SBI新生銀行さま

Salesforceの活用支援

顧客の消費行動が多様化している現代において、顧客データの活用の重要性は日々高まっています。そんな中、営業支援や顧客管理のために、SalesforceをはじめとしたSFA・CRMツールの導入や活用をご検討の企業さまも多いのではないでしょうか?
今回は、Salesforceを導入し、全社としてデータの活用の推進を行っているSBI新生銀行の松永美生氏をお招きし、
・ツール導入に至った経緯
・収集したデータをビジネスに活かす秘訣
・実際に起きてしまった失敗談とその解決策
・パートナー企業との付き合い方
など、8年の実務経験から得た知見をインタビュー形式でお話を伺いました。

インタビュー 右から
SBI新生銀行 グループ個人営業企画部
リテールIT開発室
松永 美生氏

株式会社メンバーズ
藤井 多鶴子

※この記事は「SBI新生銀行のDXにおけるSalesforce活用」と題した動画セミナーの書き起こし、一部改変したものになります。動画を視聴されたい方は、こちらからお申し込みください。https://marke.members.co.jp/membersseminar76_sbidx.html

Salesforce導入の背景

松永:2015年にクラウドCRMを導入しようと決定した際に、まずビジネス上の課題について棚卸しをおこない、新しいお客様を拡大していくのが非常に難しいというのが課題として挙げられました。長引く金利低下や競争激化による手数料低下、若者の銀行離れ、そして平日銀行の支店にいらっしゃるお客様が物理的にも少なくなっているビジネス環境の中で、何もせずに新しいお客様に銀行に来ていただくというのはもう難しいだろうと。

我々がとるべき戦略としては、今いるお客様、今すでにお口座をお持ちのお客様とのリレーションをもっともっと深めていくこと。そのお客様とのお付き合いの中で、いわゆるLTVを上げていこうという話になりました。

オンラインチャネルの活用

松永:お客様とのリレーションを深めるために、自分たちが今何をすればいいのか。
銀行の店舗に来られる方は限られています。支店のスタッフが直接会話できる人をこれ以上増やしていくのは、お客様側から見ても負担が大きいことなので難しいと感じました。

では、なかなか活用できていないオンラインチャネルでのコミュニケーションをもっと増やしていこうじゃないかと。
オンラインとオフラインのチャネルをもっと活用して、お客様とのコンタクトを増やしていこう、コミュニケーションを増やしていこうという話になったんです。

なおかつ私ども特有の部分としては、人が介在する価値を大切にしております。オンライン化するからと言って何でも自動化してデジタルに任せるということはしておりません。支店のスタッフがオンラインというチャネルを扱いますが、そこに人が介入することでお客様とつながっていきたいと考えたんです。それにより我々の付加価値が出せるのではないか、というところに希望をかけました。そういった理由で、CRMを構築していく際には様々なチャネルを使ってお客様とつながっていくことを目指しました。

ただ、人の価値を大事にしつつも、全てを人が対応していたら効率が悪いだけになってしまいます。人がやることと、デジタルでやること、そういったものをうまく融合させて効率よくしていきたいと考えました。人間がやるかどうかという意味と、チャネルがデジタルなのか、リアルなのか、その両方の意味で融合させていくというのが大きな方針です。
Salesforceを導入する目的は、オムニチャネル化していくということから始まっています。

Salesforce導入の利点

松永:Salesforceにさまざまなチャネルのデータを入れたり、お客様とスタッフのUIを作ったりと、全部揃うのに3年くらいかかりました。
最初は支店やコールセンターで人が担当している業務のフローをつくるところから始め、それらが一通りそろった3年目あたりから、デジタルチャネルにとりかかりました。デジタルマーケティングのツールを入れたり、アプリを作ってお客様とやりとりできるようにしたり、ビデオチャットを入れたり…みたいなことを3年、4年ぐらいかけてやっていったんです。導入してみてよかったことが多かったんですけれども、それが一番早く表れたのが、社員が見るSalesforceの画面上に、お客様のオンライン上の行動履歴を流しはじめたときです。

Salesforce導入前のCRMには、オンラインの情報は一切ありませんでした。単にお客様がいつ、どこの支店に来ました、コールセンターに電話して、どういうものを予約していただきました、といったリアルなお客様情報しかなかったんです。

Salesforceとほかのツールから取れる行動データが見られるようになったことで、今日来るお客様が昨日何を見ていたのか、何を見てコールセンターにお問い合わせされているのか、そういったことをスタッフが見ることができるようになりました。そうすると、やはり勘がいい方がそれを活用して営業トークをしたり、お客様に連絡したり、そういう風に使ってくれるようになりました。思った以上によかったのは、勉強会を重ねて現場スタッフが知識を得るにつれて、要望やアイディアが上がってくるようになったことです。

「お客様がこういう行動履歴をとられていたら、きっとこのような要望や考えをお持ちです」といった事例を共有する勉強会などを現場向けに開催していたのですが、Salesforceの利用が促進されてスタッフが積極的にお客様のオンラインデータ、オンライン行動を見るようになってくると、今度は支店やコールセンターの皆さんからがアイディアを出してくれるようになりました。

データをビジネスに活かす秘訣

松永:これはマネジメントのおかげではなく、データ活用は1日にしてならず、という話です。

Salesforceを入れる前、もっと前からデータ活用のやり方を、ビジネスの中で10年くらい試行錯誤してきました。Accessで何とか処理できる量のデータを使って本部でいろいろな分析をしたり、その本部で作った営業リストを今度はExcelで支店に還元して、それをマクロで配布をして、結果をマクロでまた吸い上げて…みたいなことはやっていたんです。

ただ、とにかくデータ量が少なくて。IT部門からデータをもらえる頻度も少なくて、遅い。月次や3か月ごとにデータをもらっても遅いし分析が大変で、データを使いたいんだけどPDCAが回せないという悩みがあったんです。

そういったところからはじめて、今度は少しでもデータを多くしたいとか、早くしたいということで、2008〜2009年ぐらいに、オンプレミスのSASサーバーを会社が導入してくれました。それによって、容量や処理スピードが大幅に改善されました。システムからも、どんなに遅くても月次、できれば日次で入るようなお客様データも提供される形になったので、だいぶ扱えるデータが増えました。SASが分析できる社員を雇って、専門的な解析も社内でするようにしました。外部に委託するのではなくて、アナリストできる人たちを社員にしてその人たちがやっていくようにしたんです。そういった流れで、データの活用としてはもう一段階アップしていましたね。

人数構成、活用の方針について

松永:全体でいうと今Salesforceのアカウントは1,500ユーザーぐらいです。我々がリテールと言っている個人のお客様に対応している部門の人は全員持っています。コールセンターや営業スタッフ、支店のフロントスタッフと呼んでいるお客様対応をするところ合計1,000ぐらいで、本部の人間も全員持っていますし、コンプライアンスや監査など管理部門の人たちも必要な時につけています。

Salesforceは、全員が同じデータが見られて同じ機能が使えるというところに価値があるので、機能の差はつけずに全員ほぼ同じ権限にしています。
システム部門とビジネス部門で一緒になって開発・運用するという形で、ビジネス部門が5名、システム部門でSalesforceをメインに担当している者が2〜3名、という感じでしょうか。
それぞれ各チームの下にエンジニアさん、パートナーさんで入っていただいていて、それがシステム側と我々ビジネス側のパートナーさん両方合わせて約10名となっています。SalesforceのCRM中心のところはそういった形で運用しています。

もうひとつはマーケティングやBIなど、Salesforceと連携して使う製品ですね。これはビジネス側で開発を担当していて、各製品につき1名、私の5名のチームのメンバーがそれぞれ対応していて、そこに製品がわかるエンジニアさんを3名ずつぐらいつけているような感じです。

私がチームメンバーにいつも言っているのは、自分がわからないことをエンジニアに指示してはいけない、ということ。もちろんコーディングをしたり、対応の項目の設定をしたり、手を動かすことはエンジニアの方にお願いします。ですが、それがSalesforceや各製品のどの機能を使っていて、それがどのくらい工数がかかることで、なおかつ、実現したい業務要件に対してその機能を使うのがベストなのかということは、自身がわかっていないのならやらないように、と言っています。

なので、基本的には弊社社員がディレクションをし、機能も決めるし、要件定義もディレクションも、チェックもします。それ以外の部分はもちろんエンジニアさんにお願いするし、機能を決めたりするときにエンジニアさんにいろいろ質問して教えてもらうのはもちろんいいですよと言っています。エンジニアさんに質問してOJTしてもらうというのが、結局一番早くスキルが伸びるので、それは大いにやりなさいと。だけど自分がわかっていないことを丸投げでやってもらったり、指示したり、そもそも業務要件に対して機能を考えてもらったりだとか言うことは禁止ですね。

これまでの失敗談と解決方法

松永:Salesforceを導入して初期のころに大きな失敗をしたんです。
支店の営業向けの機能を営業さんのためにと思って、つくってローンチしたんですね。4店ぐらいの方をパイロットにして始めたのですが、開始2週間目ぐらいから、もう総スカン、いわゆる炎上状態になって…。そこから、言われたことを直してやっていたんですけれども、炎上しすぎて、上からも「いっぺんやめて作り直したら?」と言われました。2〜3か月、専任でエンジニアさんやコンサルを入れて作り直して、もう一回すいませんでした、って言ってやってもらった、みたいなことがありました。

そうなってしまった理由ですが、私も昔営業をしていたとはいえ、営業現場を離れて長かったんですね。それをただSalesforceのいろんな機能を見て、「すごい、いいねいいね!」っていうその世界観にはまりすぎてしまって。

要は「これが理想なんです!」というものを作ってしまったんですよね。そうすると営業さんは、そもそも使いにくいと。営業さんもコールセンターもそうですけど、まず画面が変わるだけで彼らはものすごいストレスじゃないですか。同じものがあったとしても画面が違ったらものすごいストレス。なおかつ今まであったものがない。本部が全然違うものを使えと言ってきている。なおかつその使えと言ってきているものが営業の気持ちに全く寄り添っていない。そんな形で30分、40分で大炎上したんですよ。

やっぱり彼らが現場で大切にしているものが何なのかっていう本質を、ちゃんとわかってすり合わせないといけません。「これが大切なのはわかる、だけど変えなきゃいけないところは変えなきゃいけないから、どうしようか?」というように、現場と寄り添いながらやっていかなきゃいけない。それはわかっていたつもりだったのですが、実際にはわかっていなかったから大炎上したんですよね。以来、建前ではなく本心から、「現場の皆さんが楽になるために」とかよくなるために、ということを私自身にも、自分のチームのメンバーにも言い続けています。

寄り添わなきゃいけないけど、寄り添いすぎても駄目、というのも事実です。どっちが偉いわけでもないけど、相手の言っていることをそのまま受け取ってくるのはだめだよということもメンバーには言っています。稼いでいる営業部門やマーケティング部門はいろんなことを言ってくるわけですけれども、その人の言っていることが、本当に最適な業務フローなのか、データの使い方なのか、ということを疑いながら聞いたほうがいいですよね。

現場の方が言ってくるのって、「このページにこの項目つくれない?」みたいな具体的な機能の要望なんですよ。でも、本当にやりたいことはそれじゃなかったりするんです。その項目をつくることによって何をしたいのかっていうことをちゃんと聞いて「それだったらこのやり方じゃなくてこっちのほうがいいですよ」とお伝えしたり、場合によっては、「これは今でもこの機能でできますよ」だったり。もしくは「これをやるならそもそももっと大掛かりにやったほうが絶対よくないですか」とか。いろんな規模での回答があるんですけれども、本当に相手のやりたいことをわかって、それに対してベストな機能を提供できているか考えようねと。相手の言ったことを鵜呑みにしないように、みたいなことをすごく言いますね。
そのうえで、相手の本当に言いたいことは絶対に否定しないし、馬鹿にしてもいけないよ、という部分も合わせて伝えます。

パートナー企業との付き合い方

松永:私はIT部門にいたこともないので、いわゆるIT開発でのクライアント企業とパートナーさんとの関係性については全く知らなかったんですよね。なので、あまりいろんなことは考えずに自然体でやってきたつもりだったんです。でも、いま複数のパートナーさんに入っていただいていて、他社のシステム部門がどうしているのか知ってきた結果、自分のやっていることが特殊だと気づいた点があります。

それは、パートナーさんに絶対に責任を取らせないということ。エラーが出たり、障害があったりということはよくあります。でもメンバーがそこで一言でもパートナーの誰々さんがこういうことをやったから、と言ったらすごく怒ります。指示したのは自分でしょう、チェックしたのは自分でしょう、あなたが悪いんだよね、みたいに。

そのかわり、自分たちがよくわかっているということを常に出すことによって、開発見積もりは簡単に下がりますから。見積もりの明細を見ると、これはそんなにかからないよねとか、これ自分でもできるからやらないでいいよ、みたいなものがわかります。それをきちんと下げていくと、見積もりって簡単に三分の一ぐらい減ったりするんですよ。ちゃんとわかっているって示すからパートナーさん側に変なことはさせないし、その代わりあなたたちに責任をとってもらうよ、と言うこともしない。そういう関係性でいたいなと思っています。

じゃあ全員が平等にフラットにやっているのかというとそうではなくて、そのパートナー企業さんが会社として持っている領域、財産、スキル、強み、またいらっしゃっている方自身の能力によって、活躍してもらいたい分野が変わってきます。

パートナー企業さんが我々との関係性を重く見てくれているかどうかというのは、やっぱりいい人をアサインしてくれているかどうか、なんですよね。
Salesforceさんとのアライアンスが強いパートナーかどうかということも、我々クライアント側には大きく影響するので、その点は重視しています。

これからやりたいこと

松永:今までは自社グループの中でのみ、物を作ったりデータを扱ったりしてきた何年かだったんですけれども、最近はそれをほかのパートナーさんと、自社とお客様のような形でやっていく取り組みを増やしたいなと思っています。
特に金融機関においては、お客様との直接の接点というのが今後どんどん減っていくというのが避けられない変化でもあります。ですから、金融機関とお客様の間に立つ様々な事業者さんとの連携に注目しています。例えばECサイトや小売の企業、様々なアプリを提供されている企業、事業支援をされているような企業など、金融以外のことを本業にされている事業者さんです。

お客様の基盤や接点があるところに対して、我々金融機関が後ろ側でお客様データを管理したり、そのデータを活用して事業者さんがうまくビジネスができるようになっていく、お客様が必要とする金融サービスを我々が担わせていただくプラットフォームにしていく、というのをいろいろな事業者様と一緒にやっていきたいと思っています。

グループ全体では保険やクレジットカード、信販など、本当に幅広い金融サービスがあるので、どんな事業者さんとも何かしら一緒に取り組めることがあると思うんですね。金融サービスのニーズが全くないアプリというのもないと思いますし。何かしらそこで物を購入すれば決済があるし、今後どんどん、後払いしてほしいとか、キャッシュレス決済を使いたいとか、そういうニーズがでてきます。そういったニーズと事業者さんが持っているお客様情報、データを活用していくということをセットでサービスできればいいなと思っています。

単に金融サービスだけ後ろ側で黒子になって提供します、というと、面白くありません。でも、データ活用や業務フローのデジタル化などに悩みのある事業者さんに対して、金融サービスを提供しながらそれを一緒に解決していくというようなことにかかわりたいなと思っています。

メンバーズへの印象

松永:主にweb制作でメンバーズさんとずっと長いおつきあいをしてきていたので、そのせいもあって、メンバーズさんってシステム開発における技術力はそんなに高いと思っていなかったんです。そういった意味で、自分がSalesforce Marketing Cloudをやり始めた時も、メンバーズさんの名前はパートナー候補としては特に出てこなかったし、たぶん当時メンバーズさんは会社としてもそういう体制じゃなかったのかなと思っているんですよね。
その後カンパニーをいろいろ作られていくなかで、テック系に特化されたメンバーズエッジさんが出てきたあたりから、システム開発の分野に注力していくんだなということを知りました。Salesforce Marketing Cloudをはじめるときも、メンバーズさんはまだその実績がないということだったので、ほかの会社さんもSalesforceから紹介してもらって、メインでリードに立っていただいてエントリーしたんです。
ただその時もメンバーズさんからSalesforce Marketing Cloudの分野を本当にやっていきたいから、リードじゃなくていいのでそうさせてほしいというこということで入っていただきました。

当時Salesforce Marketing Cloudのインプリメントを3、4か月くらいかけて実施したんですけれども、その期間中に入っていただいたメンバーズのエンジニアの皆さんがすごい勢いでスキルアップされていて、認定資格もとっていて、インプリが終わって運用をはじめるときには、じゃあ今後シナリオ設計とか、データ処理とかメンバーズさんにお願いできるね、という体制になっていたんですよ。
テクニカル分野も、デジタル分野もすごいなと。ちゃんとそういう人材を新卒採用してきて、育成していくというのもできているんだなということを実感しました。それまでずっとWeb制作の会社さんだと思っていたところから、目が覚めるような思いでしたね。

今ではSalesforce Marketing Cloudだけではなくて、PaaSであるHerokuのAWS移行やコーディングなど、そういうところもほぼ全部お願いしているような状況です。なのでメンバーズさん自身この10年の中で、ビジネスの方針としても、採用・育成の方針としてもこのDX業界にしっかりフォーカス定められてやってきているんだなあと思っています。
それに加えて本当に幅広い経験を持った社員の方を抱えてやっていらっしゃっているので、ポテンシャルはまだまだ伸びるんだろうな、と思っています。

「SBI新生銀行のDXにおけるSalesforce活用」動画視聴はこちらから
https://marke.members.co.jp/membersseminar76_sbidx.html

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※インタビュー内容は2022年11月当時のものになります