TCFD提言への対応

2021年4月、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDコンソーシアムに加入しました。今後、気候変動が当社の事業に与える影響を分析し、リスク及び機会の抽出・対応を講じるとともに、関連する情報の開示を行い、持続可能な社会の構築に向けて取り組んでまいります。

TCFD提言が推奨する情報開示項目

要求項目 項目の詳細 推奨される開示内容
1.ガバナンス 気候関連リスク・機会に関する組織のガバナンス
  • 取締役会による気候関連課題の監視体制
  • リスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割
2.戦略 組織の気候関連リスク・機会とそれによる事業・戦略・財務への影響
  • 短期・中期・長期のリスクと機会
  • リスク・機会が事業、戦略、財務計画におよぼす影響
  • 関連するシナリオによる影響とそれに対する強靭性
3.リスク分析、管理 気候関連リスクの特定・評価・管理のプロセス
  • 気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細
  • 気候関連リスクの管理プロセスの詳細
  • 全社リスク管理の仕組みへの統合状況
4.指標と目標 気候関連リスク・機会の評価・管理に用いる指標と目標
  • 気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
  • 温室効果ガス排出量
  • 気候関連リスク・機会の管理に用いる目標および実績

1.ガバナンス

当社グループでは「Members Story」および「環境方針、環境宣言」に基づき、社会課題「地球温暖化および気候変動による環境変化」に着目し、解決に取り組むことを宣言しています。
監査等委員を除く取締役およびグループ執行役員で構成されるグループ経営会議において、気候変動を始めとする社会課題に関する重要案件の審議・決定を行うとともに、それに気候変動対応を含む環境への取り組み状況の評価・管理を行います。
また、気候変動をはじめとする環境リスクやサステナビリティに関する意思決定機関としてサステナビリティ推進委員会(議長:サステナビリティ担当取締役)を年1回以上定期的に開催します。サステナビリティ推進委員会で挙がった気候変動に関わる重要な環境リスクや気候変動問題を含む社会課題については、リスク・コンプライアンス委員会と連携し、少なくとも年に1回、加えて議題により適宜取締役会に報告し、監督される体制を構築しております。

ガバナンス

環境マネジメント体制における会議体および役割

会議体および体制 役割
取締役会 当社の取締役会は、取締役6名から構成されており、定時の取締役会を毎月開催するほか、必要に応じて臨時で開催し、経営に関する重要事項の協議決定、業務執行の監督を行っております。
経営の基本方針『Members Story』に基づき協議・承認された気候変動課題を含む環境課題に関する取り組み施策の進捗を監督するほか、戦略・リスク管理・年間予算・事業計画の審議と指導、及び主要な資本支出・買収・売却を監督します。
また、少なくとも年に1回気候変動に関係する議題を取り扱います。
グループ経営会議 当社のグループ経営会議は、ミッションの実現に向け取締役会が決定した基本方針及び『Members Story』に則り、取締役会より委譲された権限に基づき、業務を執行します。原則として定時で毎月2回開催するほか、必要に応じて臨時グループ経営会議を開催し、グループ経営会議規程に基づき環境課題に対する具体的な取り組み施策を含む経営に関する重要事項の協議決定(取締役会決議事項を除く)、取締役会に上申する議題の細部の検討を行っております。
リスク・コンプライアンス委員会 管理部門担当取締役を委員長としたリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。メンバーはグループ執行役員によって構成されており、常勤監査等委員である取締役がオブザーバーとして参加します。
環境課題を含むリスク管理及びコンプライアンスに関する重点課題の策定及び目標達成に向けた課題について、四半期に1回以上協議、決定を行い、適宜取締役会に報告します。
サステナビリティ推進委員会 サステナビリティ担当取締役を委員長としたサステナビリティ推進委員会を設置しております。メンバーはグループ執行役員によって構成されており、常勤監査等委員である取締役がオブザーバーとして参加します。
気候関連リスクと機会の評価及び管理や目標達成に向けた対応について、協議、決定を行い、少なくとも年に1回取締役会に報告します。
環境マネジメントシステム

2.戦略

当社はTCFD提言に基づき、全社を対象として気候変動リスク・機会による事業インパクト、対応策の検討に向けたシナリオ分析を行い、1.5℃~2℃及び4℃の気温上昇時の世界を想定し、2020年度より将来までの間に事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。

その結果、リスクとしては、電力価格の上昇に伴う環境価値証書価格の大幅拡大が懸念され、価格影響額を試算した結果、以下の通りコスト上昇の可能性があることがわかりました。
(2020年実績、2030年見込み)

リスク 1.5℃~2℃ 財務インパクト 計算式
環境価値証書価格 約1億円のコスト 1tCO2あたりのJクレジット価格×調達量(※1)(※2)
  1. Jクレジット価格の推移データを参考に、1.5℃~2℃では2020年10月の日本政府の脱炭素宣言~現在までのJクレジット価格の推移率を使用し、2030年のJクレジットの価格を算出。
  2. 事業拡大に伴う増加分も加味。

機会としては、脱炭素・サステナビリティのニーズ拡大に伴う脱炭素DX支援・CSV経営・CSV型プロモーション実行支援等の拡大等が見込まれることがわかりました。

当社は今後一層、環境方針・環境行動指針に従い、自社のみならず取引先、生活者と共に、人々の幸せや環境・社会と調和した脱炭素型で持続可能な経済モデル、ライフスタイルへと変革することで、世界の人々に心の豊かさを広げ、社会をより良くすることに貢献してまいります。

1.5℃の世界観(2030年) 4℃の世界観(2050年)
気候変動に関する積極的な国内政策・法規制が進み、カーボンプライシングの導入、温室効果ガス排出量開示の義務化、再エネ設備投資への優遇等が行われ、企業や投資家の温室効果ガス排出量削減や再生可能エネルギーの導入、省エネへのニーズが高まると想定。同時に、脱炭素DX支援・CSV経営・CSV型プロモーション実行支援等の拡大が見込まれる世界観を想定。 気候変動に関する国内政策・法規制が進まず、不可逆的な環境変化が頻発。物理的なサプライチェーンへの影響が顕著に現れると想定。脱炭素DX支援・CSV経営・CSVプロモーション実行支援に関しては底堅いニーズがあり続けると想定。

リスク(政策・法規制リスク、評判、市場の変化、物理リスク)

区分 想定される事象 当社へのリスク 対策
現在の規制 (1)カーボンプライシングメカニズム
(2)排出量報告義務の強化
(3)既存の製品およびサービスに対する命令および規制
温室効果ガス排出量0を既に達成しているため、現在の規制に関する当社への影響は小さい旨の判断を行いました。
新たな規制 (1)カーボンプライシングメカニズム
(2)排出量報告義務の強化
(3)既存の製品およびサービスに対する命令および規制
(4)日本の温室効果ガス削減目標の引き上げ
(5)省エネ政策の強化
温室効果ガス排出量0を既に達成しているため、(1)~(4)に関する当社への影響は小さい旨の判断を行いました。
(5)により省エネを実施するためのコストが発生し、当社へ小規模のリスクがあると考えられます。

(5)将来的な省エネ規制を見据えた省エネ対応を推進。
法的リスク 訴訟リスク 当社の事業はネットビジネス支援事業であり、気候変動に影響を及ぼす製品等の製造・販売を行っておりません。また、デジタルおよびインターネットビジネス業は気候変動への影響は比較的小さいと考えられ、サステナビリティ推進委員会において当社の事業運営に伴う訴訟リスクは小さいため、関連しない旨の判断を行いました。
技術リスク (1)既存の製品・サービスを排出量の少ないものに置換
(2)新技術への投資失敗
(3)低排出技術への移行
当社の事業はネットビジネス支援事業であり、気候変動に影響を及ぼす製品等の製造・販売を行っていないため、低炭素でエネルギー効率の高い事業への移行を支援する技術に関連するリスクへの影響はない旨の判断を行いました。
市場リスク (1)電力調達の不確実性
(2)電力の環境価値証書の価格高騰
(3)非財務情報開示の拡大
(1)電力市場の価格リスク(再エネ高騰、販売量の不安定)
(2)証書の調達コストが上がり、当社の財務計画に中程度のリスクがあると考えられます。
(3)非財務情報開示の拡大により、投資家等市場参加者からの対応要求が拡大し、当社の財務・経営計画に変更が生じるリスクが考えられるものの、当社は定款第2条およびMembers Storyにおいて気候変動・人口減少等の社会課題への取り組みを明記し取り組みを進めており、当社の事業運営に伴う評判リスクは小さいため、関連しない旨の判断を行いました。
(1)(2)省エネ施策を強化し、調達するクレジット量を削減させる。再エネを自家発電・自家消費する。
評判リスク (1)消費者の嗜好の移り変わり
(2)セクターの非難
(3)ステークホルダーからの懸念または否定的なステークホルダーからのフィードバック
当社の事業はネットビジネス支援事業であり、気候変動に影響を及ぼす製品等の製造・販売を行っておりません。また、デジタルおよびインターネットビジネス業は気候変動への影響が比較的小さいと考えられるため、サステナビリティ推進委員会において当社の事業運営に伴う評判リスクは小さいため、関連しない旨の判断を行いました。
緊急性の物理リスク (1)台風や洪水などの異常気象の重大性と頻度の上昇
(2)山火事の可能性と重大性の上昇
(1)当社の事業所のハザードマップの状況等から、長期間におよぶ事業所の浸水等のリスクは低いと考えられますが、豪雨、洪水により事務所・発電所や従業員が影響を受け業務遂行に支障をきたした場合、当社に中規模のリスクが考えられます。
また、自然災害時の従業員の安否確認や事業所等の災害対応、また保険料の上昇により当社へコスト増加の影響が考えられます。
(2)当社のオフィスは山間部から離れているため、関連するリスクへの影響はない旨の判断を行いました。
(1)災害発生時の対応計画策定、浸水対策
慢性の物理リスク (1)降水パターンの変化や気象パターンの極端な変動
(2)平均気温上昇
(3)海面上昇
(1)(2)(3)慢性的な物理リスクの一例として、酷暑日の増加による電力需要のひっ迫に伴う空調費用の上昇リスクが考えられます。
海面上昇により沿岸部の事業所、発電所、従業員の住宅が影響を受け業務遂行に支障をきたし、中規模のリスクが考えられます。
(1)(2)(3)データセンターの利用
自社発電等の各種施策の利用検討により安定供給を確保、省エネ施策の実施。
災害発生時の対応計画策定、浸水対策
災害発生時のBCP対応計画策定
その他リスク (1)水資源・食料・エネルギー資源の競合、景気減退、地政学的な紛争拡大
(2)人々の健康被害の増加
(1)水資源・食料・エネルギー資源の競合等により地政学的な紛争が発生・拡大し、世界経済の景気減退により当社の財務計画に中~大程度のリスクがあると考えられます。
(2)平均気温の上昇により、社員の熱中症、マラリア等熱帯地方の感染症の拡大、就業環境の悪化、在宅勤務の長期化等、複合的な要因による精神疾患者の増加、労働意欲の低下といったリスクが考えられますが、健康経営の推進、拡大、社員への適切な就業環境の提供によりリスクは抑えられると考えられ、関連しない旨の判断を行いました。
  • 財務影響度 小:1,000万円以内 中:1億円以内 大:10億円以内 甚大:10億円超

機会

区分 想定される事象 機会
市場 サステナビリティ関連サービスのニーズ増加 企業にサステナビリティや社会課題の解決といった社会的価値の提供が求められることで、脱炭素DX支援、CSV経営、CSV型プロモーション実行支援のニーズが高まる可能性があります。
技術 再エネ・省エネ技術の普及 再エネの価格低下により自社の再エネ調達費用が削減でき、当社のコスト削減につながる可能性があります。
省エネ技術の価格低下により、自社の省エネ対策にかかるコストが低下し、当社のコスト削減につながる可能性があります。
評判 顧客の評判変化 顧客がサプライチェーン全体での温室効果ガス削減を求める場合、温室効果ガス排出量が0である当社と取引するインセンティブが働くと考えられます。
投資家の評判変化 投資家が気候変動のリスクを投資判断時に考慮する場合、温室効果ガス排出量が0である当社に投資するインセンティブが働くと考えられます。
物理的リスク(慢性) 平均気温の上昇 冬季の電力使用量が減少し、当社のコスト削減につながる可能性があります。

3.リスク分析、管理

環境マネジメント体制構築のため、環境に関する事柄全般を検討する横断的な組織としてサステナビリティ推進委員会を設置し、全社的な環境保全活動を推進しています。

サステナビリティに関する事項を所管するグループ経営企画室は、社内の関係部署の協力を仰ぎながらリスクと機会の特定を主導し、状況の把握を行います。さらに、適切な対応を検討して少なくとも年に1回以上サステナビリティ推進委員会に報告・提言します。
また、特定した気候変動の影響について、必要に応じてリスク・コンプライアンス委員会へ報告・提言を行うことで、気候変動の影響を全社リスクに統合する役割を担っています。

サステナビリティ推進委員会は、グループ経営企画室から報告・提言された気候変動の影響と対応について選定と審議を行い、年に1回以上担当役員による評価・分析を行っています。
リスクの評価については、その他のサステナビリティ推進委員会で審議・調整した気候変動に関する事項とともに少なくとも年1回以上取締役会に報告されます。

リスク・コンプライアンス委員会は四半期に1回以上開催され、気候変動課題を含む環境課題リスクをリスク管理及びコンプライアンスに関する重点課題の策定及び目標達成に向けた課題について、全社リスクの把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告いたします。
取締役会は、サステナビリティ委員会とリスク・コンプライアンス委員会から気候変動に関するリスク管理の状況と対応について報告を受け、監督を行います。

リスク管理プロセス 担当する会議体
リスク評価の範囲 当社グループ
リスクの識別・評価・絞り込み グループ経営会議
リスク・コンプライアンス委員会(経営リスク)
サステナビリティ推進委員会(気候変動課題を含む環境課題リスク)
リスク対応 各カンパニー
モニタリング・報告 グループ経営会議
リスク・コンプライアンス委員会(経営リスク)
サステナビリティ推進委員会(気候変動課題を含む環境課題リスク)

リスク管理プロセス

4.指標と目標

メンバーズは1.5度未満のシナリオの実現に向けた戦略に基づき、2022年度目標とした再生可能エネルギー100%を2020年に前倒しで達成いたしました。自社で使用する電力相当分の再生可能エネルギー発電を安定的に行うことを目指して、発電事業を行う子会社「メンバーズエナジー」を設立し、非FIT太陽光発電所を建設して、2021年6月から発電を開始しました。当社はオフィスビルにテナントとして入居しており、メンバーズエナジーが発電した電気を直接使用することはできないため、再生可能エネルギー由来のJクレジットを購入し、当社では、2020年度のScope1,2の温室効果ガス排出量を0としております。

目標年度 再生可能エネルギー比率
2022年 100%(2020年達成済)
2019年(2020年3月期) 2020年(2021年3月期) 2021年(2022年3月期) 2022年(2023年3月期)
Scope1,2(ロケーション基準※) 320t-CO2 198t-CO2 187t-CO2 240t-CO2
Scope1,2(マーケット基準※) 311t-CO2 0t-CO2 0t-CO2 0t-CO2

今後はScope3としてサプライチェーンでの企業活動に伴う温室効果ガス排出量を算出・開示し、早急に算出目標を達成することで、更なる活動の推進に取り組んでまいります。

(※)ロケーション基準、マーケット基準について

(ロケーション基準)

  • 地域、国などの区域内における発電に伴う平均の排出係数に基づき電力等二次エネルギーからの排出を算定する手法です。
  • 省エネ努力は排出削減として反映されますが、再エネ等の炭素排出量の低い電力の選択では反映されません。
  • 需要家が証書等を購入していてもその効果を反映することはできません。

(マーケット基準)

  • 企業が契約に基づいて購入した電力の排出係数によって電力等二次エネルギーからの排出量を算定する手法です。
  • 再エネ等の企業の炭素排出量の低い電力の選択が、排出削減に反映されます。
  • 需要家が証書等を購入している場合は、その効果も反映することができます。
環境マネジメント