執筆者紹介
株式会社メンバーズ
「“MEMBERSHIP”で、心豊かな社会を創る」を掲げ、DX現場支援で顧客と共に社会変革をリードする、株式会社メンバーズです。


全国約250店舗を展開するユナイテッドアローズは、「UAクラブ」という統一会員IDのもと、店舗・アプリ・オンラインのすべての自社チャネルを横断するCRMを運営している。購買データにとどまらず、お気に入り登録やレビューといった行動データ、アンケート回答、メール・アプリへの反応データを蓄積し、施策に活かす設計だ。セッションの中で池田氏が示したデータフロー図には、AIブロックからの矢印が点線で表示されていた。
「AIを全く使っていないわけではありません。データ抽出やメール文章の生成にもチャレンジしました。ただ、効果とのバランスを考えると、現時点ですべてを自動化に委ねるところまでは至っていない、というのが正直なところです」
AI活用の華やかな事例が多く語られる昨今において、この率直さは逆に示唆に富む。「効率」を求めるAIと、「愛着」を育むCRMの間で、多くの企業が同じ問いに直面しているのではないだろうか。
ユナイテッドアローズがLINE活用の強化に乗り出したのは、約2〜3年前のこと。当時、LINE公式アカウントの稼働会員(年1回以上購買のある会員)に対するカバー率が他チャネルと比較して低く、改善の余地が大きいことが明らかになっていた。
そこで取り組んだのが、「LINEを使っているお客さまの解像度を上げること」だ。具体的には、ロイヤリティプログラムのステージ(ダイヤモンドなど)とLINEアカウント連携率の相関を分析し、「ダイヤモンド会員の連携率を10%伸ばすとLTVはどう変わるか」といった試算を重ねながら、優先度の高い施策領域を特定していった。
店舗・EC・LINEそれぞれのチャネルからの友だち追加経路と、その先のアカウント連携(会員登録)までの導線を設計し、連携済み・未連携のユーザー別にコミュニケーション内容や頻度を最適化する。地道ではあるが、こうした「正確なtobe設計」こそがCRMの基盤となる。

設計の解像度が上がるほど、課題も明確になってきた。「人が足りない」という、マーケティング組織が常に直面する、構造的な問題だ。ユナイテッドアローズのマーケティング部には、中途採用メンバーや店舗出身者も多い。担当になったばかりのメンバーがCRMやデータ活用の知識・経験不足でつまずくケースが少なくなく、それがチームとしての実行スピードを下げる一因となっていた。
こうした状況を打開するために活用したのが、株式会社メンバーズとの業務委託による支援だ。まず取り組んだのはデータ環境の整備。施策ごとに手作業での抽出に頼っていた部分を仕組化し、自動連携を実施。LINE公式アカウントのデータ抽出とタグ設定を整備することで、効果検証のサイクルを大幅に短縮した。また、外部パートナーとのミーティングや、IT部門との専門的な調整業務にも同席し、「あたかも社員®のように」プロジェクトを推進する形で支援をおこなった。
※あたかも社員は当社の登録商標です。あたかも社員(登録商標第6923667号)
この取り組みによって生まれた成果は、施策の実行スピード向上や効果検証サイクルの改善にとどまらない。池田氏がもっとも強調したのは、チームの人材的な変化だった。
「一番良かったのは、担当になった若手たちの視座が上がったことです。ただ視座が上がっても、実践がなければ意味がない。伴走していただいたことで、チームとしての内製化も着実に進んでいます」
知識のインプットと実践の場を同時に提供する「インハウスのような外部リソース」の活用が、組織の自走力を育てるという逆説的な効果をもたらした形だ。こうした地盤が整ったことで、次のフェーズとしてのAI活用や全自動化も視野に入りつつある。CRMにおけるAIの「点線」が、実線に変わる日は遠くないかもしれない。
ユナイテッドアローズの事例から見えてくるのは、CRM強化と内製化に向けた以下のような実践的な道筋だ。
チャネルの使い分けより「全チャネル保有」を目指す ― LINEとアプリは競合ではなく、LTV向上の相乗効果をもたらす
AI活用は現状を正直に見る ― 効果とのバランスを見極めながら段階的に進める
ロイヤリティ×LINE連携率の解像度を高める ― 感覚ではなくデータで優先度を設計する
外部リソースを「インハウスのように」活用する ― 施策実行と人材育成を同時に進める
本コラムは、ダイレクトアジェンダ2026(2026年3月開催)における株式会社ユナイテッドアローズ 池田氏、株式会社メンバーズ 関の登壇セッションをもとに構成しています。
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