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【図解】D2C企業のUI/UXを徹底分析―ファッション・コスメ・食品10社

D2C企業のUI/UXを徹底分析―ファッション・コスメ・食品10社

近年、テクノロジーの進化と消費行動の変化に伴い、企業が直接顧客とつながるD2C(Direct to Consumer)モデルが急速に拡大しています。特にオンラインにおいては、Webサイトやアプリにおける顧客体験(UX)の質が、ブランドイメージの向上、顧客ロイヤルティの強化、そして最終的な売上増加に大きく影響します。

そこで、10社のD2Cブランドを対象に、UX戦略、特に商品詳細ページ、購入導線、安心感の訴求に焦点を当て、分析しました。D2Cビジネスにおける顧客体験向上のヒントを探ります。

目次

D2CブランドのUX分析

フードテック企業:ポップアップでスムーズな購入体験を提供

このフードテック企業のサイトは、商品の栄養素をグラフを用いて他社と比較し、健康志向のユーザーに対して訴求するUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

フードテック企業_ページの構成

  • カードボタンの位置を固定表示にすることで、ユーザーが迷わず購入手続きへ進めるように設計。特に、スマートフォンなど画面の小さいデバイスでは、常に購入ボタンを表示しておくことは、コンバージョン率向上に貢献する。
  • カート投入後、すぐに画面下部にポップアップを表示し、カートへ遷移させることで、購入へのハードルを下げる。ユーザーをスムーズに購入手続きへ誘導する設計は、他のECサイトでも応用可能。

購入までの導線設計

フードテック企業_購入までの導線設計

  • 初回割引や継続特典をアピールすることで、定期購入を効果的に促し、LTV(顧客生涯価値)向上に貢献する設計。
  • カートボタンの固定表示など、購入への導線が明確かつ分かりやすく、ユーザーが迷わず購入手続きに進める。

安心感・信頼感の訴求要素

フードテック企業_安心感・信頼感の訴求要素

  • 豊富な購入者レビューを掲載することで、商品の客観的な評価を提供し、新規ユーザーの購入を後押し。

食材宅配サービス:コース内容と特典を分かりやすく提示する工夫

この食材宅配サービスのサイトは、豊富な商品とレシピで日々の食卓をサポートする工夫が凝らされており、献立提案や定期購入機能がスムーズに利用できるUX設計が特徴です。

ページの構成

食材宅配サービス_ ページの構成

  • キャンペーンの詳細が画像や表を用いて視覚的に分かりやすく説明されており、ユーザーは特典内容を容易に理解できる。

購入までの導線設計

食材宅配サービス_購入までの導線設計

  • トップページのハンバーガーメニューからキャンペーンやコース選択、商品ラインナップへ容易に遷移できる設計。商品ラインナップはカテゴリ分けされており、目的の商品を探しやすい。

安心感・信頼感の訴求要素

食材宅配サービス_安心感・信頼感の訴求要素

  • 入会時のよくある質問や問い合わせ先(電話・フォーム)を明記することで、ユーザーの疑問や不安に対応する体制を示している。
  • 商品ラインナップ毎のレビューは、実際に利用したユーザーの声を知る情報源となり、安心感につながる。

フードデリバリーサービス:数量不足を防ぐ「あと〇食」のアラート表示

このフードデリバリーのサイトは、目的別検索や詳細な商品情報により、ユーザーが求める商品に簡単にたどり着けるUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

フードデリバリーサービス_ページの構成

  • ページ下部に固定されたCTAボタンが、ユーザーの行動を促す。初回割引アイコンがアニメーションで動く点も目を引く。
  • トップカスタマーのレビューと全レビューへの導線を設置することで、利用者の評価を容易に確認できる。

購入までの導線設計

フードデリバリーサービス_購入までの導線設計

  • ハンバーガーメニューやキービジュアル直下からメニュー選択へ進める導線が確保されている。
  • 注文総数を最初に決め、必要な個数に満たない場合はアラートが表示される設計は、ユーザーに分かりやすい指示を与える。

安心感・信頼感の訴求要素

フードデリバリーサービス_安心感・信頼感の訴求要素

  • 糖質・辛さの表記や栄養成分表示、アレルギー情報など、商品に関する詳細な情報を提供することで、ユーザーの不安を軽減。
  • サービスに関するよくある質問や利用ガイド、送料、初めて利用する方向けの案内などを掲載し、疑問点を解消できる。

コスメブランド:迷わず相談できる混雑カレンダー付き電話窓口

このコスメブランドは、ブランドにあった洗練されたデザインが魅力的で、成分の説明やレビューが充実しており、購入後のイメージを具体化しやすいUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

コスメブランド_ページの構成

  • 1回スクロールしたあたりにCTAボタンが設置されている。定期便と通常購入の2種類が並べられている。
  • 各ショップでの受賞歴を記載することで、商品の信頼性をアピール。

購入までの導線設計

コスメブランド_購入までの導線設計

  • トップページに主要な商品が並べられ、「view all」で商品ページへ遷移できる導線となっている。
  • 商品一覧ページでは人気商品や新商品などタグをつけ、該当商品を見つけやすい設計。

安心感・信頼感の訴求要素

コスメブランド_ 安心感・信頼感の訴求要素

  • 混雑状況を確認できるカレンダー付きの電話問い合わせ窓口や24時間対応のチャット窓口を提供することで、ユーザーが安心して問い合わせできる環境を整えている。

オーガニックコスメ:最短出荷までのタイムリミットを表示

このオーガニックコスメのサイトは、温かみのある色調と自然な素材感を活かしたデザインでブランドの世界観を演出。ユーザーが「いいね!」やシェアをしたくなるようなコンテンツで、ブランドとのインタラクションを増やすUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

オーガニックコスメ_ページの構成

  • 商品の画像直下に「通常注文」「定期便」を選択できるラジオボタン付きのCTAボタンが設置されている。レビュー直下にも同様のボタンが設置。
  • 商品のポイントを画像やイラストを用いて分かりやすく紹介し、成分や効果への理解を促進。

購入までの導線設計

オーガニックコスメ_購入までの導線設計

  • キービジュアル直下やハンバーガーメニューにカテゴリやシリーズにて分類された商品一覧への導線があり、目的の商品を見つけやすい設計。
  • カートに入れるとカートページへ遷移し、最短出荷までのタイムリミットや送料無料までの金額などが表示され、購買意欲を高める。

安心感・信頼感の訴求要素

オーガニックコスメ_安心感・信頼感の訴求要素

  • よくある質問やチャット・メール窓口、全成分表示など、基本的な情報提供に加え、不使用成分の記載により、オーガニック志向のユーザーに安心感を与える。

スキンケアブランド:購入を後押しするレビュー絞り込み機能

このスキンケアブランドは、皮膚科学に基づいた丁寧な商品説明と、商品の比較機能やサンプル提供で、ユーザーの購買を後押しするUXが特徴です。

ページの構成

スキンケアブランド_ページの構成

  • 画面下部に固定CTAボタンを配置し、購入を促進。
  • イメージ画像付きの購入者レビューは、年代や肌タイプ、敏感肌レベルなどで絞り込みが可能で、詳細な情報を参考にできる。

購入までの導線設計

スキンケアブランド_購入までの導線設計

  • 商品カテゴリや肌タイプから商品詳細ページへスムーズに遷移可能。
  • カートページでは特典やプロモーションコードの入力欄、定期便への変更オプションなどが分かりやすく表示。

安心感・信頼感の訴求要素

スキンケアブランド_安心感・信頼感の訴求要素

  • お届けからの返品交換が可能な期間を明示し、購入へのハードルを下げている。
  • 商品のカラーごとの使用感比較やbefore/afterの写真など、視覚的な情報提供が充実。

スキンケアブランド:定期便への安心感を演出するCTAボタン

このスキンケア商品のサイトは、アイコンやイラストを活用した分かりやすい情報伝達と、お得なキャンペーン情報を効果的に提示し、直感的な理解を促すUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

スキンケアブランド2_ページの構成

  • 1ページ内に4箇所CTAボタンを設置し、定期便を訴求。「いつでも解約OK!」にアニメーションがついており、目を引くデザイン。
  • SNSのレビューを掲載し、商品の認知度と信頼性を高めている。

購入までの導線設計

スキンケアブランド2_購入までの導線設計

  • キービジュアル下の「VIEW ALL」やハンバーガーメニューから商品一覧へ遷移可能。

安心感・信頼感の訴求要素

スキンケアブランド2_安心感・信頼感の訴求要素

  • 定期便コースの案内やいつでも解約可能であることを明示することで、初めて利用するユーザーの不安を軽減。美容成分の表示やよくある質問なども提供。

ヘアケアブランド:一人ひとりに最適な商品が提案する無料診断

ヘアケアブランドのサイトは、質問形式でパーソナライズされた提案によって、自分に合った商品が見つかる体験を提供するUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

ヘアケアブランド_ページの構成

  • CTAボタンが商品画像と特典説明の下に設置されており、スクロールすると下部に固定される。通常購入と定期コースの2種類を設置。
  • 動画やSNSによる購入者レビューに加えて、ヘアケア商品のため、美容師からのコメントを記載するなど、多様な形式で提供することで、商品の信頼性を高めている。

購入までの導線設計

ヘアケアブランド_購入までの導線設計

  • キービジュアル下や画面上部のショップアイコンからアイテム一覧へ遷移可能。
  • 購入ボタンを押すと無料の診断が始まり、その結果に基づいて最適な商品が出力され、カートに追加されるという流れは、パーソナライズされた購買体験を提供している。

安心感・信頼感の訴求要素

ヘアケアブランド_安心感・信頼感の訴求要素

  • 商品の説明やレビューを動画で確認できるなど、視覚的な情報提供に力を入れている。

ファッションブランド:週間ランキングで人気アイテムをチェック

このオンラインストアは、1週間ごとのランキングや季節のトレンドカラーなど、豊富な商品を効果的にカテゴリわけし、購買を促進するUI/UX設計が特徴です。

ページの構成

ファッションブランド_ページの構成

  • 画面下部に固定されたCTAボタンに加え、お気に入りボタンや共有ボタンも同じ位置に固定。
  • サイズ詳細(寸法図)、素材、製造国、伸縮性、透け感、洗濯情報に関する情報など、商品に関する詳細な情報を提供。

購入までの導線設計

ファッションブランド_購入までの導線設計

  • トップページでは、ページ上部のタブやホーム画面から、新作、ブランド、ディレクターなど多様な切り口で商品一覧へ遷移できる。
  • カートに入れると関連商品のレコメンドが表示され、カートへの遷移もスムーズ。

安心感・信頼感の訴求要素

ファッションブランド_安心感・信頼感の訴求要素

  • ディレクターやモデルの情報を掲載したり、身長・体重・性別からおすすめサイズを提案する機能を提供したりすることで、ユーザーの不安を軽減し、購買をサポートしている。
  • 問い合わせ先(電話・チャットボット・SNS)を明記し、サポート体制が万全であることをアピール。

アパレルブランド:購買をサポートするスタッフレビュー

このアパレルブランドのサイトは、モデル着用画像や動画、詳細なサイズ情報を提供することで、購入後のミスマッチを防ぐUI/UXが特徴です。

ページの構成

アパレルブランド_ページの構成

  • 商品ページの下部におすすめ商品やランキング上位、過去に閲覧した商品を表示し、購買を促進。
  • モデルの身長と着用サイズ、原産国、素材、サイズ表など、購入に必要な情報を提供。

購入までの導線設計

アパレルブランド_購入までの導線設計

  • キービジュアル下や左上のメニューからカテゴリ別に商品一覧へ遷移。
  • 「カートに入れる」をクリック後、サイズとカラーを選択する形式で、在庫状況も確認できる。

安心感・信頼感の訴求要素

アパレルブランド_安心感・信頼感の訴求要素

  • さまざまな体型のスタッフの着用レビューを掲載することで、ユーザーは自身の体型に近いものを参考にできる。
  • 配送や返品・返送に関する詳細な情報やよくある質問を掲載し、安心して購入できる環境を提供。

D2CサイトのUI/UXの傾向・パターン

分析対象としたD2Cブランド10社のUI/UXを比較分析することで見えてきた傾向とパターンをまとめました。

D2Cブランド10社のUI/UXの共通点
比較観点 ポイント
商品詳細ページの画像 商品の魅力を多角的に伝えるために、複数の画像と動画を活用する。動画での商品の使用方法解説や画像の拡大機能は、細部まで確認したいユーザーにとって重要。
CTA CTAボタンは、ユーザーが迷わず購入に進めるよう、目立つ場所に分かりやすく配置する。固定表示や、カート投入後のポップアップによる遷移の促しは有効。ボタンの色や文言は、サイト全体のカラースキームやターゲット層に合わせて最適化する。
テキスト情報 商品の詳細情報は、購入の意思決定を大きく左右するため、正確かつ分かりやすく記載する。栄養成分、アレルギー情報、サイズスペックなどはプルダウンやタブを活用して情報を整理し、ユーザーが必要な情報にアクセスしやすくする工夫も有効。
UI/UXの特徴 サイト全体のカラースキームは、ブランドイメージに合わせて設計する。重要な情報は、太字やポイントカラーを活用して強調すると効果的。情報の整理には、プルダウンやタブを適切に利用することで、視認性を高める。
トップページからの導線設計 ユーザーが目的の商品にスムーズにたどり着けるよう、グローバルナビゲーションの配置や文言を最適化する。カテゴリ分けを適切におこない、検索機能を充実させることやキービジュアルからも直接商品ページや一覧ページへ誘導するのも有効。
安心感・信頼感の訴求要素 購入者レビューは、安心感と信頼感を醸成する上で非常に重要。レビューの件数だけでなく、並べ替えや絞り込み機能を提供することで、ユーザーは自分にとって有益な情報を効率的に見つけられる。受賞歴や専門家の推薦、FAQの充実、問い合わせ先の明記、返品・交換ポリシーの提示なども有効。

UI/UXの良し悪しが体験・売上に与える影響

今回のD2Cブランド10社のUI/UX分析を通じて、商品詳細ページの情報の充実度と見やすさ、スムーズな購入導線の設計、そして安心感・信頼感の醸成が、オンラインショッピング体験において欠かせないことが改めて確認できました。これらの要素が、顧客体験と売上にどのように影響を与えるのかを以下に考察します。

商品詳細ページのUX

多様な商品画像・動画の提供
商品の魅力を最大限に伝え、顧客が実際に商品を利用するイメージを持つ上で非常に有効です。食品を取り扱うブランドではパッケージの裏表や調理例、ファッションブランドでは多様なモデル着用写真や生地感の分かる拡大写真、コスメブランドではbefore/after比較など豊富な画像が提供されています。画像が不足している場合、顧客は商品の詳細を把握できず、購入をためらう可能性があります。

情報の整理方法
プルダウンメニューやタブを活用することで、多くの情報をコンパクトに表示し、ユーザーが必要な情報に容易にアクセスできるようになります。情報が煩雑に表示されていると、顧客は必要な情報を見つけるのに苦労し、ストレスを感じるでしょう。

購入までの導線設計

分かりやすいナビゲーションとシンプルな購入フロー
キービジュアル直下やヘッダーからの商品一覧への導線など、多くのサイトで分かりやすい導線が設計されています。目的の商品にたどり着くまでに複雑な操作が必要な場合、顧客は途中で購入を諦めてしまう可能性があります。

CTA(Call to Action)ボタンの設計
固定表示やカート投入後のスムーズな遷移は、ユーザーが次のアクションを迷わずおこなえるように促します。CTAボタンが見当たらなかったり、カートへの遷移が遅かったりすると、顧客は購入意欲を失ってしまう可能性があります。

安心感・信頼感の訴求

購入者レビューの存在と質
他の顧客の評価を知ることで、購入の不安を軽減し、信頼感を醸成します。多くのブランドでレビュー機能が実装されており、絞り込み機能や並べ替え機能も提供されています。レビューが全くなかったり、ネガティブなレビューばかりが目立ったりすると、顧客は購入を躊躇するでしょう。

信頼性を高める要素
受賞歴や専門家の推薦、FAQの充実、問い合わせ先の明示、返品・交換ポリシーの提示などは、顧客の不安を解消し、信頼感を高める上で重要な役割を果たします。これらの情報が不足していると、顧客は疑問や不安を解消できず、購入に至らない可能性があります。

「見たい」「知りたい」「買いたい」「安心したい」というユーザーの声に応える情報とスムーズな導線設計が、顧客満足度や信頼性を高め、最終的には売上につながります。逆に、これらの要素が不足したUI/UXは、顧客体験を損なう可能性があり、サイトからの離脱や購入の機会損失を招くでしょう。今回ご紹介した事例を参考に、ぜひ自社のECサイトの改善に取り組んでみてください。

執筆者紹介

土山 青華

2024年にメンバーズへ新卒入社。
全社横断マーケティング部門にて、自社サイトのコンテンツマーケティングチームでディレクターを務めています。
今後も読者の皆さまにとって分かりやすく、実践に役立つ情報発信を目指してまいります。

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