ワークショップの設計は、メンバーズが業務提携しているデンマークの未来デザイン会社Bespokeのメソッドである「Futures Design」を用いました。このメソッドは、デザイン思考と未来洞察を組み合わせたものです。特に今回の設計では、リサーチフェーズを重要視し、プロジェクトで取り上げる社会課題に関連しそうな「変化の兆し」(テクノロジーや価値観、ビジネスモデルの変化など)をリサーチして収集し、それらから何が読み取れるか洞察するワークを盛り込みました。
今回の参加者は初対面かつ異業種であったため、まずチームビルディングに寄与するワークなどを入れ、議論しやすい雰囲気づくりを心がけました。また、「発散」と「収束」を短時間で繰り返したり、言語だけでなく絵や写真などを用いて右脳的に表現するワークを行ったりしました。プロジェクトリーダーさまからは「そうしたプロフェッショナルなファシリテーションのおかげで、限られた時間内で良質なアイデアを創出することができたと思う」との感想をいただきました。
「ビジネスアイデアの創出」のためには、どのようなアイデアを出すことをゴールとするか、という「問い」が重要になります。今回のプロジェクト開始時に、プロジェクトリーダーさまから広く社会課題を起点としたテーマ設定のご意向をいただいていました。私たちは、気候変動は最大のグローバルリスクであり、未来のビジネスアイデアの創出にあたって不可欠の視点であるという認識から、気候変動問題をテーマの軸に据えることを提案しました。
「脱炭素・気候変動=エネルギーの話」というイメージを持つ方が多いため、当初は創造的なアイデアが出にくいのではないかと心配していたとのことでした。しかし、脱炭素や気候変動問題は食や土地利用、ジェンダーなど他の様々な領域と密接に関連するテーマであることをメンバーズからご説明したところ、社会的意義とビジネスの可能性を感じていただき、「気候変動問題解決に寄与するビジネスアイデア」というテーマ設定に至りました。
三菱グループには、150年を超える歴史の中で引き継がれてきた三綱領(さんこうりょう)という経営の根本理念がありますが、普段の業務の中でこうした理念を想起する機会はそれほどありません。
未来のビジネスを創造するにあたって「Start with WHY」(Simon Sinekが提唱したリーダーシップ論)は不可欠の視点であると考え、この三綱領をベースに、自社の存在意義や哲学を改めて問い直すワークを初日に行いました。自らの言葉で表現し、チームでベクトルを合わせたことでその後のプロセスにおいて立ち返る場所になっていました。
未来のビジネスアイデアを創出するにあたって、何も分からないところからいきなりアイデアを考え始めるのではなく、今現在の社会で起きている出来事を「未来への変化のシグナル」と捉え、リサーチを行います。今回のテーマ「脱炭素・気候変動」に関しても多方面からリサーチを行いました。
気候変動問題を環境問題や自然科学の側面でのみ捉えるのではなく、人権や地域社会、経済、人々の暮らし、また、国際的な安全保障などの側面からもリサーチすることを提案し、様々な角度からテーマを洞察しました。
今回のプロジェクトにあたっては、以下を重視してアイデア創出を行いました。
「Start with WHY」と「社会課題リサーチ」の手法は非常に有意義だったと感じています。またワークショップのファシリテーションでは、アイデアを引き出す雰囲気づくりや時間の使い方などのノウハウが大変参考になり、普段の業務にも持ち帰って実践しています。経験豊富なファシリテーターだからこそ、数か月という短いスパンでリサーチからビジネスアイデアのアウトプットまで至ることができたと感じています。
本プロジェクトは1年間のプロジェクトであり、2022年11月現在はプロトタイプの制作途上ではありますが、まずはプロトタイプの制作をやり抜きたいと考えています。実際のビジネス化は会社横断では課題も多いですが、合同プロジェクトがハブ的機能を果たし、各社のアイデア創出を後押しできればと思っています。
(最終更新日:2022年12月)