以下の6つの類型として定義されていますが、ビジネスアーキテクトとその他の5つの類型のもっとも大きな違いは、「ビジネス全体の構想と牽引」を担うか、「専門性に基づく具現化・実装」を担うかという立ち位置にあります。

 
ロール 一言でいうと 役割
ビジネスアーキテクト ビジネス変革の設計と牽引 経営視点で最適なビジネスモデルや業務プロセスを設計し、関係者を巻き込みながらプロセス全体を牽引して成果を創出する。
データサイエンティスト データ解析とAIシステムの構築 データ活用による業務変革や新規ビジネス実現に向けて、データ解析やAIシステムの設計・実装・運用を担う。
データマネジメント データ基盤の構築と利活用の促進 データの安全性と信頼性を確保する流通の仕組みを構築し、組織全体のデータ利活用と価値創出を促進する。
サイバーセキュリティ デジタル環境のリスク対策 業務を支えるデジタル環境において、サイバーセキュリティリスクの影響を抑制し対策を講じる。
ソフトウェアエンジニア システムやソフトウェアの構築 デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するための、システムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う。
デザイナー 顧客体験とサービス全体のデザイン ビジネスや顧客の視点から製品・サービスの方針やプロセスを策定し、ブランドやタッチポイントを含めた全体のデザインを担う。

なぜ今ビジネスアーキテクトが必要とされているのか

IPAが公開した「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」2025年版によると、DXを全社戦略に基づき継続的に推進できている企業は3%にとどまります。もっとも多いのは、一部の部門が散発的に取り組んでいる段階です※4。

この分布が示しているのは、DXが全社横断で実施されておらず、現場単位の散発的な取り組みに終わっているという実態です。部門単位の取り組みが次の段階へ進むには、ビジネス側の要求とテクノロジーの実装を統合し、全体最適の仕組みとして構築する部門横断の変革が不可欠です。

ところが、この旗振り役となる人物をアサインするにも、現実には「ビジネスはわかるがITに疎い」「ITには詳しいがビジネスを知らない」という分断が壁となります。この事業と技術の分断をまたぎ、変革を牽引することこそが、ビジネスアーキテクトに期待される役割の中核です。

※2:出典「DX推進スキル標準(DSS-P)概要」(IPA・2026)
※3:出典「デジタルスキル標準ver.2.0(DSSver.2.0)を公表します」(経済産業省・2026)
※4:出典「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート(2025年版)」(IPA・2026)

ビジネスアーキテクトの役割・スキルセットと不在時のリスク

ビジネスアーキテクトが組織のなかで果たす機能は、変革の方向づけ、事業構造とロードマップの設計、判断基準の組織への定着の3つに整理できます。それぞれに対応するスキルは次のとおりです※5。

 
ビジネスアーキテクトの役割 高い習熟が求められるスキル
役割1
変革の方向づけを経営戦略から定める
ビジネス環境と経営戦略の理解/事業戦略の策定とマネジメント/変革テーマや事業単位の組織成熟度とケイパビリティの検討
役割2
事業構造とロードマップを描き、投資判断を支える
ビジネスとエンタープライズのアーキテクチャ設計/ビジネス価値定義と投資対効果の試算と意思決定支援
役割3
判断基準を組織に残し、担当者が変わっても判断がぶれない状態をつくる
アーキテクチャマネジメントとガバナンス/ビジネスモデリングとコラボレーション/顧客やユーザーとステークホルダーの理解

※「デジタルスキル標準 ver.2.0」をもとにメンバーズが作成

役割1:変革の方向づけを経営戦略から定める

変革の出発点は、変革で何を実現したいのかを定義することです。経営戦略と自社の実行能力を踏まえ、「何を変えるべきか」を決めることが、ビジネスアーキテクトの重要な役割です。

不在時のリスク

変革のテーマが、各部門から上がる要望の積み上げになります。こうなると、前述のように変革が現場単位の散発的な取り組みに終わり全社横断で実施できず、事業インパクトの創出が小さくなるリスクがあります。

役割2:事業構造とロードマップを描き、投資判断を支える

経営戦略を全体最適の事業構造や施策に落とし込むことも主な役割です。変革のロードマップとしてプロダクトやプログラムのポートフォリオを立案し、経営層の投資判断と意思決定を支援します。

不在時のリスク

プロジェクトチームが個別の施策が事業価値にどう結びつくかを説明しているつもりでも、経営層は投資判断根拠として納得できる水準に届かず、承認が滞ります。現場は経営が理解してくれないと受け取り、経営層は現場が全体像を描けていないと感じたまま、プロジェクトは推進力を失っていくリスクがあります。

役割3:判断基準を組織に残し、担当者が変わっても判断がぶれない状態をつくる

変革活動における投資や技術選定の判断基準、システムを設計する際の全社ルール、部門ごとに解釈が違っていた言葉の定義を統一・整備します。この基準を組織に定着させるためには、多様なステークホルダーの状況を正しく理解し、横断的な合意形成を推進するスキルが不可欠です。個々の判断が担当者の裁量に委ねられない状態をつくることが、この役割の要点です。

不在時のリスク

過去の意思決定の経緯や設計意図が可視化されず、プロジェクトのブラックボックス化を引き起こします。変革を進める上での判断基準やルールが組織のナレッジとして蓄積されないため、人が入れ替わるたびに経緯のキャッチアップに追われるだけでなく、組織に変革を実行する能力が育たないというリスクを抱える可能性があります。


※5:出典「デジタルスキル標準 ver.2.0」(IPA・2026)

自社にビジネスアーキテクトは必要か。導入判断のためのチェックポイント

ここまで、ビジネスアーキテクトが担う3つの役割と、それぞれが欠けたときのリスクを見てきました。この役割が必要になるのは、部門の壁を越えた変革をおこなうときです。次の5項目のうち3つ以上に該当する場合は、ビジネスアーキテクトの設置を本格的に検討する段階にあります。

ビジネスアーキテクトの設置を検討するための5項目

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1.変革テーマが現場の要望の積み上げで決まっている
経営戦略や事業戦略から逆算して「何を変えるべきか」を方向づける機能が働いていない状態です。

2.個別施策と経営戦略のつながりを説明できない
変革プロジェクトの取り組みが経営目標にどう貢献するのかを示すロジックが弱く、経営層で投資の妥当性を判断できません。

3.変革後の組織のあり方まで設計できていない
設計対象に組織が含まれていないため、業務だけが変わって現場が板挟みになります。

4.部門をまたぐ変革を設計する人が決まっていない
個別のプロジェクトを進行管理する担当者はいても、部門間の業務プロセスをつなぎ合わせて設計する責任者が不在の状態です。

5.意思決定が属人化し、ナレッジが組織に蓄積されない
プロジェクトでのノウハウが個人に閉じてしまうため、変革を実行する力が組織全体に積み上がりません。

ビジネスアーキテクトの育成戦略

自社でビジネスアーキテクトを育成するには、デジタルスキル標準(DSS ver.2.0)に準拠して必要な役割を明文化し、座学と実プロジェクトでのOJTを組み合わせることが基本となります。土台となるのは以下の4点です。

・スキルの定義:デジタルスキル標準バージョン2.0の共通スキルリストに基づき※5、育成計画を立てる
・現在地の可視化:ビジネスアーキテクトに必要なスキル項目と自社メンバーの現状を突き合わせ、育成の優先順位をつける
・リスキリングの方向性:技術の習得ではなく、技術をどう事業構造に落とし込むかに焦点をあてる
・実践の場の創出:実在の業務を題材に、組織や権限、KPIの再定義まで含めて設計させる

研修だけでは「変革の担い手」は育たない

しかし、ビジネスアーキテクトの実践スキルは座学の研修だけでは習得できません。IPAもデジタルスキル標準の本文で、スキルを闇雲に身につければDXが進むというものではない、と留意を促しています※5。既存の組織構造との摩擦を乗り越え、全体最適の仕組みを設計する力は、実際の変革プロジェクトに入り、試行錯誤を繰り返すなかでしか培われません。

変革サイクルを回しながらビジネスアーキテクトを社内育成する

上記を踏まえ、実務で活躍する人材を育てる最適な手段は、自社の変革サイクルを回しながらOJTを実施することです。現在の企業変革において、もっとも推進が求められているテーマがAXです。メンバーズは「あたかも社員®」として大手企業のDX現場に入り込んできた経験から、現場で生まれた成果を部門間から経営へとつなげてはじめて、AI活用は事業変革に至り、企業価値の向上につながると考えています。AXにおけるビジネスアーキテクトとは、このつなぎ役を担う人です。

当社が提供する「やりきるAX」では、お客さまと一緒にAI活用を【活用・効果・還元】のサイクルとして回し、その進め方を社内に引き継ぎます。その過程で社内のメンバーは、部門間の調整や経営への説明を実際に経験し、ビジネスアーキテクトとしての力を身につけていきます。

※あたかも社員は当社の登録商標です。あたかも社員(登録商標第6923667号)

 
サイクルの構成要素 内容 ビジネスアーキテクト視点

AI Readiness

(活用の土台)

業務プロセスの可視化、AI-Readyなデータ整備、サンドボックス・ガバナンスの整備 業務プロセスとデータを、部門をまたいで使える共通資産として組織に残す

Evaluation

(実装に落とし込む装置)

価値達成の判定(価値KPI)、品質適合の検証(品質基準)、リスクの検出(許容度の設計) 効果と品質とリスクの判断軸を企画段階で定め、次の投資判断の材料を経営に上げる

Activation

(サイクルを駆動する起点)

従業員への利益還元、顧客への価格還元、還元による従業員体験と活用意欲の向上 還元によって生まれる次の投資意欲を、変革の方向づけに反映させる

メンバーズの支援は、助言や成果物の納品ではなく、お客さまの組織の内側でこのサイクルを回し、自走できることを目指しています。戦略から実行、ノウハウ移管まで段階を分けて進めるため、立ち上げは外部、定常運用は内製へ引き継ぐ形になります。

関連ニュース:業務改善から意思決定まで、AIの業務実装に向けたデータ環境づくりを支援。AI Readyデータマネジメント常駐支援サービス提供開始

ビジネスアーキテクトに関するよくある質問

ここでは、ビジネスアーキテクトに関するよくある質問や疑問について、回答します。

ビジネスアーキテクトはコンサルタントを雇うのと何が違うのか

もっとも大きな違いは、判断の基準が組織の内側に残るかどうかです。外部のコンサルタントは、質の高い専門知識や経営層へのレポーティングをもとに、短期間でプロジェクトの方向性を策定できる点に強みがあります。一方で、関与が終わった際にノウハウが組織に残りづらいというデメリットがあります。その点、ビジネスアーキテクトは、コンサルタントのような動きをしつつも、組織の内側で継続的に活動し、担当者が変わってもノウハウを組織に残すことが役割の中身となります。

両者は二者択一ではありません。立ち上げ期に外部の知見を借りながら、その過程で社内にビジネスアーキテクトの機能を育てていくことも可能です。判断すべきは外部か内部かではなく、外部の関与が終わったあとに何が組織に残るように設計されているかです。

ビジネスアーキテクチャとビジネスアーキテクトの関係は

ビジネスアーキテクチャとは、ビジネスアーキテクトが設計する業務プロセスや役割、組織構造のことで、企業全体を捉える4つの層の起点にあたります。

 
企業全体の構造を捉える4つの層 設計する対象
ビジネスアーキテクチャ 組織の業務プロセスや役割、ルール、組織構造そのもの
データアーキテクチャ 業務で扱うデータや情報資産の整理と、管理や共有の方法
アプリケーションアーキテクチャ 業務を支えるシステム同士の配置と連携
テクノロジーアーキテクチャ IT基盤やインフラの設計と管理方法

ビジネスアーキテクチャが4つの層の起点とされるのは、実現したい業務と組織の姿が決まってはじめて、データやシステム、IT基盤のあるべき形を設計できるためです。この起点となる層が定まらないままデータやシステムの構築を進めると、構築したものの使われないシステムが残ることになります。なお、ビジネスアーキテクチャを学ぶうえでの代表的な知識体系としては、国際的な標準フレームワークであるTOGAFなどが知られています。

ITアーキテクトとの違い

システム開発の一般的な枠組みでは、事業や業務の視点から全体最適の構造設計をおこなうのがビジネスアーキテクト、システムやデータ、IT基盤といった技術側の構造設計をおこなうのがITアーキテクトとして役割分担されることが多く、両者は補完関係にあります。先ほどの企業全体の構造を捉える4つの層で言えば、ビジネスアーキテクチャの層を扱うのが前者、その下の3層を扱うのが後者にあたります。

なお、この領域の呼称は企業によって幅があり、ソリューションアーキテクト、DXアーキテクト、デジタルアーキテクトなどが使われます。呼び方は違っても、事業構造の側を見るのか、技術構成の側を見るのかで整理できます。

ビジネスアーキテクトとPMOとの違い

一般的には、ビジネスアーキテクトは何をやるかの戦略を決め、PMOは戦略実現のためにPM(プロジェクトマネージャー)に伴走し、プロジェクト推進を支援する役割にあたります。変革を推進するには、戦略の意図を理解したPMOがプロジェクトに立ち、現場を改革するアプローチが有効です。

※関連コラム:PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは?AI時代に求められる変革力とPMとの違い

構造を設計しきるビジネスアーキテクトが、AX戦略を成果に変える

ビジネスアーキテクトは、事業と技術のあいだを取り持つ調整役ではありません。経営戦略を事業構造に翻訳し、判断基準ごと組織に残して、成果が出続ける状態をつくる役割です。そして日本でもっとも不足しているこの人材を、市場からの採用だけで揃えるのは現実的ではありません。変革の現場にすでに立っている人材に構造の視点を持たせ、実践のなかで育てる。その道筋を用意できるかどうかが、AI活用を事業成果に変えられるかの分かれ目になります。

自社の変革は、担当者が変わっても続く形になっているか。続かないのであれば、足りないのは人手ではなく、設計する役割そのものかもしれません。その見極めから、変革をやりきる体制づくりは始まります。

関連ニュース:現場部門起点で部門間・経営へとAXを促し、事業変革を実現するAIサービス群「やりきるAX」を提供開始。当事者型伴走で変革サイクルを継続駆動


※本コラムは、2026年9月時点の公開情報をもとに構成したものです。

執筆者紹介

株式会社メンバーズ

株式会社メンバーズは、「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、顧客と共に社会変革をリードするデジタル実装パートナーです。

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