2023年10月1日に施行されたインボイス制度。
当社もその対応に向け、制度開始まで二転三転しながら自社プロダクトを導入しました。このプロジェクトは、遡ること2022年12月に始まり、制度開始の2023年10月に間に合うように進めていました。
当時、社内でもインボイス制度は話題になっていたものの、2022年末の時点では制度の内容がまだ曖昧な部分が多く、「そもそも何をすれば良いのか」といった質問が多数寄せられる状況でした。具体的な要件が定まらないなか、「とりあえず現時点で分かっている情報だけで調べてみよう」という手探りの状態からスタートしました。
そして案の定、当社で請求明細(請求品目)単位の税計算をおこなっていたところ、請求書単位での税計算が必須であることが判明し、システムとしては大規模な改修が必要となる事態に直面しました。
当時、自社プロダクトであるクラウド請求書Plusとグループ企業のサービスであるV-ONEクラウドを、業務フローに十分に組み込めていませんでした。クラウド請求書Plusは導入に至らず、V-ONEクラウドも一部では利用されていたものの、すべての入金消込業務をカバーできる状態ではなかったため、この2つの新規導入を進める方向になりました。
新規クラウドの導入を機に、データモデルを抜本的に変更し、Salesforceのアーキテクチャもすべて見直しました。そもそもシステム構成図(As-Is)自体がプロジェクト開始時にはなかったので、「やります」と宣言したものの、後になってその大変さに少々後悔した記憶もあります。
クラウド請求書PlusとV-ONEクラウドは、今回新たに導入しデータモデルにも組み込みましたが、この取り組みは成功しました。
では、具体的に何を実現できたのか、当社のプロダクトを紹介しながらご説明します。
まず、クラウド請求書Plusの導入により、請求書の送付業務は大幅に効率化されました。取引先マスターの同期だけでも大きなメリットでしたが、Salesforceのカスタムオブジェクトから請求書を作成し、送付履歴やステータスを連携できるため、未送付の請求書から順に送付していくプロセスを半自動的に構築できました。これにより、請求書送付にかかっていた時間を2営業日も短縮でき、ほぼノータイムでの送付が可能となりました。
次に、V-ONEクラウドの導入です。これまでSalesforce AppExchangeで画面処理をおこなっていた入金消込業務をすべてV-ONEクラウドに移行しました。V-ONEクラウドには学習機能が搭載されており、データを読み込むほど精度が向上します。以前は、目検チェックで銀行振込手数料の有無などを瞬時に判断できる担当者に頼らざるを得ない状況でしたが、その必要がなくなり、入金消込にかかる時間をほぼ半減できました。
その他、合算請求書の発行機能や別の仕組みも実装しましたが、その過程は決して容易ではありませんでした。プロジェクトのリリース日が9月であり、当初予定していた8月リリースは、データ移行に予想以上の時間を要したことで困難を極めました。特に、オペレーション事務を担当するメンバーと要求・要件での合意形成に難航し、多くの手戻りが発生したことは当時の反省点です。
クラウド導入におけるTips
上記のTipsは、すべて実践すべきだと思います。たとえ自社プロダクトの導入であっても、自社の業務オペレーション全体を理解した上で、ツールを適用することが重要です。ツールはあくまで業務効率化の手段であり、もっとも重要なのは業務そのものの把握と構築であると痛感しました。
クラウド請求書PlusとV-ONEクラウドを導入し業務を自動化した結果、2023年10月から2025年2月までの請求書発行枚数は1.6倍に増加しました。入金消込の件数も同様に1.6倍増加していますが、オペレーションを担当する事務員の人数はほぼ変わらず、むしろ減少傾向にあります。
つまり事業が拡大するなかで、人的リソースを大幅に削減しながらも、その成長に十分に対応できる体制を構築できたと言えます。繰り返しになりますが、この道のりは決して容易ではありませんでした。
今回の経験から得られた重要なポイントを一つに絞ることは難しいですが、すべての要素を噛み合わせることが不可欠だと感じています。プロジェクトメンバー間で共通認識を持ち、オペレーションを洗い出すことができれば、必ず道は拓けるはずです。
参考:Salesforce利活用促進・セカンドオピニオンサービス(コンシェルジュBX)