旅行サイトには口コミ情報が不可欠=ANA高柳直明氏
TechWave 湯川鶴章氏
ANAのサイトといえば航空券予約サイトというイメージだが、旅行代理店業務のサイトとしても急成長を続けている。
ANAのWEB販売部の高柳直明氏によると「航空券は景気に左右されるので売り上げが前年度比割れすることもあるが、旅行販売は前年を大幅に超えて伸びている」という。
その旅行代理店業務に有効なのが口コミ情報だ。
ANAのサイト上には、ANAが自社作成したコンテンツや他社から提供されたコンテンツ、それに口コミコンテンツがある。自社作成コンテンツとしてはキャビンアテンダントの旅行情報などがあって人気を呼んでいる。他社提供コンテンツとしては自治体などが提供するコンテンツなどがある。
口コミコンテンツは、株式会社メンバーズの支援を受けて始めた「旅達空間」の中でユーザー自身が書いたホテルやレストランなどの感想など旅行にまつわる情報が中心だ。
こうした情報をサイト内のいろいろなページで見せるわけだが、航空券購入後のユーザーにホテルの口コミ情報を見せると非常に効果が高いという。
航空券はほとんどコモディティー化しており、いってみれば価格が勝負。しかしホテルは、宿泊代金が安いという理由だけで決められない。ホテルの宣伝を鵜呑みにするわけにもいかない。
そこで既に宿泊したユーザーがそのホテルをどのように評価しているのかという口コミ情報が非常に有効になるわけだ。「お客さまに対する利便性の提供にもなりますし、ホテル商品の購入にもつながります」と高柳氏は言う。現在、口コミ情報で評判の高いホテルから順に表示されるような仕組みを構築中だという。
ただコミュニティーの仕組みを導入したからといって口コミ情報が集まるわけではない。
ハコモノを作っただけでは、必ずしも活性化しないのだ。
10年ほど前にあるオンライン掲示板と提携して、旅行の感想を書いてもらうコーナーを作ったことがある。しかしほとんど書き込まれることがなかったという。
その後、7年程前にマイレージ会員向けにコミュニティを作った。ところがコアな会員数十人だけのコミュニティになって、盛り上がらず、売り上げへ結びつけることが難しかった。
旅行に関する口コミ情報を持つ大手サイトと提携したこともあった。しかしそうしたサイトにとってユーザーの口コミ情報は最大の資産。提供してもらうには、かなりの料金を支払わなければならない。
そこでANAでは旅達空間を使って口コミ情報を自社で集めることにした。しかし旅行の口コミで成功しているサイトがほかにあるのに、果たして後発のANAが旅行口コミサイトを構築して成功しるのだろうか。
心配は無用だった。
旅行から戻ったユーザーにメールを送り、ホテルなどの感想を書き込んでもらうようにインセンティブを提供した。1回記事を書くと50マイル、というようなインセンティブだ
ANAのサイトのユーザーだけにANAのマイルを集めている人が多い。メールを送ったユーザーの6割が書き込みに協力してくれ、わずか数カ月で数千件の書き込みを集めることができたという。
ほとんどのホテルなどに対して書き込みが存在するようになった。
一度こうしたコミュニティが出来上がるとあとは自律的に回り始める。今ではインセンティブ提供はしていないが、それでも書き込みをお願いするメールを受け取ったユーザーの3割は実際に口コミ情報を書き込んでくれているという。
ユーザービリティより最適化
ソーシャルな取り組みだけではない。ANAでは業界に先立っていろいろと新しい取り組みに挑戦している。例えば最適化ツールの導入だ。
サイト構築には確立したセオリーがある。
ユーザービリティというセオリーで、最も重要な登録ボタンは右側に目出すオレンジ色で表示するのがいい、というような通説だ。ところが最適化ツールを使うと、こうした一般的に信じられているセオリーとは別のページデザインのほうが効果があることが分かった。デザイン案を数十パターン作り、どのパターンのときに一番登録ボタンのクリック率が高いかを検証したのだ。
その結果、意外にもページの左側で青色のボタンがもっとも登録ボタンのクリック率が高かった。
それまではユーザービリティの会社にコンサルティングを頼むと、3人の専門家が来社して3ヶ月間で500万円以上のコンサルティング費用がかかった。ところが最適化ツールを使うかなり低い金額でより効果の高い結果が得られたという。
リスティング広告にもIPターゲティング
ANAではユーザーの登録情報を持っているので、登録情報の属性によって異なるコンテンツを表示している。男性ユーザーがアクセスしてくれば、男性向けのコンテンツ、女性ユーザーがアクセスしてくれば女性に人気のコンテンツ、といった具合だ。
ただそうした性別などの属性よりも、地域という属性のほうが予約率という効果に直結している。大阪に住むユーザーがアクセスしてきた場合に大阪発着の航空券の情報を出す、というように地域属性によるコンテンツ表示がANAサイトで最も効果的であることは早くから分かっていた。
そこで2年前からリスティング広告にも地域属性をベースにしたコンテンツの自動表示を導入することにした。
ユーザーのIPアドレスを見れば、そのユーザーがどの地域に住んでいるのかが分かるからだ。
例えば大阪のユーザーが検索エンジンで航空券関連のキーワードを入力して検索すると、検索結果のページに大阪発着の航空券の広告を表示するようにした。
この手法を試している企業はまだまだ少ないが、ANAでは最初は大阪などの主要都市向けに限定して効果が確認されたため、その対象地域を次々と拡大し、今では全国に展開しているという。
