2021年3月11日

【東日本大震災から10年】代表取締役社長 剣持メッセージ

東日本大震災から10年を迎えました。犠牲になられた多くの方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまに謹んでお悔みを申し上げます。また、いまだ復興の最中におられる方々には心よりお見舞い申し上げます。

東日本大震災はメンバーズに3つの大きな転機をもたらしました。

1つ目は、私たちメンバーズが社会のインフラを支えているということを改めて認識したことです。メンバーズでは、銀行やクレジットカード、通信会社など災害時においても止めてはならないインフラ企業と数多く取り引きしています。そのような企業のWebサイトやデジタルサービスも災害時であっても止めてはならない社会のインフラの1つと考えています。
東日本大震災の際には、自宅待機や休業を行った企業も多くある中、私たちはお客さま企業を通して社会のインフラを支えていると考え、通勤困難な状況の中でも多くの社員が出社して、総出でお客さま企業の情報発信を支えました。いま振り返ると、その時の社会インフラを支えるという私たちの考えと行動がお客さま企業から高く支持され、「運用に強いメンバーズ」、「信頼できるメンバーズ」という評判に繋がり今のメンバーズがあると考えています。

2つ目は、2011年7月に東北復興支援を目的に開設した仙台の制作拠点がメンバーズの地方拠点展開の道をひらいたことです。多少のリスクがあっても本業で復興への貢献ができないかと模索していた中、被災地域で被災者の方を採用し、雇用を生み出すことで継続的な地域経済への貢献ができるはずだというアイデアが生まれました。テレビ会議システムを使えば、仙台に住みながらリモートで東京の仕事をしてもらえるかもしれないと考えたのです。今では当たり前の姿ですが、当時のメンバーズは東京にしかオフィスがない社員数200名程度の会社であり、リモートワークという発想もなかった時代です。2011年7月、仙台市内の狭いレンタルオフィスで、この取り組みに賛同してくれた3名のWebクリエイターとスタートしました。彼らとは「リモート業務でも東京勤務者と同等の生産性が出すことができたら10名まで増員すること」を約束しました。「10名になれば、給与の総額は数年で1億円を越え、その多くが住居費や飲食費など被災地域である仙台周辺で消費され、経済の活性化と被災地の復興に貢献できるはずです。だから、自分たちのためだけではなく、復興支援に貢献するために一生懸命働いてください」と伝えました。今だからお話できることですが、本人たちには大変申し訳ない話ながら、その当時はリモートでまともに仕事ができるかどうか半信半疑でした。しかしその結果は想像以上でした。この3名はその年のMVPを受賞するほど大活躍してくれたのです。あまりにその成果が大きかったため、当初約束していた10名の増員ではなく、100名収容できるオフィスを開設し、今ではメンバーズの主要な地方拠点である「ウェブガーデン仙台」として150名にまで拡大しています。
そしてその後、北九州、神戸などの地方拠点展開、日本全国の地方都市に拠点展開するシステム開発子会社(現:メンバーズエッジカンパニー)の設立、コロナ禍でのスムーズな全社員テレワーク実施へと繋がったと考えています。
震災復興に本業を通して貢献できないかと考え行動したことが、メンバーズの未来を大きく変えました。

3つ目は、メンバーズ自身でCSV経営(※)を実践できたことです。2008年前後、メンバーズは倒産寸前の危機にありました。背水の陣で再起をかけて決めたのが「社会への貢献」「社員の幸せ」「会社の発展」を同時に実現する経営指針です。本業で「社会貢献」すると決めたものの、具体的に何をすれば良いか方向が定まりませんでした。そのような中、雇用創出で震災復興に貢献する仙台拠点の取り組みが大成功しました。仙台をはじめとした地方拠点のおかげで全国から多くの優秀な人材がメンバーズに参画してくれるようになり、外部パートナーにも頼っていた東京のみの頃に比べて内製化率、利益率が高まり、結果的にメンバーズは東証一部に上場することができました。
しかし、東証一部に上場するために、仙台拠点をスタートした訳ではありません。メンバーズは仙台拠点を通して本業で社会に貢献する経営手法であるCSVを自ら実践し、そのパワフルさを実感したのです。これらを経て、すべての企業がCSV経営を行えば心豊かな社会を作ることができるという現在のミッションに繋がっていったのです。

メンバーズグループは東日本大震災をきっかけにいただいた3つの転機を活かし、そして恩返しするためにも、これまで以上に地方での雇用を創出し、東北や我が国の人口減少問題に貢献してまいります。そして、仙台拠点を通したCSV経営の経験をもとにCSV経営を実践する会社を増やし脱炭素社会の創造に貢献していくことを誓います。

2021年3月11日
株式会社メンバーズ
代表取締役社長 剣持忠

最後に、仙台サテライトオフィス開設メンバーとその後の仙台拠点「ウェブガーデン仙台」の拡大を担った役員からのメッセージもご紹介します。

仙台サテライトオフィス開設メンバー

木村雄己(仙台サテライトオフィス開設メンバー)

仙台にサテライトオフィスを開設したのが2011年7月。3人からのスタートでした。「成果を残したら10名まで大きくするから東北のために頑張れ」と剣持さんが言っていたのを今でも鮮明に覚えております。それまで支援を受ける側という意識が少なからずありましたが、その言葉に、自身の力で東北復興のために頑張ろうとスイッチが入った感覚でした。10年経ち仙台のオフィスは今150名を超えました。CSV経営の原型である「超会社」というコンセプトに共感した多くの仲間、その一人ひとりの頑張りこそが、仙台拠点の拡大ひいてはメンバーズの躍進につながっていると肌で感じております。そして今まさに脱炭素社会の実現というチャレンジングな目標に向けて新たに歩みを始めたばかりです。ミッション達成に向けて、CSV経営に共感する多くの仲間と共に、これからの10年も頑張っていきましょう!最後に、仙台の開設当時、その取り組みに強く共感しサポートいただいた方々には改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。

川島一憲(執行役員/ウェブガーデン仙台拡大の立役者)

未曾有の災害から立ち直ろうとする被災地を支援するべく仙台サテライトオフィスを開設したのは震災の年の夏。振り返ればこの年が、メンバーズがCSV経営に本格的に取り組むきっかけとなり、現在の事業の在り方を方向付ける原点となりました。例えばこの一年、世界はコロナ禍に見舞われ、新しい働き方が求められましたが、仙台サテライトオフィス開設の際に業務遠隔化にチャレンジした経験を、今日のテレワーク活用につなげることができています。また毎年100名を超える新卒を受け入れ、デジタルクリエイター1万人を目指すことができているのも、仙台に続いて開設された地方オフィスを採用拠点とし、全国の学校とネットワークを広げられたことが大きな要因となっています。事業の拡大とともに様々な制度も整備され、メンバーズエッジなどの新規事業も、仙台をはじめとする地方拠点展開から生み出されました。そして今、CSV経営の考え方が顧客企業にも受け入れられ、当社がDX支援や脱炭素推進を提案できるポジションを確立することにつながっています。10年前のオフィス開設時点で、これらの展開がすべて予測できていた訳ではありませんが、よりよい社会を目指す理念と、変革へのチャレンジ精神があったからこそ、多くのことが実現できたとのだと思います。そして、それこそが、震災をきっかけに得ることができた当社の大きな財産であると考えています。

  • CSV(Creating Shared Value=共通価値の創造):企業の競争戦略論の世界的第一人者として知られる米ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が米ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2011年1月・2月合併号(日本語版はダイヤモンド社「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」2011年6月号)に寄稿した論文で提唱した概念。CSVとは、「社会的課題の解決と企業の利益、競争力向上を同時に実現させ、社会と企業の両方に価値を生み出す取り組み」を意味します。